
住宅・不動産購入や売買をサポートする情報サイト『SUUMO』。掲載物件数No.1の不動産ポータルとして、多くのユーザーにご支持いただいています。そんな大規模サービスに携わるメンバーは、日々どんな思いで仕事に向き合っているのでしょうか? 今回は『SUUMO』の新機能として2024年7月に先行リリースされた、一戸建てや中古物件見学の「即時予約機能」の開発を主導したプロダクトマネージャー(以下、PdM)の関亜喜奈、エンジニア兼PdMの大塚悠貴にインタビュー。新機能の開発ストーリーとともに、プロダクトの開発を担う喜びを語ってもらいました。
関 亜喜奈(プロダクトマネージャー):プロダクト開発 サービスデザイン室 住まい領域プロダクトデザイン2部
2020年4月、リクルートにキャリア入社。住まい領域のPdMとして、『SUUMO』のスマホサイトのUI/UX改善、新商品企画などを担当。現在は、2024年に同サービスでリリースした新機能「即時予約」の導入推進や、サービス改善を担う。

大塚 悠貴(エンジニア兼PdM):プロダクト開発 プロダクトディベロップメント室 住まい領域エンジニアリング部
2020年4月にエンジニアとしてリクルートに新卒入社。物流新規事業の立ち上げ、『Airインボイス』の開発、『Airレジオーダー』のiOS開発リーダーを経て『SUUMO』へ。現在はエンジニアの仕事に加え、PdMの役割も担っている。

飲食店を予約する感覚で「物件の見学予約」がネット上で可能に
――関さん、大塚さんは『SUUMO』の新機能「即時予約」の開発を推進されたと伺いました。はじめに、どんな機能なのか教えてください。
関:『SUUMO』には、「賃貸」「新築マンション」などいくつかの領域があるのですが、今回は、「新築・中古一戸建て」「中古マンション」「土地」を扱う戸建流通領域で、物件見学を即時に予約できる機能を、2024年7月から新たに追加しました。ネット上で美容院や飲食店の予約をするのと同じように、『SUUMO』に掲載されている物件の見学予約を行えるというもので、最初に東海エリア(静岡除く)で先行リリースされ、2025年2月より関西エリアでも利用可能となっております。

――カレンダーに「○×」が表示されて見学可能な日時がひと目で分かり、簡単に予約できるのがいいですね。まさに飲食店や美容院を予約するような気軽さがあります。そもそも、これまではなぜこうした機能が実装されていなかったのでしょうか?
関:おっしゃる通り、飲食店や美容院ではネット予約が当たり前になっています。また、住宅の領域でも新築マンションでは予約機能を実現できています。我々の部署でもずっと前からこうしたネット予約の機能を取り入れたいという話はあって、実際に検討もされていました。ただ、不動産、特に一戸建てや中古物件を取り扱う戸建流通領域の場合、簡単には実現できない事情があったんです。
まず、飲食店や美容院の場合、予約する場所(店舗)にスタッフさんが常駐しています。つまり、お店側は予約が入った時間にお客さまが来店されるのを待つという形です。しかし、不動産の場合は一つひとつの物件に必ずしも誰かが常駐しているわけではありません。時には遠方にある物件まで不動産会社の担当者、場合によっては売主さんも出向く必要がある。複数人がその場所に集まるにあたっては、全員の予定を管理しやすい仕組みをつくることが求められました。
じつは、2年前にプロジェクトがスタートした当初は、既存の一般的な予約システムを活用することを検討していました。しかし進めていくうちに、物件や多くの関係者の予定などを管理するのが難しく、使いこなすためにかなりのサポートが必要なことなど複数の課題があって断念せざるを得ませんでした。

