Adobe MAX 2014 に参加してきた (2014.10.06 基調講演 - Creative Cloud の大々的アップデートについて)
wakamsha
現在、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスにて10月6日〜10月8日の計3日間に渡り大々的に開催されているAdobe MAX 2014。Adobe Systems社が主催するこのクリエイティブカンファレンスは、毎年世界中から多くのクリエイターやディベロッパーが参加する一大イベントとして注目を集めています。
今回、私 wakamsha が参加させていただくことになりましたので、そこで発表された模様や参加したセッションに関する内容をレポートしていきたいと思います。
9:00am L.A Convention Center 到着
写真は前日に撮影したものなので周りに殆ど人が写っていませんが、当日は既にたくさんの人でごった返していました。年齢もバラバラですね。自分と同世代かもっと若い世代が多いかと思いましたが、割りとご年配の方も多く参加されていました。
今回僕は日本のアドビシステムズ社主催のアドバンスドツアーに申し込んでの参加だったためか、従来のとは異なる特別仕様パスが配布されていました。コレの特典として基調講演の同時通訳を受ける事が出来るわけですが、会場入りのゲートも一般のそれとは異なるため、全く並ばずに入ることが出来ました。
9:05am 会場入り
MAX 自体のメイン会場は Los Angeles Convention Center という施設ですが、基調講演はすぐとなりの Nokia Theatre というホールで行われます。会場に入ってみての第一印象は予想以上の大きさ。最大7100人を収容できるこのシアターは、もともとコンサートホールであったりアメリカン・ミュージックアワードの授賞式といったイベントで使用されているものだそうです。ステージもとても大きく、会場内に爆音で流れる BGM はライブ会場の雰囲気そのものでした。
そして何よりエアコンが強すぎる。この時期の L.A は平均気温が30度超えと日本で言う真夏のような気候なのですが、建物という建物の中の冷房が半端じゃないです。外は半袖で大丈夫でも室内に入るとちょっとしたパーカーやセーターを着ないと途端に体調を崩してしまいそうです。しかし周囲を見渡しても寒がっているのは自分たちアジア人くらいで、現地のアメリカ人達は余裕のTシャツ一枚でした1)予想していたことですが、現地の人たちはとにかく肉厚です。何故かビーチサンダル率が高め。。
9:40am 基調講演開始
ステージ上にそびえ立つ巨大スクリーンがまるで回転扉のように動き始め、超絶かっこいい映像が流れ始めました。いよいよ基調講演が開始されるようです。
まずはアドビシステムズ社 CEO の Shantanu Narayen 氏が登場。
これまではコンテンツを消費するだけだったスマートフォンやタブレットといったモバイル端末だが、これからはコンテンツを作る為のデバイスとしての役目を担うようになってきます。我々アドビはそのためアプリやツールを積極的に開発していきたいと考えております。それはすなわちいつでもどこでもクリエイティブな作業を行うことができるということであり、デスクトップ環境との垣根をなくすということなのです。
また我々はクリエイターたちの為のコミュニティ育成にも力を入れていっております。Behance のようなソーシャルポートフォリオだけでなく、Creative Cloud もまた世界で何百万人ものクリエイター同士がつながり、お互い学び合ってインスピレーションを刺激しあう場を提供しているのです。
良いデザインは良いビジネスにつながります。差別化のために良いデザインを作るのはとても大切なことです。大企業、中小企業、エンタープライズ向け、コンシューマ向け etc... 良いデザインへの取り組みはこれら関係なく取り組んでいることです。そう、良いデザインのためにも場所を選ばず作業ができることは重要です。(クリエイティブな)ワークフローの一環としてもモバイル端末は重要なポジションとなって来ています。もはやモバイル端末は閲覧のためだけのそれではありません。
10:00am 進化するCreative Cloud とそのアプリたち
Creative Profile - 全てのアセットをクラウド上で管理すればいいじゃないか
クラウドはもはや単なる巨大なストレージ環境ではありません。そんなものは既に時代遅れです。あなたの作ったカラーパレット、ブラシ、テキストスタイル、画像、レイアウト。これら全てをクラウド上で管理します。オンラインはもちろんローカル(同一のデスクトップ)間でも、複数のモバイル端末間でも同期する事が出来ます。
さらにこれらのアセットはブラウザからでも参照することが出来ます。つまり作成したアセットをチーム間で共有することが出来るのです。同時にそれはあなたが気に入った他のクリエイターによるアセットをライブラリとして集めることも出来るというわけです。
また、これまでAdobe Kuler という名前で提供してきたカラーパレット管理アプリは Adobe Color CC として生まれ変わりました。コレまで以上に Creative Cloud 連携が強化されています。
