UI Crunch Under25に参加してきました
石黒勇気
こんにちは、デザイナーの石黒です。
2015年9月26日(土)、UI Crunch特別版としてUI Crunch Under25というイベントが開催されました。こちらは「若手デザイナーがもっと成長できる場を」というコンセプトです。25歳以下限定のイベントとのことで同世代のデザイナーの方々のお話を聞けることにワクワクとしながら、僕 石黒(24歳)がお邪魔してきました。
25歳以下の若手デザイナーのためのコミュニティ
http://ui-crunch.com/u-25/ 若手デザイナーが集まり、実践し、成長できる場はまだまだ多くありません。
UI Crunch Under25は「25歳以下の若手デザイナーのためのコミュニティ」として
各種イベントを通した、若手層のデザインコミュニティの発展を目的として誕生しました。
なぜ、今デザインなのか
南場 智子 株式会社ディー・エヌ・エー 取締役会長
『DeNAはこれから、デザインが担っていくと感じている』という切り出しから、DeNAの取り組みを軸にUI/UXの大切さに関して話されました。
Delight ≒ ポジティブな驚き
DeNAでは新規事業の三つの質問をします。この質問に答えることができれば、『よし、やろう』となります。
- 成功したときに大きな事業になるか
- 勝てるのか
- やりたくてたまらない人がいるか
ゲーム事業に限らず、エンタメ(マンガボックス、showroom)やライフスタイル(Palette)、またヘルスケア事業(MY CODE)までインターネットで培った技術を軸に幅広く手がけているが、キーワードは一つでDelightできるかである。ユーザーが本当にDelightできるサービスを創る。そして、ユーザーがDelightしてくれることこそが私達のDelightです。
サービスの作り方が変わってきた3つのコト
だれがいつジャッジする?(Permission型からPermissionless型)
従来の新規サービスを作るフローでは、経営会議で議論が行われこのサービスは良いか悪いか判断しています。しかし、失敗することがありました。
以前、若手から発案されたサービスに対して『既存のサービスを少し派生すればいいでしょ?なぜ新規事業でやるのか?』と差し戻したことがあります。しかし数カ月後、別の企業が同じようなサービスをリリースして好調であることを知って『自分が口を出すことで会社がダメになる』と感じました。
こうした経験から、『経営会議はやめよう!』『考えながら作って!』という方針に切り替えました。企画中のサービスを経営会議でジャッジすることはとても難しいため、リリースしてから持ってきてもらうようにしました1)最低限の法務等のチェックされているそうです。。そのとき必ず数字を持ってきてほしいのです。特にリピート率を見ます。本当に良いサービスであれば、ユーザーは勝手に使ってくれるからです。数字の結果が良ければ、私が良くないサービスと思っていても大規模プロモーションなどの全面的なバックアップをしていきます。「ジャッジを経営会議にさせるな!肩書の人ではなくユーザーにジャッジさせよう!」つまり、Permission型からPermissionless型に変化してきています2)すべてがこのケースということではありません。。
サービスをつくるプロセス(strategy drivenからUI/UX drivenへ)
サービスを作っていくプロセスは以下のようにたくさんありますが、重要なポイントはどこでしょうか?
