ベルリンスタートアップ武者修行記 その3(KIWI.KIについて〜参画スタート)
葛原 佑伍
(写真は実物の Ki と日本食が恋しくなって食べた肉うどん)
こんにちは。ATL の葛原です。第3回目となります。
今回は参画が決定したスタートアップ、KIWI.KI についてのご説明と、2月に入り、実際に KIWI.KI のオフィスにて働き始めた後の最初の所感について書きたいと思います。
さっそく KIWI.KI についてですが、ここで私が詳しく説明するよりも、こちらのプレゼンテーション動画をご覧になった方がわかりやすいかもしれません。この動画は2013年10月に開催された TechCrunch Disrupt Europe 2013 の Startup Battlefield(それぞれのスタートアップが自社のサービス概要の説明や、今までになかった優れている点、マーケティング戦略などをプレゼンで競う)セッションの中で、KIWI.KI のファウンダー2人及びチーフアーキテクトの方がプレゼンテーションを行っているもので、実は私も昨年このイベントに参加し、実際に彼らがプレゼンテーションを行っているのを目の前で観ていました。
正直このプレゼンテーションで語られていることが全てなのですが、簡単にこの記事でも記載すると、KIWI.KI はドイツの建造物、例えばアパートやマンションなどの外扉(日本で言うところのマンションのオートロックの入口のようなもの)の施錠管理をハンドフリーで行えるソリューションをサービスのコアとして現在は主にドイツ内にて事業展開を行っているスタートアップです。
ハンズフリーでの扉の施錠管理には、RFID を用いたデバイスによる近距離無線通信とスマートフォンアプリを利用した管理の2つが方法として用意されています。特に前者を Ki と KIWI.KI では命名しているのですが(この記事に載せている写真がそれです)、ユーザーはポケットに Ki を入れ扉に近づくだけで、扉を解錠することができます。車のスマートエントリーキーと同じようなものです。
もちろん外扉だけでなく、他のほとんど全ての種類の扉にも設置することができます(写真の Ki は KIWI.KI オフイス内の扉用のものです)。
上述のプレゼンテーションでも言及されている通り、現状 KIWI.KI では一般のユーザー向けももちろんなのですが、主に BtoB に力を注いでいます。
例えば、ドイツのアパートやマンションでは、郵便受けやゴミ収集場(箱)などは施錠された扉の内側に設置されていることが多く、ドイツの郵便業者(主に Deutsche Post)やゴミ収集業者(例えば ALBA など)は、それぞれのアパートの扉の鍵を何十本も持って、1つ1つ開けて実際の作業を行わなくてはならない現状があります。
KIWI.KI ではこのような作業者及び企業向けにこのワイヤレスキーデバイスを提供し、将来何十本もの鍵を持ち歩く必要なく、1つのデバイスで担当するすべての扉の解錠を、可能にしようとしています。実際、すでにいくつかの在独企業にサービスの提供を行っています。
ということで以上が簡単な説明となるのですが、その KIWI.KI で2月より参画をスタートしました。先ほど記載したとおり、私は2013年10月の TechCrunch Disrupt に参加しており、実際面談をした時も彼らがプレゼンをしていたことは覚えていたので、初めて KIWI.KI のことを知ってからわずか3ヶ月強でここで働くことになるという、なんとも不思議な感覚になったことを覚えています。
いよいよ最初の日、まずは主にエンジニアの方々よりそれぞれどんな仕事をされているかをヒアリングすることからスタートしました。KIWI.KI には バックエンド、フロントエンド、組み込み、インフラなどのエンジニアの役割があり、それぞれについて説明を聞きました。
まず驚いたのは、KIWI.KI はベルリンのスタートアップなのに、ドイツ人のエンジニアは1人もいません。実は2月当時と今で微妙にエンジニアの顔ぶれも変わっていたりするのですが、にも関わらず全員ドイツ国外より KIWI.KI に就職するために来独したエンジニアしかいないのです。
オフィス内では全ての会話が英語にて進行するため、在独スタートアップですが、このような多国籍な顔ぶれとなってもなんら問題はないのです。
ただ、今でも苦労している点ではあるのですが、全ての方が英語を母国語としているわけではないので、実際に喋る英語の発音など聞き取れなかったりすることが多々あったので、特に最初の、まだ英語にほとんど慣れていない時は何を言っているのか理解できないことが多々ありました。
全てのヒアリングが終わった後は、API の仕様書を読み進めたり、実際のソースコードを読んだりといったことを導入として数日行い、その後最初のプロジェクトについての会話を始めました。
その中で稚拙な英語でアイデアを出したり、提案したりしたのですが、そのほとんどがすでに彼らが検討済みでこれからすでに実装中あるいはリリース前のものばかりで、自分の浅はかさに少しがっかりしたのを記憶しています。
ということでまずは簡単なところからやってみようということで、とある社内向けのスクリプトを書いて、小さくオープンソースとして出そうという結論となりました。
仕事内容についてはまた後日記載したいと思いますが、最初の数日働いてみて感じたことは、
- エンジニアはそれぞれの役割につき1人しかいない、UXデザイナーなども同様で、これで回せているのは個々がかなり優秀なんだろうと思った(特にチーフアーキテクトは本当にすごい)
- 某動画ほどではもちろんありませんが、意外とビジネス側の方々がエンジニアの方々に無茶言って困らせていることがたまにあって、おもしろかった
- Welcome な空気感もありつつ、どこかやはり不審に思われている節があり、英語もままならない中で溶けこんでいくのは苦労しそう
- ランチの時とか、全然話せなくて結構きつい(予想通り)
と言ったところです。次回以降仕事をしていく上で苦労したことや、仕事意外でもベルリンと日本での違いなど、書いていければと思っております。
最後に、今も変わらずですが、私はドイツの食事があまり合わないようで、お腹をよく壊します。なので、日本食の店を頻繁に探しに出掛けたりしているのですが、そのうちの1つが写真の肉うどんです。他にも現在は色々と開拓したのですが、またご紹介出来ればと思います。
実は内容は2月のことなのですが、書いている現在の日付は2013年7月14日で、ドイツ対アルゼンチンの決勝が先ほど終わったところです。街中で花火とクラクションと歓声が、鳴り響いています……。
では今回はこの辺りで失礼します(次回へ続く)。