グッドデザイン賞2025受賞! 推計約84万人の「休眠美容師」の復職を後押しする私たちの挑戦

  

皆さま、こんにちは。リクルート サービスデザイン室公式noteです。

この度、リクルートが提供する『SALON BOARD』と『ホットペッパービューティーワーク』が、2025年度グッドデザイン賞を受賞いたしました。

特筆すべきは、単一プロダクトの優秀性だけでなく、既存の2つのプロダクトが連携し、業界の構造的な課題を解決する「持続可能なエコシステム」をデザインした点が高く評価されたことです。私たちはこの受賞を大変光栄に思っております。

今回のnoteでは、実際に本プロジェクトを推進した担当者から、受賞施策の具体的な内容をご紹介します。読み進めていただく際に、ぜひ「なぜ、データ分析は予約管理システム(SALON BOARD)から始まったのか?」「なぜ、復職を『再オンボーディング』と再定義したのか?」という、デザインにおける意思決定の背景にもご注目ください。




この度の受賞は、私たちが目指してきた「美容業界の構造的課題を解決し、働く人とサロン、そして業界全体が持続的に成長できる仕組みをつくる」という挑戦が、多くの方に評価された結果だと感じています。心から感謝申し上げます。

私たちがこのサービスに込めた想いと、その背景にある美容業界の現状について、お話しさせてください。

見過ごされてきた推計84万人の「才能」

私たちは、美容師免許を持つ全国約142万人の方のうち、推計約84万人もの方々が現在美容師として働いていない「休眠美容師」であるという現状に着目しました。

※「理容師・美容師制度の概要等について」(厚生労働省)、「衛生行政報告例」(厚生労働省)、「新規免許登録件数」((公財)理容師美容師試験研修センター)をもとにホットペッパービューティーアカデミーで推計(2024年)

なぜ、これほど多くの有資格者が現場を離れてしまうのでしょうか。その理由は、結婚や出産といったライフイベントが大きな割合を占めています。

復職を考えた際、

「子どもを迎えに行く時間までに終われるだろうか?」

「土日も休めない働き方で、家庭と両立できるか?」

「ブランクがあるから、最新のトレンドや技術についていけるか不安…」

といった、働き方とスキルに対する不安が大きな壁となり、一歩を踏み出せない状況が続いていました。

一方で、多くの美容室が人手不足に悩んでいます。私たちは、この「復職したい」という想いを持つ方々と、「働いてほしい」と願うサロンとをどうつなげられるか、真剣に向き合いました。復職支援が業界の活性化につながると考えたからです。

データ・働き方・再オンボーディングを組み合わせ、復職とサロン運営の好循環を実現したデザインの力

私たちは、この大きな課題に対し、すでに多くのサロン様にご利用いただいている既存のプロダクトに新たな「使い方」を加えることで、解決の糸口を見つけました。今回の受賞は、この「デザインの力」が評価されたものだと考えています。

1. データが示す、売上白地の特定

予約管理システム『SALON BOARD』に蓄積された膨大なデータを分析したところ、多くのサロンで「平日の昼間」が、実は売上の伸びしろになる時間帯であることが見えてきました。

これは、私たちがこれまで見逃していた「潜在的な需要」です。このデータを活用することで、子育て中の休眠美容師の方が「働きたい」と考える時間帯と、サロンが「人手がほしい」と考える時間帯が見事に一致することがわかったのです。

2. 仕事と家庭を両立できる働き方の設計

データ分析で得たインサイトをもとに、『ホットペッパービューティーワーク』では、「平日16時までの短時間勤務」や「週3日からOK」といった、家庭と両立しやすい柔軟な働き方を提案する求人を作成しました。

これにより、これまで働くことを諦めていた方々が、美容師として再び活躍できるチャンスが生まれました。

3. ブランクを自信に変える「再オンボーディング」

働き方の課題がクリアになっても、次に立ちはだかるのが「技術への不安」です。私たちは、この不安を解消するために、美容業界に昔からある「アシスタント業務」を「再オンボーディングプログラム」として再定義しました。

具体的には、まずはアシスタント業務から段階的にスタートし、徐々にブランクを取り戻す。その過程で、サロンの既存スタッフから最新の技術やトレンドを学び直すことで、最短1ヶ月でスタイリストに復帰することも可能にしました。

この仕組みは、復職する方々が自信を持って現場に戻れるだけでなく、アシスタントが入ることで既存スタッフの業務負担が減り、より多くのお客さまに対応できるようになるという、双方にとって良い循環を生み出しました。