――その他の課題とは、たとえばどんなことですか?
関:主に2つあります。1つ目は、不動産業界ならではの「業態や事業規模の複雑性」です。業態は売主や仲介など、大きく分類しても4種類あり、なかには複数業態が混在しているパターンもあります。また、「新築一戸建て」「中古一戸建て」「中古マンション」「土地」などが混在し、その事業規模もさまざま。大手のハウスメーカーもあれば、個人の所有者が売りに出している物件もあるわけで、すべてのユースケースで使えるシステムにする必要がありました。
2つ目は、不動産の場合、店舗など固定の場所に常駐していて、そこにお客様がやって来る飲食店やホテルなどとは違って、物件がどんどん入れ替わっていきます。そのため、一般的な予約システムをそのまま使うと、物件が更新されるたびに手動で入れ替えをしなければならず、戸建流通領域の不動産会社にとっては 使い勝手がよくありませんでした。
そこで、既存のシステムを流用するのではなく、イチから戸建流通の領域に合わせた予約サービスをつくるという決断に至りました。まずは最低限の機能で、誰でも使いやすいシンプルなものをつくってリリースしてみようと。2023年にプロジェクトがスタートし、約1年かけて開発を進めていきました。
PdMとエンジニアが議論を重ね、誰もが使いやすい予約システムを模索
――関さんはPdMとして、大塚さんはエンジニア兼PdMとして施策に携わったということですが、具体的な役割を教えてください。
関:私はPdMとして、主に要求定義を担当しました。リクルートの営業担当やクライアント(不動産の分譲業者、仲介業者など)に直接ヒアリングしながら、「どんな機能、仕組みであれば使いやすいか」を整理するのがメインの役割でしたね。
大塚:私は、初期リリースまではエンジニアとして開発に専念していました。リリース後はPdMの業務と開発の業務が半々という形です。
――リリース後も引き続き機能の改善を行っていて、そこで大塚さんはPdM的な動きもしていると。
大塚:そうですね。先ほど関からも、「まずは最低限の機能を備えたシンプルなものをリリース」という話がありましたが、今回のプロジェクトはリリース後にどんどん機能を追加したり、改善したりしていく前提でスタートしました。我々としても戸建流通領域の予約システムは未知の経験で、結局のところ実際に世に出してみないと分からないことも多い。まずは早く作って、使っていただいた不動産会社からのフィードバックを基にブラッシュアップしていくやり方のほうが効率的だと考えたからです。
ですから、今も不動産会社へ足を運び、実際に使ってみたうえでの課題をヒアリングしながら開発を進めています。私もPdMとして、先方から直で聞き取りを行うこともあります。
――ちなみに、本来はエンジニアである大塚さんがPdMの役割も担っているのは、人手が足りないから?
大塚:いえ、どちらかというと自分がやりたいから兼務という形をとっています。社内のエンジニアで私のような動きをしているメンバーも、徐々に増えていますね。現場の声や要望を直に聞くことで課題に対する解像度が上がりますし、それを解決する効果的な手法も浮かびやすくなるのが兼務のメリットかなと思います。

――では、お二人それぞれの役割のなかで、今回の予約機能を開発するにあたってどんな課題があったのか、また、それをどう解決したのか教えてください。
関:戸建流通領域の予約システムではすべての利用者が簡単に使えて、予定を管理しやすい仕組みづくりがマストでした。そこは、エンジニアのチームと何度も議論を重ねて、どうすれば「みんなが」使いやすくなるか検討しましたね。最終的には、新たに開発した予約基盤を不動産会社が普段から使っている『SUUMO』の入稿システム(募集する物件を入稿するシステム)とは分けて作った上で、2つのシステムが連動する形にしました。これによりシステム間の結合度が小さくなり、予約システムは機能をつくり込んでいくことができますし、不動産会社の方は使い慣れた入稿システムを経由してスムーズに予約の管理ができます。実際、ヒアリングでも「新しいシステムをできるだけ増やさないでほしい」「とにかくシンプルに、分かりやすくしてほしい」というお声をたくさんいただいていましたので、そこはかなり意識しました。そして、これからも改善していきたいと思っています。
大塚:今回のプロジェクトにアサインされたエンジニアのチームは、もともと飲食や旅行など他領域のプロダクトを手掛けていたメンバーが多く、そもそも住まい領域というドメインに対する理解が不足していました。そこで、まずは私たちエンジニアも、不動産会社へのヒアリングに同行し一次情報を得て、業界のことや、実際にプロダクトを使う方々の理解を深めるように努めていきました。

