続けることが困難な『英語学習』をデザインすることについて ~ スタディサプリ ENGLISH の UX デザイン
石黒勇気
この記事はRECRUIT MARKETING PARTNERS Advent Calendar 2017の投稿記事です。
こんにちは。スタディサプリENGLISHでプロダクトマネジメント(PM)/ UXを担当している石黒です。
スタディサプリENGLISHでは、一人でも多くのユーザーが成果を上げてもらえるように『英語学習を続けやすいサービスをつくる』というテーマのもとプロダクトを開発しています。世の中には英語学習教材が溢れている一方で成果を上げられる人はごく僅かだと言われています。それは、成果を上げる人と上げれない人の間に大きな壁があるからです。この壁の一つが『継続の壁』です。
今回はスタディサプリENGLISHの『英語学習』という体験のデザインを一部ご紹介します。
※ スタディサプリENGLISHは、『聞く』『話す』をドラマ仕立てなストーリーを読み進めながら学べる『日常英会話コース』と、TOEICの学習に特化した『TOEIC® L&R テスト対策コース』という2つのコースを提供しているオンライン英語学習サービスです。詳しくはこちら
紙/CDの学習方法をWeb/アプリでより良い体験にするのは?
これまで学習といえば、ペンとテキスト、ノートを持ち運び、机がある環境へ移動して学習をすることが主流でした。一方で『web / アプリ』で学習をするという体験は、ペンやテキストを持ち歩かなくて良いので、時間や場所に縛られない学習を可能にしました。しかし、テキストで学習することに慣れているユーザーも沢山います。だからこそ、スタディサプリENGLISHでは新機能を検討する上で『紙 / CD』で行っていた英語学習の体験を『web / アプリ』ではどのような体験を提供できるかを意識しています。どちらが良い悪いということではなく、『web / アプリ』でより良い体験をさせたいと考えてます。
事例:オートリスニング機能
日常英会話コースにはCDを聞くようにスタディサプリENGLISH内で全てのレッスンを通して聴き流せる『オートリスニング』という機能があります。もともと「通勤通学・ランニング・家事をしながらといった、いろいろな『ながら』シーンで学習したい」というニーズをいただいてたのですが、サービスイン時は1レッスン毎のリスニングしか出来ませんでした。1)1コース毎に240レッスンで構成されていますオートリスニングはそういった『〇〇をしながら学習したい』という要望から生まれた機能です。
仕様検討当初は、CDのように特定の箇所から聴き流せることを考えましたが、それではCDと同じになってしまいます。そこでアプリでは、英語学習で重要な『繰り返し聴く』体験をより良くできないかと考え、特定のレッスンを範囲選択できるようしました。これにより、ユーザーが繰り返し聞きたいレッスン範囲を何度も聴けるようになります。
成果を可視化して達成感を与える
『継続の壁』を超えるためには「成長しているぞ(成長実感)」「自分はこれだけ学習したんだ(達成感)」といった体験を提供することが解決につながるのではないか――という仮説をスタディサプリENLGISHでは立てています。こうした成長実感や達成感の積み重ねが学習を続けたくなる要因になります。しかし、成長実感は「試験で点数が上がった」「ふとした日常で英語を聞き取れるようになった」などユーザーに依存してしまうところが多いです。そこでまず第一歩として「自分はこれだけ学習したんだ(達成感)」に注力をしています。
事例:学習履歴の可視化
達成感を味わうにはどうすれば良いのだろうか?と考えたときに例えば、『紙』の学習ではテキストをどこまで進めたといった学習履歴を見ることで達成感を得られます。この学習履歴はユーザーが学習した『成果』となります。この『成果』を可視化させることで日々の学習に達成感を持って取り組めるようにできないかと考えています。連続学習日数を可視化することで、「○日続連で達成している学習日数を止めたくない」といった気持ちを持たせる仕掛けも用意してます。
このようにユーザーが学習する、成果が可視化される、達成感を得る、より達成したいために学習する――といったループが生まれ継続してもらおうという方向性でデザインをしています。
学習の妨げになる小さなストレスをなくしていく
ユーザーが学習に集中できる環境を提供する必要があります。だからこそ、学習以外の要素で気になってしまう点やストレスをできるだけ抑えることが重要になってきます。
事例:マイクロインタラクションのブラッシュアップ
TOEIC® L&R テスト対策コースをリリースした当初「正解・不正解のアニメーションが遅くてサクサク問題を解くことが出来ない」といったユーザーの声をいただきました。はじめは良くても、やがてテンポの悪さにストレスを覚えます。リッチなインタラクションを用意したことが学習の妨げになってしまいました。そこで、アニメーションの時間を調整することで解決しました。2)下部はリリース当初の改善です。現在はさらにアニメーションを改善しています
こうした小さなストレスをキャッチアップすべく、Slack の社内チャンネルに『#doodfooding_channel』を用意しました。そこでは、事業開発・プロダクト開発・コンテンツ・カスタマーサポートという様々なロールの方がサービスを触っていて気付いたことや欲しい機能などを気ままに書き込んでいます。また、ユーザーへ定期的なアンケートやAppレビューをslackに流したり、カスタマーサポートTとPMが密に連携することで、ユーザーの声を拾っています。キャッチアップした小さなストレス達を少しづつですが改善していくことを心がけています。
学習にこそ楽しい仕掛けを忘れずに
光栄なことに沢山のユーザーから「楽しい」という言葉をいただいてます。「いわゆる学習っぽい固いビジュアルで、簡素なUIで続けたくなるのか?」だからこそ、スタディサプリENGLISHでは『楽しく』続けられることを一つの価値に置いてます。BGMやSE音、アニメーションなどを随所に散りばめることで、ゲーム感覚で学習を進めてもらうようにしています。不正解時に否定的なコミュニケーションはなくして、あくまで学習したことを褒めるコミュニケーションに徹しています。
続けやすさは、学習する上で小さなストレスをなくしていくこと、単調にならずに楽しめるようにすることです。数字に紐づく改善だけでなく、ユーザーファーストで小さな改善の積み重ねをしていくことが結果的に良い方向へ向かっていくと考えてます。課題はまだまだ沢山ありますが、一人でも多くのユーザーが継続の壁を超えるために『学習』という体験のデザインをしていきます。