三者が喜ぶ、持続可能なエコシステム

求職者、美容室、既存スタッフの三者にとってメリットのあるエコシステムを構築することで、それぞれ以下のような成果につながりました。

【求職者(休眠美容師)】

  • 育児と両立しやすい時間帯で働けるようになり、仕事と家庭のバランスを実現

  • 技術的な不安が解消され、自信を持って復職し、再びスタイリストとして活躍できる

【美容室】

  • 新たな人材の確保により、平日の昼間の売上白地を埋めることができ、経営改善につながる

  • 休眠美容師1名の雇用で、月間売上が平均34万円、利益が平均17万円増加という、目に見える成果

【既存スタッフ】

  • アシスタントが入ることで施術枠が増え、顧客対応数が向上

  • 結果として、自身の月間給与が平均6.5万円増加し、モチベーションアップにもつながる

審査員のコメント
休眠美容師の復職を支援しながら、人手不足に悩む美容業界の課題を同時に解決する仕組みを実現した点が高く評価された。予約管理システムを活用し、平日昼間の空き時間を可視化して求人設計に反映させることで、家庭と両立しながら働きたい層に新たな就業機会を提供している。さらに、アシスタント業務から段階的に復帰できる仕組みを整えることで、ブランクを抱える人材も安心して再スタートを切れる。美容室にとっても収益やサービス向上につながり、顧客・店舗・美容師の三者に利益をもたらす設計は持続性が高い。データに基づく再現性あるモデルとして、業界全体への波及が期待される取り組みである。

<引用元>https://www.g-mark.org/gallery/winners/29092


私たちの挑戦は、これからも続きます

今回のグッドデザイン賞受賞は、私たちが美容業界の未来を創造する上での大きな励みとなります。
これからもリクルートは、テクノロジーとデザインの力を通じて、働く人々の可能性を広げ、業界全体の成長に貢献できるよう、挑戦を続けてまいります。
美容業界の皆さま、そして働くことを諦めかけているすべての方へ。私たちのサービスが、皆さまの未来を拓く一助となれば幸いです。


デザインの成果は、新規開発だけでなく「連携と再定義」にある

改めて、本サービスがグッドデザイン賞を受賞できたことを大変嬉しく思っています。
デザイナーの視点から、今回の受賞の核となったポイントを改めてお伝えするとすれば、それは「すでにあるアセット(資産)を活かしきることのデザイン」です。

  1. 既存データ(SALON BOARD)の再解釈:新しいデータソースを探すのではなく、既存の予約データから「平日の昼間」という売上白地と働き方のインサイトを同時に発見しました。

  2. 機能連携による価値の昇華:予約管理システム(データ)と求人システム(働く場)という異なる機能を持つプロダクトを「休眠美容師の復職」という一つのストーリーで連携させ、単体では生み出せない大きな価値(エコシステム)を構築しました。

  3. 既存概念の再定義:復職時の「ブランクの不安」に対し、「アシスタント」という業界の伝統的な概念を『復職者の再オンボーディングプログラム』として再定義し、不安解消と戦力化を両立させました。

この事例は、「イノベーションは必ずしも新しい技術やプロダクトから生まれるわけではない」ということを証明しています。既存のプロダクト群を構造的に捉え、社会課題解決のために最も効果的な『使い方』を設計し直す。これこそが、未来のビジネスをデザインする上で、最も重要な能力だと確信しています。

私たちの挑戦は、美容業界に留まらず、他の業界の構造的課題を解決するための、再現性の高いモデルとして発展させていきます。

「データとプロダクトの連携で、人手不足と個人の働きがいを両立させる。」

これからも、リクルートのデザインチームは、この考えを軸に挑戦を続けてまいります。

グッドデザイン賞とは
1957年創設のグッドデザイン商品選定制度を継承する、日本を代表するデザインの評価とプロモーションの活動です。国内外の多くの企業や団体が参加する世界的なデザイン賞として、暮らしの質の向上を図るとともに、社会の課題やテーマの解決にデザインを活かすことを目的に、毎年実施されています。受賞のシンボルである「Gマーク」は優れたデザインの象徴として広く親しまれています。

受賞ギャラリー

関連情報

SALON BOARD:https://salonboard.com/

ホットペッパービューティーワーク:https://work.beauty.hotpepper.jp/




記事内容及び組織や事業・職種などの名称は、編集・執筆当時のものです。