自己紹介
はじめまして。私は東北大学情報科学科博士課程に所属している坂田将樹と申します。普段は自然言語処理分野における大規模言語モデルの内部分析について研究しています。
今回、11/11〜12/13の約1ヶ月間、リクルートのデータスペシャリストコースのアナリティクスエンジニア*としてインターンシップに参加させていただきました。その時に取り組んだ案件をご紹介いたします。
*アナリティクスエンジニア:データ基盤構築(データエンジニアリング)とビジネス上の分析ニーズ(データアナリシス)を橋渡しし、分析に最適化したデータモデルの整備を行う職種
プロダクト・組織の紹介
公式サイト:https://www.recruit.co.jp/sustainability/service-housing/
案件の紹介
その中でも私が担当した案件はSUUMO「おうちリクエスト」のモニタリング改善業務です。おうちリクエストとは2024/02/14にリリースされた新しい機能であり、新築・中古一戸建てや中古マンション、土地探しにおいて、ユーザーが自身のプロフィールや希望条件を登録すれば、自分で検索しなくても希望に合った物件情報が届く機能のことです。この機能によって物件お家探しの負担を軽減することが期待されています。
プレスリリースURL: https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2024/0214_14012.html
このインターンシップ及び案件を担当した経緯
そもそもこのインターンシップに参加しようと思った理由は、モニタリング業務に興味があったためです。具体的には、分析者が達成したい目的・ダッシュボードを見る理由を明確化し、それをどのような形・内容で可視化するのかという一連のプロセスを学びたいと考えていました。また、作成したプロトタイプを通じて関係者からフィードバックを得る経験も非常に貴重だと考えたため、応募に至りました。上記の内容を、インターンシップの面接時に伝えたところ、結果的にマッチングがとても良いこの案件に挑戦させていただきました。
取り組んだこと
【N1分析基盤の構築】反響までの道筋を明らかにする
反響とは、一般にユーザーからの問い合わせなどの反応を指します。この反響数は重要な指標であり、反響数増加は集客力の向上とみなせます。前述した『SUUMO』のおうちリクエスト機能では、レコメンドの力を借りることでこの反響を得るまでのプロセスにおける負担軽減が期待されています。
一方、本当に反響を得るまでの間に負担が軽減しているのか、そもそもユーザーが反響を起こすまでにどのような行動をしているのかについては未だ不明な点が多いというのが現状でした。
実際にヒアリングを行ってみると、反響までの道筋に着目したモニタリングというのは確かにニーズがあることが確認できました。しかし、そのようなモニタリングの基盤自体がまだ存在していない状況であり、必要なデータのカラムが機能ごとに集約・前処理された、汎用的に使用可能なデータマートが不足していました。このため、アドホックにSQLを記述する必要があり、分析にかかるコストが高くなっており、結果としてユーザーが反響に至るまでの行動が把握しづらいという課題がありました。
上記のヒアリング結果から、反響が得られたユーザーのカスタマージャーニーを簡単に把握できるようなN1分析基盤*を作成することをゴールに定めました。
このN1分析基盤があることで、分析者(プロダクト企画者, データサイエンティスト)がGUI操作のみでユーザーの反響までの行動を簡単に把握することができます。これは、UX改善や、レコメンド改善のための洞察を得ることにつながります。最終的には、N1分析基盤を通じて反響数の増加に向けた仮説立案の支援を行うことが目的です。
*N1分析:特定のユーザー一人ひとりに焦点を当て、その行動やニーズを深く理解することに焦点を当てた分析手法です。ユーザー全体の傾向を見るマクロな分析とは対照的に、N1分析はミクロな分析に位置づけられます。
N1分析基盤の作成のために実際に行ったことは以下のとおりです:
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N1分析基盤で見たい観点をデータサイエンティストの方とすりあわせ
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テーブルの定義
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モックアップ作成
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ロジックに沿ってSQL実装
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dbtを用いてデータマートを作成
