UXを知らないエンジニアは損をしている?やりがいにつながるUXの話
はじめに
ICT統括室の宇都宮です。この記事はUXへの理解が乏しかった昔の自分に伝えたいことを意識してまとめてみました。UXについて実はあまりよく知らないという方にとって少しでも参考になれば嬉しいです。
簡単に自己紹介
現在私は、社内SEとして経費精算や請求書処理で利用する社内システムの保守業務を担当しています。サービスオーナーである経理部門と連携しながら機能改修や障害対応、ユーザーからの問い合わせに関する調査などを行っています。
リクルートにはキャリア採用で入社しており、前職ではSIerで顧客の要求に合わせてシステムを設計・導入する仕事をしていました。転職してリクルートの社内SEになってからも、要求に合わせてシステムを考えるという点では前職と共通する部分も多いと感じています。
そんな私ですが、ある時、担当システムのUXを向上させるミッションを担当することになりました。UXと真正面から向き合った経験もなく知識も乏しかったため、まずUXについて理解するところからのスタートでした。
そもそもUXとは何か?
UXとはUser eXperienceの略で、ユーザー体験を意味します。UXには、製品やサービスそのものに対する体験だけではなく、それに関連する体験すべてが含まれます。
UXを理解するために、まずは身近なところで、コーヒーショップを例に考えてみたいと思います。
コーヒーショップの商品はコーヒーであり、顧客はコーヒーに対して代金を支払います。一方で、顧客が価値として認識するのはコーヒーの味や香りだけではありません。注文してからコーヒーが提供されるまでの過程や、店内の雰囲気、ソファの座り心地など、コーヒーに関連する様々な体験も顧客にとっての価値となります。
また、コーヒーショップのCMを見てワクワクしたり、コーヒーショップでの体験をSNSに投稿して反響を得るなど、店舗以外での体験もコーヒーに付随する価値として認識されます。
このようにUXとは、商品やサービスに関連する様々なユーザー体験を指し、商品やサービスの満足度を上げるためにはUXを意識する必要があることがわかります。
システムに置き換えて考えると、画面の見た目や操作性といったシステムそのものだけではなく、事前情報としてのシステムの評判や、操作ガイドのわかりやすさ、困った時のサポート対応など、システム以外のところでの様々な体験もUXとなります。
つまり、UXを向上するためには、システムだけでなくシステム以外も含めた体験すべてを意識する必要があります。
社内システムのUXを向上することの価値
一般消費者向けのサービスであれば、UXはユーザー獲得に直結するために非常に重要だというのはイメージしやすいかと思います。
では社内システムの場合はどうでしょうか?
社内システムの場合、UXが悪いから他のサービスを利用するといったことは難しく、UXが悪くても使わざるを得ない状況であることが多いと思います。だからこそ社内システムにとってもUXは非常に重要であると考えています。
UXを上げることができれば、従業員の業務が効率化され、それによって生み出された時間を使ってより価値のある仕事をすることができるようになります。
例として、私が保守をしている請求書処理システムで試算してみます。
仮に1件の起票にかかる時間を1分短縮できたと仮定します。請求書処理システムにおける1ヶ月あたりの起票件数は約2万件あるため、全体で毎月2万分(約2人月)の削減になることがわかります。
生み出された時間を商品企画部門や営業部門での商品企画やプロモーションなどに充てることができれば、より良いサービスをより広く社会に提供することにもつながります。少し大げさかもしれませんが、 UXを向上するということは少なからずそういった価値貢献につながると考えています。
UX向上のためにやったこと
リクルートで利用している経費精算・請求書処理システムは、他社が提供するSaaS製品を利用しており、改修できる範囲は限定的になっています。そこで、システムで対応できる部分はもちろん対応しつつ、並行でシステム外へも打ち手を打つこととしました。
具体的には、ポータルサイトでシステムの操作方法をわかりやすく説明したり、ユーザーからの問い合わせが多い内容をFAQとして掲載することで、システムでケアできていない部分のフォローを図りました。
ポータルサイトの改善では、「セグメンテーション」と「ターゲティング」を行い、コンテンツの配置や内容の見直しを行いました。
- セグメンテーションとして実施したこと
システムごとの利用者の違いを踏まえながら、所属部門や利用頻度、システムの習熟度などを軸にユーザーを分類- 経費精算システムの利用者:業務で利用した交通費や物品購入代金の精算を行うため、全従業員が利用対象となる
- 請求書処理システムの利用者:取引先から受領した請求書をもとに経理への支払依頼を行うが、この業務は各部門で担当を置くケースが多いため、利用対象は一部の従業員に限定される
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ターゲティングとして実施したこと
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セグメンテーションで定義した分類の中で最も多くポータルサイトを訪れるユーザー群がどこかをシステムの利用実績やポータルサイトのログなどから分析し、メインターゲットの選定を実施
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上記を行った上で、ターゲットが具体的にどういう場面でどういう経路でポータルサイトを訪れるのか?何を求めてポータルサイトを訪れるのか?といった仮説を立てながらコンテンツの配置や内容の見直しを行いました。
UXを考えるときに意識したいポイント
これまでの取り組みを通して学んだUXを考えるときに意識したいポイントを3つご紹介します。
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無くても伝わる情報は削る
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ユーザーが読む文字をできる限りそぎ落とし、ユーザーの負荷を下げることが大切
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例えば、「交通費申請」というタイトルのページの冒頭で「このページでは交通費申請について説明しています」と説明するのは冗長表現にあたるので避ける
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ユーザーに思考させない
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どのマニュアルを見れば良いのかなど、ユーザーに思考させるとその分だけユーザーの負担となるため、考えなくてもいいところでユーザーを疲れさせないことが大切
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ユーザーの視線の動きを考慮してまず見て欲しいコンテンツを左上に置くなど、できる限りユーザーに思考させないようにする
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少数を救う裏で多数が犠牲になることがある
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1%の人を救う気持ちで書いた情報は、他の99%にとっては不要な情報と言える
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情報を漏れなく記載しようとすることは、結果として多くの人に “情報量が多くて読めない…”といった不満を抱かせるということを自覚する
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サービスを提供する立場からつい前提や注意事項をたくさん盛り込みたくなっても、グッと堪えてユーザーが欲しい情報は何か?という視点で考えることが大切
最後に
過去の自分を振り返ってみると、以前の私はサービスオーナーの要求に応えることが自身の仕事だと考えており、恥ずかしながらUXについてはどこか他人ごとのような感覚でいた部分があったように思います。これまでの私は、サービスオーナーからの要求をいかにして実現するか?を思考していたのに対して、UXを学んだ今では、要求とUXを両方考えて何が最適か?を考えられるようになり、視野が広がったと感じています。
また、自身の仕事がユーザーの体験に大きく影響することを自覚したことで、これまで以上に当事者意識を持つとともに、仕事に対するやりがいもより感じられるようになったと思います。
まだまだUXに関して修行中の身ではありますが、もっと知識を付けてユーザーに自信を持って提供できるシステムを作っていきたいと思っています。
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