リリース後も不動産会社へのヒアリングを重ね、機能を磨き続ける
――2024年7月に東海エリアでプレリリースされてから約半年が経過しました(取材時点)。当初の反応はいかがでしたか?
関:おかげさまでプレリリース当初から、想定以上に多くの不動産会社とユーザーの皆さまにご利用いただき、『SUUMO』上での予約数も来場数も、顕著に増加しました。一方で、「もっと、こうしてほしい」というお声も数多くいただきました。ご要望のなかには、もともと想定していたものもありましたが、こちらが見落としていたものもあって。予定していた追加の機能を開発しつつ、先方のご要望に応える細かな改善もしていくような状況で、両方をスピーディーに回していくのはなかなか大変でしたね。
――たとえばどんな声が挙がっていましたか?
関:初期のヒアリングで特に多かったのは「無断キャンセル」を懸念する声です。簡単に予約できるようになると、(心理的に)簡単にキャンセルもできてしまうのではないか。見学当日のドタキャンや、そもそもお客さまが約束の場所に来ないケースも増えるのではないかと。多忙な不動産会社の営業担当の方としては、わざわざ遠くの物件にまで行って無駄足を踏むのは避けたいですし、中古売買の場合は同行してもらった売主さんにまで迷惑がかかってしまいます。
こうした不安の声を受けて、「見学即時予約」では、前日の17時までネット上でキャンセルできる機能を設けました。急な予定が入るなどして行けなくなった場合はスマホ一つで簡単にキャンセルできるため、実際には懸念していたほど無断キャンセルはありませんでしたが、それでも不安という不動産会社の方もいらっしゃいます。そこで、無断キャンセルがあったことをシステムに登録できる機能などを追加しつつ、私たちも無断キャンセルの状況をモニタリング。その他のさまざまなモニタリング指標や不動産会社からのご意見を踏まえて、どの機能を追加して、どんな改善を行うのかといった開発の優先順位を決めていましたね。

『SUUMO』という大規模サービスだからこそ感じられる喜びとは?
――先ほど大塚さんもおっしゃっていたように、『SUUMO』はプロダクトの規模が大きく、多くの人が利用しています。ある意味、成熟したサービスということで、新規事業やこれから成長していくサービスに比べて「伸び代」という点では限界があるように思われることもあります。PdMとして、すでに成長を遂げたサービスをさらに使いやすくする、あるいは新たな機能を追加してより価値を高めるために意識していることはありますか?
大塚:そもそも『SUUMO』が成熟しているかというと、必ずしもそうとは言えないと思います。たしかに、「物件を探すサービス」「物件の資料請求を目的としたサービス」として考えれば、かなり成熟しているかもしれません。ただ、そこからもう一つ先の「物件への来場までサポートするサービス」というところまで枠を広げると、まだまだ十分に機能しているとはいえず、やれることはたくさんあります。今回の即時予約の機能もその一つですし、不動産会社の集客や追客といったところでもお役に立てる施策があるはずです。
――なるほど。サービスの枠を拡大していくと、やるべきことはどんどん見つかると。チームのメンバー同士でも、日頃からそういった話は出ていますか?
大塚:そうですね。それこそ関さんとも常に「将来的に『SUUMO』をどんなプロダクトにしていきたいか」「どういう方向性でサービスの枠を広げていくべきか」といった話をしています。
関:そのうえで、週に1度の、プロデューサーとの打ち合わせの場で、「今後は、こんな機能を追加してはどうか」といった意見を伝え、具体的なエンハンスの計画をすり合わせるんです。ですから、プロダクトやサービスをより成長させるためには、日々のコミュニケーションもかなり重要になってきますね。
――では、最後にお二人に伺います。PdMとして『SUUMO』というサービスを手がける喜びや、やりがいを感じる部分を教えてください。
大塚:一番のやりがいは、自分自身や友人が「普通に使っているプロダクト」を手がけられていることですね。住まいを探す、借りる、買うといった、人生に欠かせないシーンで、身近な人の役に立っていることを実感できる。それは『SUUMO』という大規模なサービスに携わっているからこそ、感じられる喜びなのかなと思います。
関:私はリクルートに入社する前はスタートアップで新規サービスに携わっていて、大規模なサービスを担当するのは『SUUMO』が初めてでした。同じPdMでも新規系のサービスとは求められるスキルがまるで異なり、最初は苦戦することも多かったです。たとえば、新しい機能をひとつ追加するにしても、サービスの規模が大きければ大きいほど合意形成のハードルは上がります。そこをいかにチャレンジして突破する力だったり、周りを巻き込んでいく力だったり、そういうものがあるかどうかでやれることが大きく変わる気がしますね。私自身、『SUUMO』で新機能を導入したり、サービスを改善したりする難しさを痛感する日々ですが、突破できた時の喜びも大きくて。今回の即時予約機能も、検討段階を含めれば約3年前から携わってきました。それがついに世に出るとなった時のワクワク感や喜びは、これまでに感じたことのないものでしたね。それに、『SUUMO』はユーザーやクライアントの数が多いだけに、リリース後のリアクションやフィードバックの量も大きくなります。そのぶん、難しさやプレッシャーも感じますが、とてもやりがいのある仕事だと思います。

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