目次
はじめに
本記事は、先日開催された「RECRUIT TECH CONFERENCE 2026」から、アナリティクスエンジニアによる「レバレッジを生み出すデータ戦略」のセッションを抜粋してお届けします。
※RECRUIT TECH CONFERENCE 2026:2026年2月27日に開催したリクルートの技術カンファレンス。アーカイブまとめ記事は
こちら
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リクルートでは、事業規模の拡大と業務の複雑化が進む中「AIによるデータ施策の効率化と高品質化」が重要なテーマです。本セッションでは、データ推進室から森田と林田の2名が登壇し、データ生成段階からの品質確保をはじめ、データ施策の価値を最大化する取り組みについて共有しました。
1.AIの価値を最大化する「鮮度」と「品質」
セッションの前半では、森田より「AI活用のためのアナリティクスエンジニアリング」についてお話ししました。
『カーセンサー』などのマッチングサービスでは、お問い合わせの多くがAIを用いたレコメンドシステム経由で発生しています。この精度を維持するためには、データの「鮮度」と「品質」が重要です。
例えば、ユーザーの関心が「高額車」から「低予算車」へ移った際、ログ連携の遅延や欠損があると、AIは古い情報に基づいた的外れな提案を続けてしまいます。いかに高度なAIでも、データの鮮度と品質が低ければ事業貢献は果たせません。
そこで下記の施策に取り組んでいます。
- データの鮮度を高める
収集するデータに応じて適切なETLパイプラインを設定し、運用負荷を抑えつつ、各データに求められる鮮度を担保する仕組みを構築しています。
- データの品質を高める
頻繁なフロントエンドの変更は、ログ設計の乱れや実装ミスを招きがちです。そこで、ログの種類に応じて発火内容を標準化し、分類して収集する体制を整えました。
これにより画面変更時に、どのようなログを設計すべきかの提案や、ログの設計書からソースコードを生成するといった作業をAIで自動化することが可能になります。
データの蓄積前に品質を整え、高速なパイプラインで届けること。つまり入り口(生成)と 経路(連携)を共に握り、出口(活用)の成果を最大化することで、事業貢献へと繋がります。
2.SaaS事業におけるデータマネジメント事例
後半は林田より、『Air ビジネスツールズ』という各種サービス群を展開するSaaS事業の事業構造とそれに対応するデータマネジメント戦略をご紹介しました。
2-1.SaaS事業における、事業構造とデータマネジメント
リクルートのSaaS事業は多様なプロダクトを束ねた組織で、下記の特徴があります。
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ビジネスモデルの違い
プロダクトごとに収益モデルやKPIが異なるため、個別の指標定義やデータ整備が必要。 -
共通のID基盤
各プロダクトは共通のID基盤で繋がっているため、複数プロダクト併用のケースについても利用状況を分析する。
そのため、データマネジメントにおいても
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プロダクト最適化
各プロダクトのビジネスモデルに合わせた、データ分析環境やモニタリング環境の構築が必要。 -
併用分析
プロダクトを複数利用する加盟店が存在するため、単独と複数の違いを考慮したデータ環境が必要。
といった特徴があります。
この状況を支えるため、データマネジメントチームでは3つの施策を実施しています。
①プロダクト個別マート
属性情報のスナップショットと日次集計したトランザクションの2つを参照すれば、基本分析ができるOne Big Table(分析に必要な情報を1つに突合した巨大なテーブル)を提供。似たレイアウトを採用することで、複数プロダクトを跨ぐ分析の認知負荷を下げています。
②データポータルの構築
重要指標の定義や再現用のサンプルSQLを掲載し、他プロダクトの情報へのアクセスを容易にしています。
③データ基盤の権限管理
BigQueryのデータセットを分割し、秘匿性の高いデータへのアクセスを厳格に制御しています。
2-2.事業戦略に合わせたデータマネジメントの変遷
昨今は事業環境の変化に伴い、要求の高度化や生成AIの出現といった環境の変化が起きています。
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事業からの要求の高度化
プロダクト横断での分析ニーズが加わり、高い品質とスピードの両立を求められ、データ組織がボトルネックとなることを回避する体制が必要。 -
生成AIの出現
AIによる開発支援を最大化するため、データ基盤や事業ドメインの知識をAIに与える「グラウンディング」の強化が重要に。
このような変化を受け、効率的なデータ活用管理を支える「3つの柱」を以下のように定義しました。
これからも「アナリティクスレディ(※)」な環境づくりを1つのミッションとし、これらの柱を連携させることで、欲しいデータをタイムリーに取得できるよう取り組んでいきます。
※データが整備され、すぐに分析に活用できる状態
おわりに
リクルートにおけるアナリティクスエンジニアの役割は、単にデータを整備することに留まりません。本セッションで紹介した通り、マッチングサービスにおけるAI活用の最大化や、複雑なSaaS事業における横断分析環境の構築など、ビジネスの根幹に深く関わりながら「データ戦略によるレバレッジ」を生み出しています。今後も「アナリティクスレディ」な環境づくりをさらに加速させ、事業貢献を目指していきます。
「RECRUIT TECH CONFERENCE 2026」