ビッグデータとUXデザイン
反中 望
こんにちは。UXデザイナーの反中です。
リクルートテクノロジーズでは、ここ最近、UXデザインの専門家とビッグデータの専門家が、協力してリクルートグループ内の各事業に入り、プロジェクトを推進していく事例が多くなっています。
一見、まったく畑違いの領域にも見える、「UXデザイン」と「ビッグデータ」が組み合わさると何ができるのか? 今回はそうした取り組み事例の1つを簡単にご紹介してみたいと思います。(なお、私自身はUXデザインをメインでやってきた人間なので、あくまでもその立場から見えている世界を書いています。あしからず)
「ビッグデータ」で「UX」が可視化される
UXデザインでは、定性的なリサーチと定量的なアクセスログ解析を組み合わせて、ユーザ行動を可視化することは以前からやってきました。
ところが近年、ビッグデータの分析環境が整ってきたことで、従来のアクセスログ解析では難しかった深いレベルで、ユーザ行動を可視化することができるようになっています。UXデザインに、これを活用しない手はないわけです。
「継続利用」と「途中離脱」を分けるユーザ体験とは?
サイトやアプリを1つの店舗として捉えて、訪れるカスタマーの内訳を見ると、訪れる人のうちの大半は初回、またはせいぜい2~3回来たらそのまま二度と来なくなってしまう、というのがよくある現実です。
たまたま訪れた人に対して、継続的に利用してもらい、さらにロイヤルカスタマーになってもらうのはかなり難しい壁がありますよね。カスタマーがそのサービスを継続利用してくれるかどうかは、初期フェーズで「このサービスを使ってよかった」という「成功体験」を得られるかどうかが大きな鍵になっている、ということがいえます。
「成功体験とは何か」を定義して、きちんとデザインできるかが、UXデザインの大きな目的になるわけです。
つまり、ロイヤル化したカスタマーと、初期で脱落してしまったカスタマーとを比較して、実際にどのような体験の「差」がそこを分けているのか、ということを明らかにすることが、継続利用を増やすための鍵となります。そこで、ビッグデータとUXデザインが組み合わさるのです。
ビッグデータによる定量分析で「WHAT」を明らかにする
例えば、あるウェブサービスにおいて、1週間くらい利用しただけでいなくなってしまう人が大半を占めている場合、
- 1週間は利用したが、その後離脱してしまったカスタマー
- 2週目以降、継続的に利用してくれるようになったカスタマー
というセグメントを抽出し、両者の「初期1週間における行動パターンの違い」を定量的に分析します。
そうすると例えば、「1週間で利用しなくなったカスタマーは、●●という機能を使っていなかった」とか「●●と▲▲を同時に使っているカスタマーは継続利用しやすい」いうようなファクトが明らかになってきます。
UXデザイナーによる定性調査で、「WHY」を明らかにする
ただし注意すべきは、定量データからわかるのはあくまでも「こういう行動をとっている人は継続している」という相関関係でしかない、ということです。
「なぜそうした行動の違いが生まれるのか」という要因はなかなか見えてきませんし、場合によっては「継続利用意向が高い人ほど、●●という機能を使いやすい」というように、因果関係が逆の場合すらありえます。
そこで、ここからはUXデザイナーの出番です。
定量分析と同じ「途中離脱/継続利用」の各セグメントのカスタマーに対し、定性的なインタビューを行うことで、「それぞれのカスタマーがなぜそうした行動を取るのか」「どうすれば、非継続者を継続者に変えていけるのか」というWHYの部分を深掘りします。
ここでは、ユーザ心理を深く理解し、理想的なジャーニーを描いていくというUXデザインのスキルが非常に有効になるのです。
また、こうした「定量×定性」の分析は、1サイクルで終わらせてしまうのではなく、定量と定性を行ったり来たりすることで、より精度を高めていくことが重要です。
その意味で、UXデザインチームとビッグデータチームが同じ社内にいて、密なやりとりをしながらプロジェクトを推進できるリクルートテクノロジーズの環境は理想的だといえます。
リクルートグループでは、お互いの専門性や仕事の境界を越えていくことをよく「染み出す」と表現します。UXデザインとビッグデータも、まさにお互いに「染み出し」ながら、リクルートの様々な事業をよりよいものにしていくことを目指しています。
多様な専門性を持った仲間が互いに協力して大きな価値を生み出していく、そんな環境に興味がある方、いつでも大歓迎です!