フランス流オープンイノベーションのイベント Viva Technology2019 参加レポート
田中優貴(Newki)
こんにちは、アドバンスドテクノロジーラボで研究開発を担当しています村井です。
今回初めて記事を寄稿しますので、まずは簡単に自己紹介させてください。
私は、2017年10月に転職し、前職は医療介護用機器メーカーで製品開発・研究開発に携わっていました。
得意な分野は、ビジネス領域がヘルスケア、技術領域はセンサー開発・データ解析です。自分で言うのもなんですが、"ヘルスケア x IoTフルスタックエンジニア"です。よって、ヘルスケアの予防領域で新たなサービスを創り出したく、リクルートに転職しました。
さて、そんな私は5月16〜18日の3日間、フランスが国を挙げて開催するテクノロジーの巨大イベント「Viva Technology2019(以下、VivaTech)」@パリに参加してきました。
EUに止まらず、世界中から注目を集めているVivaTechの一つの特徴であるオープンイノベーションを中心にレポートします。
VivaTechの魅力
VivaTechの公式サイトによると、今回の参加者は125ヵ国約124,000人となり、第4回目の開催とは思えないくらいの盛り上がりでした。
実際に出展している企業は、ラグジュアリーブランドをいくつも持つLVMH、化粧品会社のL’Oréal、製薬会社のSanofi、通信会社のOrangeなどフランスが誇る様々な産業分野の大企業をはじめ、Microsoft、Google、Amazon、Facebook、HuaweiなどのITジャイアントも参加していました。
VivaTechがここまで多くの人や企業を惹きつける大きな理由について、個人的には、大企業とスタートアップのオープンイノベーションでありながら、展示方法がとても魅力的であるからだと思いました。
特に感銘を受けたのは、テクノロジーのイベントであるのに、大企業各社は近い将来の顧客体験がイメージできる展示を行っており、テクノロジー色が良い意味で抑えられていたことです。
例えば、LVMHの場合、テクノロジーを活用した洋服・アクセサリのフィッティングなどが展示されており、将来のショッピング体験が具体的にどのようになるのかが手に取るように理解できました。
(テクノロジーの展示会とは思えないおしゃれなブースに圧倒されました!!!)
オープンイノベーションの仕組み
では、VivaTechのオープンイノベーションとはいったい、どのようなものなのかを紹介します。
VivaTechのイベントが開催されるに先立ち、大企業がこれから取り組みたい内容をVivaTechのwebサイトで掲載し、同じ方向性を向いているスタートアップへ募集を呼びかけます。
そして提案が採用されたスタートアップが、VivaTechの大企業ブースで展示やピッチを行える流れになっています。
採用されたスタートアップのうち一部は、大企業との共同開発や投資を受ける機会を得られるそうです。
(大企業がスタートアップからの提案を募集するVivaTechのサイト。画像はVivaTechのサイトから引用)
具体的なオープンイノベーションの展示
大企業ブースで展示されていたスタートアップの具体例を紹介したいと思います。
傾向としては、他の展示会同様AIを使用したサービスが多かったのですが、ソフトウェアの展示だけではなく自社開発のハードウェア展示も多く、注目を集めていました。
・最適な洋服サイズを提案するサービス
LVMHのブースで展示していた「3D LOOK社」は、写真2枚を撮影するだけで体のサイズを特定し、自分のサイズに合う洋服などをすぐに探すことができるサービスを発表していました。
実際にLVMHグループが販売する洋服をその場で選定し、具体的に着用したイメージができるショッピングを体験することができました。
・腰痛の治療で使用する着用型のセンサー
一方、Microsoftのブースで展示していた「SMD社」は、腰痛の治療で使用する着用型のセンサーを発表していました。
医療機器において、具体的なアドバイスをするために計測するという視点は、面白いと感じました。
ただ、現在は試作レベルの段階で、これから治療において有用なデータになりうるか検討するそうです。
ちなみに、こうしたスタートアップは企業活動状況に応じて、「CONCEPTION STAGE」「GOING TO MARKET」「GROWTH & SCALE」という3つに分類されていました。
そこで驚いたのは、まだサービスやプロダクトが完成していない「CONCEPTION STAGE」でも前述のSMD社のように多数展示されていることです。早い段階から、多くの人にフィードバックがもらえる面白い取り組みだと思いました。
その他の注目コンテンツ
VivaTechでは、オープンイノベーションだけではなく、様々なコンテンツが注目を集めました。そのうち2つほど簡単にご紹介します。
・著名人がスピーチするカンファレンストラック
VivaTechでは、マクロン大統領を筆頭とした多くの著名な方が、ステージでスピーチしました。
マクロン大統領が登壇した際は、ステージエリアに人が溢れて入場が制限され、多くの人がVivaTechの会場にいながら、ライブストリーミングで視聴する状況になるほどそのスピーチに来場者の関心が向けられていました。
こうしたスピーチは、毎年行われています。これは、マクロン氏が大統領就任前のデジタル大臣時代からスタートアップの起業支援に力を入れており、その一環としてVivaTechの開催を国として後押ししているからです。
・その場でジョブマッチングするTALENT CENTER
また、会場の中で就職活動ができるよう、キャリアプランの作成からジョブの検索、各企業の人事担当者との面談までが行われており、とても興味深い取り組みでした。
展示している企業に興味を持ってその場で面談までできれば、企業も応募する方も一石二鳥なのかもしれません。
最後に
今回のレポートでは、VivaTechで展開されているフランス流のオープンイノベーションを中心に紹介してきました。
大企業がいち早く新しいテクノロジーを取り入れ、新しい事業やサービスを構築する方法の一つとしては、とても良いイベントだと感じました。
もちろん、各国・各企業に合うイベントの開催方法はいろいろあるかと思いますが、少しでも皆様の参考になれば幸いです。