開発と保守部隊組織の融合!皆の声から組織施策を作る・動かすプロセスとは?
佐々木 愛
はじめに
こんにちは。ICT統括室の佐々木です。
私は金融系SIerでの基幹システム開発のキャリアを経てリクルートに入社しました。
現在は従業員向け基幹システムの保守をしながら、組織活性化を担っています。
多様化の進む現代では、VMV(ビジョン・ミッション・バリュー)の浸透やそれにつながる組織施策ってますます難しくなってきていますよね。
あくまでも一例ですが、今回は開発組織と運用組織の協働における課題への向き合い方や、組織の運営や活性化につながった施策をご紹介したいと思います。
背景
数年がかりの大規模なシステム刷新プロジェクトを遂行するにあたり、新システム開発組織と現行システム運用組織との融合を図る必要性がありました。
施策の骨子としては大きく2つ。
①単なるプロジェクトメンバーとしてではなく、同じシステムに携わるメンバーとして、全員の目指す方向性を同じにすること
②プロジェクトを遂行するにあたりメンバーに意識してほしいことについて、メンバーの理解の解像度を上げること
しかし業務プロセスやタスクの抽象度が高く、プロジェクトのフェーズが進み関わるメンバーが増えれば増えるほど組織の運営や活性化の施策の実行難易度は高くなります。
私はそれまでのキャリアのなかで組織運営に関する経験もなかったため、まずはフラットな視点で自分にもできることから取り組んでいくことにしました。
取り組んだ内容
(1)保守担当ユニットと刷新開発担当ユニットのVMVを統一
従来別々だったそれぞれの組織のVMVを統一し、組織長によるVMVの説明を両組織合同で実施しました。そしてそれに留まらず、メンバー一人ひとりが業務においてVMVを体現する行動がどのようなものかについて理解を深めるための施策を展開しました。
具体的にはVMVを日々の業務に落とし込んで考えるワーク施策を通して「いま自分に必要な考え方や行動について考え、理解を深めること」を支援する取り組みを実施しました。
またグループワークとして普段一緒に業務を行っているメンバーと、誰のどういった動きが組織のVMVを体現していたか、課題解決の糸口につながったかを議論することでもう一段階深く振り返りをすることができました。
さらには組織長が全員分のワークシートに目を通し、Goodポイントを全体会議で共有、紹介したことで個々の自己効力感向上や組織全体での目線合わせにつながりました。
(2)やりっぱなしにしないプロジェクトキックオフ
大規模なプロジェクトになるとキックオフを通じてプロジェクト遂行に必要な情報の共有を受けたり、チーム内の認識を統一させたりしますよね。
でも一度集まって話を聞くだけではただのオリエンテーションになってしまいがちです。
そこで刷新開発担当ユニットと保守担当ユニットのキックオフを定期的に合同で実施することで、お互いの目指すべきゴールの目線合わせを行いました。
またキックオフをやりっぱなしにせず、その後の打ち手につなげるために以下を実施しました。
◆キックオフ終了後3日以内にアンケート回収し、回答結果を速やかに分析
翌週には組織長会議に持ち込み新たな打ち手を提案することにしていました。
そのため細やかな報告資料は作成せず、Formsで集計したアンケート結果とメモを手持ち資料として会議に参加することでよりスピード感のある壁打ちを実現できました。
◆ アンケートで出たコメントや質問には組織長から一人ひとりに回答する
キックオフミーティングのなかで質問や発言をするのはハードルが高いものです。
(プロジェクトや組織の規模が大きくなれば尚更ですよね。)
でもアンケート中にコメントや質問を必須回答として設けてみると意外と熱い回答が出てきたりします。アンケートを回収するだけでなく、それらのコメントや質問に対して組織長が一人ひとりに回答する運用を開始しました。
これが組織長とメンバーの距離感を縮めると共に、組織の方向性を 腹落ちさせるきっかけづくりにつながりました。
◆プロジェクトメンバーの需要に寄り添った組織内広報誌の発行
入社や部署異動による転入でプロジェクトにjoinした後、既に実施されたミーティングのキャッチアップをするのに時間を費やしたという経験はありませんか?