- ターゲットコンセプト市:場調査、ニーズ調査、差別化 etc…
- ビジネスモデル構築:収益ポイント、事業計画、KPI etc…
- 設計実装:ワーヤー、プロトタイプ、デザイン、開発 etc…
- リリース
ビジネス(サービス)の成功はどこでしょうか。それは9割はユーザーが使ったときのユーザーエクスペリエンス(リリース)ではないでしょうか。プロセスの初期段階で工数をかけても、リリースしたサービスがダメでは全く意味がありません。まず考えるべきは"ユーザーにどんな喜び・驚きを届けるのか"ということです。
strategy leads UI/UXからUI/UX leads strategyになるべきです。UX設計(ユーザーに対してどのような価値を与えたいのか)を納得がいくまで設計しましょう。
UI/UX leads strategyのプロセス
- UX設計
- プロトタイピング
- ビジネスモデル
- リリース
マーケティング(セグメント最適化から個別最適化)
すべてのユーザーと同じコミュニケーションをしていてはいけません。以前はセグメント別に最適化するべきとしてコミュニケーションが行われていましたが、いまは個人個人への最適化が主流です。個人に最適化することでDeNAではセグメント別最適化と比較して確かな違い(数字)が出ています(DeNAゲーム事業で実証済)。
マーケティングで行われている個人最適化をクリエイティブへの応用ってできないかを模索しています。10年後?くらいにそんな時代が来るのではないかと考えています。
UIデザイナーだからこそ、ビジネスとデザインの間にたてる
日比谷 すみれ Goodpatch UIデザイナー/プロダクトマネージャー
UIデザイナーとしてクライアントワークに従事する傍ら、プロダクト全体のディレクションも手掛けているそうです。
デザイナーとディレクターを兼任することで、以下のことを感じているそうです。
- 仕事量が倍。タスク管理が大変
- ビジネスの全体像を見た時の理解が早くなった
- デザインの注力ポイントが明確になった
- 出来ることが増えて、いろんなプロジェクトに関われる
https://speakerdeck.com/smrhby/uidezainadakarakoso-bizinesutodezainfalsejian-nili-tutemiru
ビジネス側と作る側の"ズレ"
新卒入社して初めてのプロジェクトで、デザイナー兼ディレクターとしてアサインされました。この経験から"ビジネス側と作る側で生じるズレ"を課題と感じていました。
- 作る側:ゴールと優先度が不透明
- ビジネス側:作る側がブラックボックス
この"ズレ"が生じることで差し戻しや無駄が増えて開発スピードが下がり、チームの士気が下がるという悪循環に陥っていました。
現場のプロセスをわかっている人が2者の間に立って"ズレ"を解消する
この"ズレ"を解消するために現場のプロセスを理解できる人が間に立つことがとても大切になります。実際に間に立って、以下の3つのアプローチを行うことで"ズレ"を解消しました。
1.目指すゴール・優先度(ビジネス側→作る側)
作る側の課題である"目指すゴールが不透明"という状態を作らないようにします。
- プロダクトのフェーズを理解する
- プロダクトの描いているビジネスモデルの全体像を把握する
プロダクトのフェーズを理解するために、いまやるべきポイントを可視化します。そして、それをメンバーが見えるところに常に置いておくようにしました。また、Lean Canvasなどを用いて描くゴールの共通認識を持つことが必要です。こうすることで、自分たちが一番サービスを理解することにつながります。
2.プロセスの明確化(作る側→ビジネス側)
ビジネス側が"作る側がブラックボックス"で何を作っているか不透明であるといった状態に陥らないためにデザインのプロセス・ゴールを共有しました。
- デザインプロセスを共有する
- デザインは常に今達成したいことをゴールにおいた線で伝える
デザインプロセスを共有することで、いま何の目的で何を行っているかコミュニケーションを取ることができます。
3.デザイナーのスキルアップ(デザイナー自身)
デザイナー自身が、作ったモノに対して検証を行えるようになるべきです。
- ユーザーの声を聞く方法・デザインの検証手段を持つ(定量・定性)
まとめます。
- プロセスを明確にする
- 目的ベースでデザインを作り共有する
- 自ら検証する手段を持つ
上記を実践することで今やるべきことにフォーカス出来る状態に近づき、開発スピードも向上します。結果として良いプロダクトを生み出すことにつながります。
ビジネスとデザインの間に立ってから変わったこと
- 作るモノのゴールとプロセスが明確になり、チームの士気が上がった
- 自分の視座が高くなり、活躍の幅が広がった
何をどう作るかを考える人になることで、プロジェクトによって自分の役割を柔軟に変えることができるようになってきました。それが自分の可能性を広げることにつながります。
自分と向き合うセルフブランディング
割石 裕太 Fablic,inc. UIデザイナー
Fablic,inc.でUIデザイナーとして活躍する傍ら、OHという個人名でも積極的に活動をしているそうです。
何をする人なのか?