Adoe Shape - スマホで撮影した写真をデータ化してシームレスに Illustrator 上で編集
これまでも Adobe CC ではモバイル端末向けのアプリをリリースしてきてはいましたが、それぞれが独立してしまっていて、充分なアプリ間連携ができていなかったのが課題でした。ここでは Adobe Shape CC と Adobe Illustrator Draw による連携をご紹介します。
Adobe Shape CC はスマホといったモバイル端末で撮影した写真をベクターデータに変換することが出来るアプリです。しかもこのアプリ、撮影された写真だけじゃなくてプレビュー画面上でもベクターデータが描画されているというから驚きです。これから生成されたベクターデータはその場で Creative Cloud にアップロードされ、これから紹介する Illustrator Draw 上ですぐに使用することが出来ます。
この他にも iPhone のカメラビューからリアルタイムでカラーパレットを取得(生成)することが出来るなどといったデモも発表していました2)カラーパレットアプリは少し前に個人的に作ろうと挑戦していたものなので興味ありますね。。
Illustrator Draw - モバイル端末向けドローアプリ
Adobe Illustrator Draw はモバイル(iPad)向けのドローアプリです。タブレットというデバイスの特性を利用した直感的なスケッチなどをするためのアプリとなっています。ここで描かれたものはその場でCreative Cloud にアップロードされます。もちろんデスクトップ版 Illustrator で続きの作業をすることが出来ます。
Adobe Brush CC - ブラシに特化した新しいアプリ
Adobe Bruch CC は名前の通り Photoshop で使われるブラシを簡単に作成することが出来るアプリです。モバイル端末という特性を活かして写真データをキャプチャしてブラシを作ることが出来ます。こちらも Creative Cloud に即アップロードされるので、デスクトプ版 Photoshop ですぐに使うことが出来ます。
Adobe Photoshop Sketch
Adobe Photoshop Sketch は iPad 向けのスケッチアプリです。Brush CC で作成したブラシを即読み込んで使うことが出来ます。カメラでキャプチャ出来るものは全てブラシにしてしまうことが出来ます。タブレットだけで高品質なイラスト(絵画と呼べるクオリティ)が描けてしまいます。
Photoshop Mix
Photoshop Mix は言うなれば iPad 版 Photoshop です。デスクトップ版 Photoshop と互換性があるので、 PSD ファイルのやり取りはもちろんのこと個々のレイヤーまで参照することが出来ます。更に画像は24メガピクセルまでサポートしています。
このアプリの凄いのはなんといっても指による直感的な操作性でしょう。写真を指で直接なぞって要素を選択し、そのまま削除することが出来ます。また写真の明るさ調整もモバイル端末上で行うことができ、写真の背景を自動選択して消すといったことも出来てしまいます。
Premire Clip - モバイル端末で高品質な動画をスピーディに
Premire Clip はモバイル端末向けの動画編集アプリです。スマートフォンやタブレットで撮影した動画素材をその場で編集することが出来ます。動画素材の並び替えはもちろん、端末内にある音声データの読込、動画素材のクリッピング3)部分的に切り出す操作のこと。、カラーフィルタの適用、更に Premire Pro 上で編集の続きを行うことができます。
以上のように全てのCreative Cloud アプリがシームレスに連携できるようになりました。
10:50am Adobe Creative SDK - サードパーティにもアドビの技術を
Cretive SDK はその名の通り、サードパーティ製のアプリにおいてもアドビの提供する技術を利用できるようにするためのライブラリのことです。
既に多くの技術がSDK として提供されています。
ここで一つの事例を紹介しましょう。threadless というサービスはオリジナルデザインのTシャツを作ることが出来るサービスを展開しており、この機能はCreative Cloud と連携しているので、Creative Profile にあるアセットを取り入れることでオリジナルデザインのTシャツを作ることが出来るのです。
この他にも既にいくつかの企業がCreative SDK を採用しています。モレスキン社は自社が提供するアプリで作成したメモをアドビのアプリにシームレスに取り入れることが出来るといたサービスを展開しています。
10:56am Creative Talent Search - 仕事の依頼もBehanceから
Behance にはすでに400万人以上のクリエイターが作品を登録して積極的に活動しています。彼らの中には作品を掲載することで仕事の依頼が来るというものもいます。企業の中にもクリエイションのリサーチにまずBehanceからチェックするというところも少なくありません。なぜならBehanceにはクオリティの高い作品が非常に沢山あるので、一定の信頼を得ているからなのです。