そのような課題を解決するために、組織内で実施されたワーク施策やイベントを端的に理解することを目的に組織内に特化した定期広報誌の発行をしています。
キックオフミーティングの資料は抽象度が高い内容であったり、その場で質問が出ないことも多くあります。
そこで、誌面の質疑応答コーナーを後から見直したときにその回で何を話していたのかを嚙み砕いて伝えることができ、イベント補足資料のような感覚で読んでもらえるような運用にしています。
この広報誌は毎月末に発行していますが、他の組織にない目を引くデザインということもあり、90%という高い購読率を維持しています。
試験的に始めた施策ではありますが、結果的に組織の方向性をより浸透させると共に、メンバー理解につながりました。
★どんな内容が掲載されているのか
・前述のアンケート結果の共有
→周りのメンバーがどのような視点でミーティングに参加していたか、どのような点に疑問を感じたかを知るきっかけに。イベント当日の写真を併せて掲載することでオフラインで参加できなかったメンバーにも会場の雰囲気が伝わる記事になっている。
・メンバー紹介
→大規模プロジェクトでよくある「誰が何を担当しているのかわからない」を解消するためにメンバーの担当領域や持ち味を理解することを目的に紹介コーナーを設けている。
・組織内のナレッジや新たな取り組みの共有
→データ利活用施策や生成AIハンズオン、出張報告など組織内のナレッジや新たな取り組みをタイムリーに掲載。
◆手厚い立ち上がり支援で「置いてきぼりにしない」組織づくり
新入社員や育休からの復帰者、他組織からの転入者については個別に過去の経緯や会議の目的、VMVについて説明しています。業務のキャッチアップだけでなく組織への適応を細やかに支援することで「置いてきぼりにしない」組織作りを意識しました。
ロジックではなく、多様なニーズをキャッチするために丁寧なヒアリングや思い切った取り組みも時には必要だと考えています。
後から参画したメンバーが「置いてきぼり」にならない雰囲気や仕組みを作ることで、個々の自己効力感だけでなく「この組織だから、チームだからプロジェクトを乗り切れそう!」といった組織効力感を高めていくことの重要性を感じています。
まとめ
・開発組織と保守組織の融合を進めるには、トップのメッセージも大切だがそれだけではダメ。
・トップのメッセージを受けて、メンバーが組織としてあるべき姿に必要だと思う事をアンケートなどで吸い上げる。吸い上げた後は、いかに高速PDCAで施策の壁打ち&実施をできるかが勝負!
・組織の方向性や大切にしたい価値観を浸透させるための施策はシンプルで個々の腹落ちを支援するものが良し。ただし一度に達成するのは難しく、ワーク施策やクロストークを用いて、段階的に定着させることを目的に実施することを視野に入れる。
最後に
組織の立ち上げ期はオフライン開催のキックオフミーティングを通して以下のことを図りました。
・一体感の醸成
・組織ビジョンの共有
・メンバーの顔と仕事の一致
また「VMVを自分の日々の業務に落とし込んで考える」ワークを通して組織価値観が浸透してきたことから、私達の施策の目的は以下のようにシフトしてきています。
・個々のメンバーが具体的な動き方を意識できるようになる
・メンバーがゴールのイメージを明確に持つ
今後はプロジェクトの目的や組織価値観に沿って一人一人がミッションを「やりきる」ことを支援し、難しい局面でもお互いの持ち味を生かして動ける組織作りを進めるフェーズに入っていくと考えています。
組織運営に正解はありません。
これからも、アンケート活用や定期広報物などの施策だけでは解決できていない本質的な課題に向けた新たな打ち手を模索していきます。
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