ハードウェアスタートアップを取り巻く環境がヤバい!ニコ技深圳観察会2017春に参加してきた - 1日目
平野 雄一
リクルートマーケティングパートナーズでAndroid / iOSアプリの開発を担当している平野です。
2017/4/3〜5に行われたチームラボの高須さん主催のニコ技深圳観察会に参加してきました。ニコ技深圳観察会は、高須さんのガイドにて3日かけて中国広東省の深圳にあるハードウェアベンチャーやアクセラレータ、Makerスペースなどを巡るツアーです。
このニコ技深圳観察会の参加者はレポートをブログ等に掲載するというルールのため、会社のブログを借りてレポートを掲載します。
なお、今回のニコ技深圳観察会は有休を使った私費での参加であり、リクルートマーケティングパートナーズの業務とは一切関係ありません。
記事一覧
- 準備編
- 0日目 世界最大の電気街がヤバい
- 1日目 ハードウェアスタートアップを取り巻く環境がヤバい - この記事
- 2日目 深圳のメイカームーブメントがヤバい
- 3日目 深圳の工場がヤバい
- 総括 いま深圳がヤバい
Troublemaker
1日目の最初は、深圳の華強北にあるコワーキングスペース"Troublemaker"へ。Troublemakerはコワーキングスペースで席やオフィスを有料でレンタルしたり、入居者に対して企画から製造やプロモーション・KickStarterへの出品までを総合的にサポートしていました。また、中国の法律に対応したサポートをしているとのこと。中国ではその辺の適当な工場に頼むとアイディアや設計などが当たり前のように流出するため、法律家の役割は重要っぽいです。アイディアをどう守るのか、またはどう守らないのかををサポートしてくれるみたいです。
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Photo by 伊藤亜聖
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Photo by 伊藤亜聖
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Photo by 伊藤亜聖
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ハードウェアを作るためにスタートアップを興し、深圳に飛び込むことになったらTroublemakerはとても良いパートナーになるかもしれません。
HAX
同じく深圳にあるハードウェアアクセラレータ"HAX"へ。HAXは世界初のハードウェアアクセラレータで、世界を変えそうなハードウェアに対して株の数パーセントと引き替えに、出資・メンターの紹介・コワーキングスペースを提供・生産や流通のサポートなどをします。
HAXのオフィスでのBenjaminさんのプレゼン"How to create 1,000 Sony"のスライドが公開されていましたので下記に引用します。スライド枚数が多く見えますがさっと読めます。面白いので是非見てみてください。日本は大きなハードウェアメーカーが多いのに、ハードウェアスタートアップがものすごく少ない件について掘り下げています。
HAXから出資を受けてハードウェアを作っているフジモトさんによると、深圳の良さは「部品を電話で頼むとすぐ届く環境1)おばちゃんが出前をもってくるかのように、部品を持ってきてくれるらしい」「いろんなバックグラウンドを持った先輩がいて、メンターがいる」とのこと。
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Photo by 茂田カツノリ
德普沙井电子城 モーター市場
深圳のモーター市場。写真が見切れちゃっていますが、写っている2倍以上の大きさのビルです。ここには工場機械の部品類が売っています。深圳の工場街にある"德普沙井电子城"にも行ったのですが、こちらは中国の祝日のため残念ながら閉まっていました。ここではモーターやコンプレッサーといった工場で生産に必要な機械のパーツのみを売っているようです。工場で機械が壊れた際にここに来れば交換部品が小売りで買えるので、最小限のダウンタイムで工場を再稼働させることができます。
工場で使うパーツの小売りだけでこんな大きなお店が成り立つのはすごい。
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JENESIS
JENESISは藤岡さんが2012年に創業した日本企業向けに製造受託・品質管理・検査代行やアフターサービスなど行ってる会社です。ここでは藤岡さんからかなり面白い話が聞けました。
- JENESISは自社ブランドで製品を出していないのですが、2016年タブレットのシェアは個人向け・法人向け併せて国内12位
- 納入された部品の全品検査を行っており、初期不良率は一般的な深圳の工場よりもかなり低い。具体的な数字についてはここでは避けますが、私が見聞きした限りの似たような製品を作っている日本メーカーの工場と少なくとも同じ程度の初期不良率、むしろ低いくらいかもしれなません。
- 深圳の人件費は台湾を超えたと明言2)統計的な工員の給料はまだ台湾のほうが上ですが、中国の工員は寮と3食を雇用側が用意するので工場から見た人件費は台湾を超えているのかもしれません。JENESISの修理センターのある宮崎の人件費も超えたかもとのこと。
- JENESISは深圳で出回っている共通基盤や共通ケースといった深圳のエコシステムに依存していることと、半径1時間以内でサプライチェーンや税関までカバーできる深圳に居続けるだろう
- 深圳の工場は不景気で今生き残りを賭けている。深圳のスタートアップまわりの半端ない景気の良さとはかなり対照的な物言いがすごく印象的でした。
訪れた当日は中国の祝日だったため工員はいませんでしたが、ラインを見学することはできました。大きな工場ではありませんが、ラインが綺麗に並べられていたり治具が整然と置かれていること、何よりもコンパクトなラインの作りを見るとまるで日本の工場を見ているようでした。
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Photo by 伊藤亜聖
藤岡さんはヤバいくらい面白い人でした。工場で説明をしているときの話もすごい面白かったのですが、観察会のメンバーと一緒に夕食を一緒したときの話がヤバい面白さでした。こんな面白い人は私の人生の中で会ってきた人の中でも、そう思い浮かばないくらいのレベルです。
そんな藤岡さんが本を出すらしいので楽しみです。
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