あなたの戦場はどこにありますか。肩書や役割はたくさんありますが、自分の領域を明確化することで以下のことが変わってきます。
- 仕事の質
- 自分の思考がそこにフォーカス
自分の領域を明確になることで、何をすれば良いのか明確になり行動が変わっていきます。
自分を一言で言えるように考えてみましょう。
どこで生きていくのか
自分の活動範囲を少し考えてみてください。それは会社のデザイナーですか?それとも企業全体ですか?私はもっと外の領域に足を踏み入れたいと思いました。まずは"自分を覚えてもらう"ことをゴールにポートフォリオを制作しました。ポートフォリオを作ったことでサイト自体が名刺代わりに変わりました。また自分のロゴだけを置いた挑戦的なデザインにすることで、自分を覚えてもらうことを達成しようとしました。
何を考えているのか
数回の登壇を通じて自分の考えを人に伝えるという経験をしました。自分の考えを改めて言語化することで、自分自身の核が見えてきました。それは"ユーザー目線でのサービス設計"です。一人で考え続けることで思考が深化するメリットもありますが人に伝えることで、
- 思考整理の純度があがる
- 誰かからフォードバックを得ることが出来る
- 人に伝えることを経験できる
- アウトプットする機会が生まれる
のようなことが得られます。手段はなんでもよいと思います。
想いを見える化したい
和波 里翠 DeNA
新規事業UIデザイン担当する一方で、グラフィックレコーディング活動を行っているそうです。
プレゼントを作るデザイナーへ
某企業のインターンを経験したことで、モノを作れないことをダメだと感じ受託が多い会社へ入社しました。そこでは、グラフィックデザイナーとしてWebサイトからロゴ、ポスター、パッケージに至るまで幅広いモノをデザインしてきました。しかし、受託では中身(プレゼント)ではなく外見(ラッピング)をデザインするばかりでした。ラッピングではなく、中身のプレゼントを作るデザイナーになりたいと想いDeNAへ転職しました。
デザイナーとして伝えたいこと
DeNAでは、UIデザインに加えてグラフィックレコーディングの活動を行っています。会議などをグラレコで記録することでたくさんの利点があります(グラフィックレコーディング)。また、積極的に社外活動をも行っています。社内外の活動を通して仕事をする感覚より仲間を作る感覚のほうが近くなってきました。
デザイナーとしてこれから伝えたいことは
- サービスデザインはプレゼント作り
- 外にも目を向けて発信しよう
- 仲間を作ろう
です。
UIデザイナー歴3年 伝えたいこと
亀谷 長翔 eureka
UIデザイナーとして受託業務で様々なアプリデザインを経験後、現在はカップル専門アプリCouplesのデザインを担当されているそうです。
デザイン未経験がどうやってゼロからデザインを学んだか
大学時代は、特になにもやることがないのでサボりまくりでした。そのためインターンで挽回しようと思いから行き着いた企業がeurekaです。当時は人手不足のため未経験者に関わらずデザイナーで採用していただきました。未経験者がどうやってゼロからデザインを学んだか。それはひたすらインプットすることです。一般的にアウトプットする場面は業務で機会がある反面、インプットすることが疎かになってしまう場合があります。私はインプットで実際に以下のことをやっています。
- ひたすらアプリを触り全画面キャプチャ(現在はファルダ数1,000ほどになるくらい)する
これが、今の私のデザインの引き出しの全てになっていると言っても過言ではありません。またUIのパターンを覚えることは必須です。インプットがあることで、適切なアウトプットを選択することができます。誰よりも多くのインプットをすることをオススメします。
UIデザイナーにとって求められていること