また、アドビはCreative Graph というアルゴリズムを新たに開発しました。これによりCreative Talent Searchはより精度の高いクリエイターのレコメンドを見る者に提案することが出来ます。
11:08am Connected Creativity, Creative Cloud Extract - デスクトップアプリの進化
Photoshop を使ってWebデザインし、そこからスライスツールを使ってアセットを切り出すというのは一般的な作業かも知れませんが、非常に手間がかかってしまいます。
Creative Cloud Extract の登場によってこの手間から解放されることでしょう。これにより Photoshop 上のパネルからレイヤーやレイヤーグループごとに解像度やフォーマットを指定して自動で書き出すことができようになります。
また、Web ブラウザ上から同期された PSD を参照することが出来ます。断っておきますが、スクリーンキャプチャをブラウザ上に映しているのではありません。Live の PSD を映しているのです!ここでレイヤーを選択するとそのデザインを CSS に変換したコードをプレビューすることができます。サイズ計算もしてくれます。便利ですよね。また PC に Photoshop がインストールされていなくてもブラウザで見ることは出来るので、ライセンスを持っていないエンジニアとの共有もストレスなく行うことが出来ます。
Dreamweaver も進化しています。いよいよ 64bit に対応し、リアルタイムに PSD ファイルにコーディングをすることが出来るようになりました。フォントスタイルやサイズ等は PSD のプレビュー画面から直接取得できるようになります。
11:15am Device & Touch - Illustrator の新機能
パスを書いていて線が微妙に途切れてしまったり重なってしまったりしたことはありませんか?ジョインツールという Ilustrator の新機能を使えばタッチによる直感的な操作でこれらのパス同士を綺麗に補正することが出来ます。また、昨年発表した Adobe Ink というスタイラスペンを使えば、不要なパスを適当になぞるだけでサクサク削除することが出来ます。地味に便利そうな機能です。
11:28am Surface Pro 3 - Microsoft との関係強化
ここでは Microsoft Surface Pro 3 向けの Photoshop 機能が紹介されました。ここではアドビのナラヤンCEO と Microsoftのサトヤ・ナデラCEO がステージに登場し、最適なタッチ操作を実現するにはどうすればよいかということについてトークを繰り広げました。
最後に紹介されたデモが非常に面白かったのでご紹介します。Animal というコードネームを持つこのアプリはタッチ操作や顔認識機能を使って、スクリーン内のキャラクターに自然な動きを与えることが出来るというものでした。これには Microsoft Kinect の技術がふんだんに盛り込まれています4)会場でこのデモページがアナウンスされましたが、実際には開くことが出来ませんでした。一応こちらがそのURLだそうです。http://www.adobe.com/animal/。
基調講演の最後には、まさかのお土産が。Adobe MAX 参加者全員に Microsoft Surface Pro 3 をプレゼントとの発表がなされました!当然会場は大盛り上がりwいやー、カンファレンスっていいもんですねぇ。そんな訳で、僕も遠慮なくいただいてきました。こちらが証拠写真です。
おわりに
以上、散漫とした文章で恐縮ですが、Adobe MAX 2014 基調講演一日目についてのレポートでした。当初から予想されていた通り、去年に引き続き今年も Web ディベロッパー向けではなくグラフィックデザイナー向けに特化した内容となっておりました。周囲のエンジニア勢からは少々さびしいとの声も聞こえてきましたが、僕としては単純に新しいソリューションを圧倒的なデモと共に見せてくれたことに素直に感動しっぱなしでした。たとえ自分は直接触れることがなくとも、共に働くチームメンバーがこれらのソリューションを活用してくれるようになれば、連携する僕達のワークフローも今とは違った形になるかもしれません。それはそれで面白い事じゃないですか。
そうした日々の仕事スタイルが変わるイノベーションを展開していくであろうCreative Cloud。その最先端を間近で見ることが出来て、これからの進化に期待は高まるばかりであります。
以上、現場からお伝え致しました。 (`・ω・´)ゞ
脚注
↑1 | 予想していたことですが、現地の人たちはとにかく肉厚です。何故かビーチサンダル率が高め。 |
---|---|
↑2 | カラーパレットアプリは少し前に個人的に作ろうと挑戦していたものなので興味ありますね。 |
↑3 | 部分的に切り出す操作のこと。 |
↑4 | 会場でこのデモページがアナウンスされましたが、実際には開くことが出来ませんでした。一応こちらがそのURLだそうです。http://www.adobe.com/animal/ |