Global Scrum Gathering Prague 2015 #2: Open Space
山田 晋平
「Global Scrum Gathering Prague 2015(SGPRG)」は丸一日を「Open Space」に充てられています。「Open Space」とは、「Open Space Technology(OST)」という手法を使い、参加者自身の目的設定や問題解決を行う場です。SGPRGでは15テーブル・3セッションの合計45スロットがあり、比較的大規模に開催されました。
OSTはアジャイル系・スクラム系のイベントでは特によく使われる手法で、リクルートマーケティングパートナーズがオーガナイザの一社として参加しているスクラム公認コミュニティの「Scrum Masters Night!」でも、OSTを中心としたイベント設計をしています。
Open Space Technology(OST)とは
「Open Space Technology(OST)」はHarrison Owen氏が1985年に提唱したワークショップ手法です。大きなテーマ(今回の場合は「スクラムに関すること何でも」)に沿って思い思いのアジェンダを持ち寄り、複数のディスカッショングループに分かれて議論します。主催者からは大きなテーマ・場所・時間のみが提示され、アジェンダや進行方法などは参加者から提案され、参加者によって自律的に運営され、自主的に話し合われます。そのため当事者意識が養われ、自己組織化された状態を体験することができます。また、カオスな状況であるほど、クリエイティブでよりユニークなアイディアが引き出されます。
OSTの原則
Harrison Owen氏の「OPEN SPACE TECHNOLOGY: A User's Guide」に書かれているのが下記の原則です。これらの内容を最初に共有しておくことで、去る者は追わず来る者は拒まず、気持よく議論に集中することができます。これらの共通認識を持つことはOpen Spaceにおいてとても大切なことです。
- Whoever comes is the right people
来た人は誰でも、適切な人である - Whatever happens is the only thing that could have
起こることは何でも、起こりえる唯一のことである - Whenever it starts is the right time
始まる時はいつでも、適切な時である - When it’s over it’s over
終わった時、それは終わりである
OSTの原理(The Low of Two feet:二本足の法則)
Open Spaceでは自らの意思で動き回ることが求められます。
自分に学びがなく、アジェンダに貢献していない状況に自分がいると気づいたときは、どんなタイミングや状況であったとしても、自分の二本の足を使って、もっと好きなアジェンダのディスカッショングループに移動することが自分と周囲にとって有益であるということです。自己責任ですね。
OSTの進め方
- 全員で円になり、主催者が「OSTの法則と原則」、場所と時間を説明し、共通認識を参加者全員で持ちます。
- 全員の前で提案者がひとりずつアジェンダを発表します。
※当日はA4用紙にシンプルにアジェンダを書いたうえで1分以内に発表していきました。
- 設定されたスロットにアジェンダを設置していきます。場所と時間を選ぶのは提案者自身です。
※今回は大きな壁に場所と時間のマトリクスを描き、そこに貼っていくスタイルでした。
- 各ディスカッショングループに分かれてアジェンダごとに話し合いを行います。
上の二本足の法則に則り、いつまでも同じアジェンダに滞留する必要はなく、興味や自分の貢献度に応じて自由に他のディスカッショングループに移動します。自分のレベルに合わないもの、思っていた方向に進んでいない議論などがあれば、他のアジェンダに積極的に移ります。もちろん戻ってきても良いです。
SGPRGで取り扱われたアジェンダ
今回のOpen Spaceで取り扱われたアジェンダを全掲載します。
おなじみ(?)のスクラムマスター・プロダクトオーナーの役割についてや、キーノートやレギュラーセッションに応じた価値・Holacracy・LeSSについて。ペーパープロトタイピング・レトロスペクティブゲームなどの手法について、などなど、幅広いアジェンダが取り扱わされていました。
まとめ
今回はSGPRGにおけるOpen SpaceとOpen Space Technologyの基本情報について取り扱いました。
スクラムの初心者・上級者、とりまくシチュエーションにより自分で提案したり渡り歩いて議論したり、とても面白かったです。1分間のアジェンダ発表を歌やラップに乗せて語ったり、格闘技の呼び込みのようなパフォーマンスを行ったり、とても賑やかでした。このように賑やかに・楽しく提案するマインドは、日本にはあまり無いかなと思います(ありましたら是非教えて下さい)。逆に「Scrum Masters Night!」としては、お酒をいれて議論するスタイルや、完全にオープンな場(今回は多数の会議室に分かれていて、若干出入りに制限がありました)で行うなど、工夫ができている点もあると思います。相互に意見交換しつつ、よりよいOpen Spaceを作り出せたらと思います。
次の記事からは参加・聴講したレギュラーセッションについて、具体的な内容に触れていきます。