チームメンバー全員で行なうユーザーテスト
石黒勇気
こんにちは、デザイナーの石黒です。
- リサーチャーと少数人しか参加していない
- リサーチレポートを提出してもいまいち議論が咬み合わない
ユーザーテストを行っていると、このような状況に陥ることがよくあります。
そこで今回は、ユーザーテストの手法や技術にフォーカスした話ではなくチームメンバー全員で参加するユーザーテストの大切さに関してお話します。
弊社のUXリサーチルームに関しては、こちらの記事で紹介しております。
プロジェクトに関わる全ての職種の方々に参加してもらう
プロジェクトメンバーに自分自分の目でユーザーを観察し、『気付き』を得てもらうためには、プロジェクトに関わる全ての職種(PO/企画書/デザイナー/エンジニアetc...)の方々に参加してもらうのがよいでしょう。自分が携わっているサービスをユーザーがどのように使ってくれるのかを実際に観察することで「自分がいままで思っていたユーザー像」と「実際のユーザー」との違いを認識することができます。また、ユーザーテストの結果をレポートや報告するだけでは得ることができない体験をプロジェクトメンバー全員で共有することができます。
といっても、実際は一から百までユーザーテストに参加することは難しいと思います。そのため、どのような目的でどのようなユーザーにテストを行なうのかを明確にし事前に共有する。そして、ユーザーテストを複数回行なう場合は必ず一回は参加してもらうように呼びかけることが大切です。こうすることで、認識のズレを最小限に抑えることが出来ると考えます。
オーディエンスがどうすれば良い"気付き"を得るか考え設計する
ユーザーテストを行なうと、以下のような状況に陥りがちです。
- 自分が見たいところだけ注意深く見てしまう
- 他の工程には無関心になってしまったりしがち
- ろくに観察せずに自分のPCをいじってしまう
そこで、プロジェクトメンバーにどうすれば良い気付きを得てもらえるかを考えて、リサーチの設計することが大切になってきます。以下、設計する上での3つのポイントです。
1. 観察するポイントをファシリテーションする
参加者の全員がリサーチのプロではありません。そのため、いつどのようなところを観察するかをファシリテートすることが重要になってきます。ファシリテートすることで、メンバーがユーザーの行動だけでなく、目線の動き、表情、発言などをより観察するようになり、より多くの気付きを得るキッカケとなります。ファシリテーターが不在の場合は、事前にどのような箇所を観察してもらいたいのかを伝える必要があります。
2. 観察から得た気付きをリアルタイムで可視化させる
ただ観察するだけでなく、プロジェクトメンバーひとりひとりの気付きを付箋などを利用して、リアルタイムで可視化させていきます。メンバーに可視化させるというタスクを与えることで、より注意深く観察することも狙いの一つです(観察しないと可視化できないため)。また、途中から参加したメンバーが、以前のリサーチがどのようなことが行ったかを振り返ることができます。
3. リサーチを行なうことで"気になる情報"を可視化させておく
リサーチの概要やインタビューガイド、サイトの画面などリサーチを行う上で"気になる情報"はたくさんあるとお思います。「あれなんだっけ?」といって探す手間を省くために、それらの情報を事前に可視化させておくことですぐに確認できるようになります。
ユーザーテスト後の振り返り
ユーザーテストでユーザーを観察し、多くの気付きを得ても時間が経つとすぐに忘れてしまいます。そのため、気づいたことを改善やアイデアに活かすために、終了後に参加していたメンバー全員で振り返りを行います。これは、簡易的な振り返りでも構いません。
1. プロジェクトメンバーの全員で話し合うことで、改善点を見つける
ユーザーを観察する際に、企画書の視点とデザイナーの視点、エンジニアの視点は異なります。気づいた問題もそれぞれ違うため、振り返りの場で共有して議論する必要があります。改善案を全員一緒に見つけ出すことで、課題をより自分事としてとらえることができます。また、すぐに改善できるものに関しては行動に移せるようになります。
2. 議論の空中戦を防ぎ、地上戦を作り出す
リサーチを行った後に起こりえる問題として、ひとりひとりの曖昧な記憶によっておこる考えの不一致があります。これにより、声の大きな人の意見が採用されてしまう可能性あります。そんな議論の空中戦を防ぐためにユーザーテストで得られた事実や気付きの情報を付箋に書き出し、壁に貼り、それを見ながら話し合うことで、フラットにリサーチを振り返ることができ、議論の地上戦を作ることができます。
まとめ
以上がチームメンバー全員で参加するユーザーテストのポイントとなります。しかし、実際の業務になるとなかなかこのような状況を作り出すことが難しいかもしれません。そのため、如何にして周囲を巻き込み味方を作るか、そのような環境を作り出していくかが大切になってくると思います。
すこしでも参考になれば幸いです。