SDGs観点から見る薄膜太陽電池の有用性

こんにちは、リクルートATL(アドバンスドテクノロジーラボ)でIoT関連の研究を行っている菅原です。
IoTに対する電力供給として、持続可能なエネルギー源という観点からもっとも利用されている太陽光発電は、さまざまな改良が行われており、より有効なエネルギー源として進化しています。そこで、最近発表された「薄膜太陽電池※1」が、どのような進化を遂げたのかを紹介していきたいと思います。
既存の太陽電池は、高重量で硬質な板形状の物質で構成されているため、下記の課題がありました。
 ・設置が平らな面にしかできない
 ・単位面積あたりの重量が重く、大きな耐震強度が必要
本稿では、これらの課題を解決し、安定的に必要電力を得る発電方法として開発された「薄膜太陽電池」の検証・考察を行います。
今回は、結果の対比が顕著になる屋外用太陽電池を比較対象として選定し、検証・考察を行います。

  ※1:薄膜太陽電池
    プラスチックフィルムを基板として、割れない・曲げ可能・軽量なものとして製造された、太陽光を利用して発電が可能な太陽電池です。フレキシブル太陽電池とも呼ばれます。

検証の進め方

(1)屋外の照度の差による発電量の特徴を以下の太陽電池と比較します。

 ・薄膜太陽電池・屋内屋外用色素増感太陽電池・屋外用アモルファス太陽電池の比較をする
 ・屋外の自然光で測定する
 ・太陽光の仰角に合わせ、入射角を調整することで照度を変えて発電量を測定する

図1: 屋外での発電量測定

(2)屋外におけるパネルの形状による発電量の特徴を検証します。

 ・薄膜太陽電池(平面、凸面、凹面)の形状で発電量の違いを調査する。
  凸面、凹面は、R60mm、R120、R180mmで測定する。
 ・屋外の自然光で測定する。
 ・太陽光の仰角に合わせ、入射角を調整することで照度を変えて発電量を測定する。
 ・薄膜太陽電池の形状を凸面凹面にした時でも平面の状態と同一の光量になるように、太陽電池を設置する
  際に使用する設置治具の下に置く高さ調整治具の高さを調整する。

図2: 屋外でのパネルの形状の違いによる発電量測定

検証概要

(1)検証に用いる太陽電池

検証に用いる太陽電池のスペックを以下に示します。

(2)検証に用いる測定機器

検証に用いる測定機器のスペックを以下に示します。

  電圧、電流測定用デジタルマルチメータ

・KAIWEETS社製 HT113B(電圧:0.5% / 電流:1.2%)
・測定の有効数字は3桁

  照度測定用デジタル照度計

・HOLDPEAK社製 881E(≦20,000Lux:±4% / >20,000LUX:±5%)
・測定の有効数字は3桁

検証結果

(1)屋外の照度の差による他方式太陽電池発電量の比較結果

屋外用太陽電池の単位面積[1㎠]あたりの発電量を比較します。

屋外用アモルファス太陽電池と比較した場合、薄膜太陽電池の発電量は 68%〜81%となりました。

(2)屋外におけるパネルの形状による発電量の比較結果

凹面に曲げた場合、Rの長さが60mm毎になると、発電量が3%減少していることが確認されました。また、凸面に曲げた場合は、凹面に比べてさらに発電量が低下していることがわかりました。

評価

薄膜太陽電池パネルの形状変更による発電量の評価は以下の通りです。

凹面は、あらゆるRで発電量の減衰が同一で、凸面のR180は凹面と同じ減衰率である一方で、R120、R60は緩やかに減衰します。そこで、発電効率を優先する場合は凹面を利用し、安定した発電を優先する場合は凸面のR120、R60を利用するのが望ましいと考えられます。

考察

既存の太陽電池は、高重量で硬質な板形状の物質で構成されているため、限られた平らな面にしか設置できません。また、単位面積あたりの重量が重く 、大きな耐震強度が必要となるなど、使用上の課題があります。
今回検証した結果、薄膜太陽電池は屋外用アモルファス太陽電池と比較してほぼ同等の発電量を確認でき、最大R60であっても平面で70%の発電が可能であることから、使用上の課題を克服し実用的な発電を実現できると分かりました。また、通常凸面への設置が多いと思われるため、照度にかかわらず安定した発電が期待できるというのも実用面で期待できると考えられます。

これにより、
 ・既存の屋外用アモルファス太陽電池の代替として利用することで安定発電が可能
 ・平面以外に設置することができ、設置面積を容易に広げることが可能
 ・設置面に強靭さを要求する必要がない
という特徴を生かした活用が期待できると判断できました。

今後は、上記の特徴に柔軟に対応し多様な用途での活用が可能になるよう、さらなる検討を実施していきたいと思います。