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lookerStudio上でプロトタイプを作成
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作成したプロトタイプをもとにデータサイエンティストの方と再度壁打ち→改善
案件を通して得た経験・学んだこと
案件を通じて、モニタリング業務の一連の流れ(要件定義、データマート作成、可視化)の経験や、現場目線でのフィードバックを得ることができました。また、アナリティクスエンジニアとして重要な要素は、要望に対して実現可能な範囲を調整するコミュニケーション能力と、実現に向けて迅速に対応するスピード感であることを学びました。例えば、プロダクト企画者側の要望に対して必要なデータが存在していない場合、代替案を提案する力が求められます。また、プロトタイプ作成後にフィードバックを受けて調整を重ねることがあるため、この過程において実装のスピードが重要であることも学びました。
全体の感想や各種情報
感想
まず、25日間にわたり手厚い支援をいただいたメンターの方々に心から感謝しています。率直に申し上げて、メンターの方々のご支援が非常に手厚かったというのが最初に浮かぶ感想です。私自身がやりたいことを聞いていただき、それに取り組めるように可能な限り案件などをセッティングしていただきました。日々の業務では、必要なときにサポートを迅速に提供していただけたことが、非常に大きな助けとなりました。
また、単にお題として設計されたタスクではなく、NDA(秘密保持契約)締結*の上で実務に近い内容やデータで取り組むことができた点も、本インターンシップの大きなメリットだと感じました。現実的な問題に直面し、それに対する解決策を考えることで、実務に役立つスキルを身につけることができました。
さらに、自身の作成物や仮説に対してメンターの方のみならず、プロダクト企画者の方など、業務に関わる幅広い方々からフィードバックをいただきました。このフィードバックは実務に即しており、単なる理論にとどまらず、現場目線でどのように活用できるかを学ぶことができました。このような貴重な機会を得られたことに、改めて感謝しています。
組織全体としては、コミュニケーション能力が高い方が多いと感じました。例えば、ミーティングの場では目的が明確に設定されており、議論の中で何がMustで何がWantなのかがしっかりと整理されていました。このような問題解決のプロセスは日々の研究生活にも通ずるものだと実感しました。
*実際のデータを使用してリアルな業務を体験をしていただけるよう、弊社ではNDA(秘密保持契約)を結んだ上でインターンシップへご参加いただいております。
インターンシップ業務の流れや形態について
インターンシップでの1日 (一例) を以下に紹介します。
出社
10:00-10:30: 朝会:昨日やったこと、今日やることの共有。
10:30-12:00: プロダクト企画者の方用の壁打ち資料作成と基礎分析
12:00-13:00: 昼食
13:00-15:00: 基礎分析の続き。
15:00-18:45: dbtを用いてデータマート作成。
18:45-19:00: 日報を記入。昨日できたこと、今日できたこと、明日やることをまとめる。
退社
基本的な業務時間は10:00-19:00(うち1時間休憩)でしたが、開始時刻と終了時間は数時間ずらしても大丈夫とのことでした。
- 07:00開始、16:00退勤という社員の方もいらっしゃるようです。
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出社形態は、リモート・出社どちらでもよいとのことでした。私のいた部署では、週1〜2回出社で、残りはリモートというケースが多かったです。
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私自身、インターンシップ期間中の出社頻度は6割程度で、残りはリモートという選択をしました。
その他:
オフィスは主にグラントウキョウサウスタワー(東京駅直結)と住友不動産田町ビル(田町駅近く)の2つに出社していました。出社した際、オフィス付近の美味しいご飯*に連れて行っていただけました。また、宿泊ホテル*も人事の方にすべて手配いただきました。圧倒的感謝です。
*社員との親睦を深めるため、一部食事代のサポートがあります。
*宿泊手配は、一都三県以外からご参加の方のみが対象です。
おわりに
今回私は、約1ヶ月のインターンシップでユーザー行動理解のためのN1分析基盤の制作を行いました。実サービスのデータを扱いたい/自身の取り組みに対して現場目線のフィードバックをもらってみたい方にとてもお勧めのインターンシップだと思います。もし興味がありましたらぜひエントリーしてみてはいかがでしょうか?