UIデザイナーにとってデザインとは何でしょうか。デザインは目的ではなく手段のはずです。UIデザイナーの役割は、"関わっているサービスをより良い結果へ導く"ことです。ただイケてるデザインを作ることではありません。サービスの成長へのコミット力が求められるため、複数のアプローチが必要になってくると思います。まずは目的を理解して少しづつ手段を増やすていきましょう。
- 豊富なインプットから正しいアウトプット
- サービス成長にコミットするために必要な手段を選択実行する
これが伝えたい事です。
デザインとキャリア
坪田 朋 DeNA @tsubotax
佐藤 ネジ 面白法人カヤック @sato_nezi
赤坂 幸雄 DMM.com
村越 悟 Goodpatch @future79
各社のデザイン文化について、パネルディスカッション形式で対談して下さいました。
各社のデザイン部門の役割
- ビジョンを持ったプロデューサーの思考を形にしていく[DeNA]
- サービス、プロダクトを作る段階からデザイナーがコミットしている
- 職種ごとに人を見ていない[Goodpatch]
- やんわりチームがあるが案件やプロダクトごとでチームを組ませる
- そこでコミュニケーションが活性化するようにしている
- デザイン本質=対話やコミュニケーション
- DMMの名前がつくモノ全てにデザイナーが関わっている[DMM]
- デザインの役割は設計者
- 歴史があるサイトのため、培ってきたモノと新しいモノが混同している
- この矛盾をデザイナーが設計していく
- 基本的にコミュニケーションは大切であり、関係者への合意+共感してもらうべき
- デザインを広めに考える[カヤック]
- 例えば、会議はデザイン
- レビュー会のスタイルもデザインの一つ
各社のレビュースタイル
- レビュー会があるわけでなく、slackに貼って意見交換を行っている[DeNA]
- 毎週必ずある[Goodpatch]
- パソコンならべて、みんなで立ってやる(固くしたくない)[カヤック]
キャリア醸成の仕組み/文化
- 組織的な課題が出てきている[Goodpatch]
- デザイナーのキャリアってどうすればよいかは課題であるが、まずは自分でアクションを起こすことが大切
- 個人として一番テンションが上がるとこを、見つけて配置する
- パフォーマンスが出たら、責任を与えて成長できるようにしたい
- こうした仕組みを今まさに形にしている
- クライアントワークは立候補性[カヤック]
- ねこ案件きたら、ねこ好きがやるみたいな
- やってみな的なモノはゆるっとあるけど、基本は立候補
- 基本本人の希望を汲みとってに合わせてアサインするようにはしている[DeNA]
- 目標にコミットしてあげる[カヤック]
- たくさんの情報があるため、目標がぶれてしまいがちだが、そこにコミット
- 自分のスタイルを変えてやることが必要[DeNA]
- 時代の流れに合わせてできように
今課題に感じていること
- ビジネスを形にするところまで入り込めていない[DMM]
- まだまだビジネスとデザインが遠い
- デザイナーとして、なにができるのかを突き詰めることを組織に落とすことが課題
- デザイナーの給料が安い[DeNA]
- 日本のデザイナーで一番給料高いのはDeNAを目指す
- デザイナー全員が名前が売れる世界が良い
- 自分が作ったモノを外に発信するのはwelcom
- デザインに対する価値を上げたい[Goodpatch]
- デザインとビジネスを近づけて仕事をとる
おわりに
今回も応募数300人近くあったということでしたが、運良く抽選に当たり参加できました。同世代の活躍するデザイナーの方々と話すことで、僕はかなりの刺激をもらえました。特にデザインとビジネスの話は興味深かったです。今まさにデザインとビジネス(ディレクション)的な役割を担っている僕にとって共感できるモノが多く、とても収穫の多いイベントでした。
次回もぜひ参加させていただきたいです。