UXプロセスをまわせるリサーチ環境を0からつくるためには?
田中拓也
UXデザイングループ UXチーム 拓也です。
前回はUXリサーチルームのご紹介をさせていただきました。
今回はUXアプローチができるデザインチームをこれまで3回ほど0から立ち上げた経験がありますので備忘録としてもまとめていきたいと思います。
当初社内では『UX』という言葉が一人歩きしアカデミックなイメージやUI=UXであるという誤認識が蔓延
当初社内で起きていた課題は、UI/UXという表記からUI=UXと覚えてしまっていたり、
それぞれのプロジェクト関係者が『ユーザー』と向き合っていたが、主観的なイメージで語られていたり、同じユーザーという言葉が異なるターゲットを指していることがあり議論がズレてしまうこともることもありました。
よって、UXデザインのプロセスとアプローチを正しく、素早く理解してもらえるよう、社内でのコミュニケーションに取り組み始めました。

UXアプローチを意識するためにはお客様の行動を目撃&観察!そこでプロジェクトメンバーにアハ体験するのが早い
UXを理解するために一番早いのはカスタマーの課題をその場で「目撃」し「観察」する!が一番であり基本。そのうえでプロジェクトメンバーやキーパーソンにどのようになるほど!といった良い気づき(アハ体験)を得るような場を作るかを考えました。
「どうせそんなこと言ってもリサーチルームなんて無いし・・・」
リサーチルームがなければUXアプローチやユーザーリサーチができない!というわけではありません。
リサーチ環境でお悩みの方は以下のように準備してみてはいかがでしょうか?

やってみなければ何も始まらないしプロジェクトメンバーにアハ体験も客観的にサービスを見て振り返り改善することもできません。
導入初期は簡易リサーチでもよいのでやってみてください。必ず「気づき」はあります。
リサーチ対象者のセグメントは重要!すぐにリクルーティングできる環境を作るには?
導入当初はユーザーを呼ぶにしてもどうやったらよいかわからない。呼ぶだけでも費用がウン十~ウン百万円かかるしユーザビリティリサーチを初めて行うにしてもコストを捻出するにも難しいことが多いと思います。
結論から申し上げると「社員Pool」を作ることを検討してみてはどうか?
利点として社員であればミーティングとして来てもらいユーザーリサーチを行えば費用もかかりませんので即座にできPDCAがまわしやすいところです。
社員Poolを作る上で、属性データ(男女、年齢、サービス理解、サービスをやったことがあるか?リサーチ参加の有無等)のアンケートに答えてもらい社員Pool DB化を行います。その社員Pool DBからリサーチを行う該当サービスの対象となるユーザー方にかなり近い方をリクルーティングしリサーチ参加スケジュールを確認、返答をしてもらい参加してもらいます。
特に社員Pool DBに是非とも参加してもらいたい部署のターゲットは「人事」「総務」「経理」などの制作に関係のない部署のほうが制作者に対しての変なバイアスがなく良いと思います。

今までの社員参加者へのアンケートでも98%以上が「参加してよかった。」「他の案件にかかわることがなくいう機会がないのでうれしかった。」などポジティブな意見も多くいただくことができました。
社員でのリサーチは認知や行動を観察!誤操作や誤認知を観察から目撃しピックアップ!
しかし社員なので「リサーチ精度」はどうなるのか?
少なからずサービスを知っているのだから正確なインサイトは取れないというのが心配になると思います。
僕もよくその疑問をその時の上司から聞かれました。その場合、プロジェクトメンバーが利用導線文脈のシナリオから課題仮説タスクを作成し、リサーチ対象者にタスクをこなしてもらいます。その時、「どのようにユーザインタフェースを利用行動しているか?」、「ご認知はどこか?」「誤操作しているところはどこか?」の観察を中心におこないます。
注意点として、リサーチ対象者が発話する「バリューに関わるインサイト部分」はあまり参考にしないことを前提とします。認知や行動であればそこまでユーザーとの差は少なくバリューに対してのインサイトは社員であればかなりバイアスがかかるので参考にしないほうが良いと考えます。
特にリリース前などプロダクトであれば社員であれば秘密保持もされることはもちろん、即座にリーン的に回すこともできます。

リサーチというのはすごく難しいものととらえてしまいがちです。ただ、しないよりはした方が絶対的に気づきは多いはずです。この行動を繰り返すことでサービス精度も必ず上がりますので是非とも実行してみてください。