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リクルートのデータ推進室にて、飲食・ビューティー・IDPデータソリューション部を統括する部長、野川 幸毅。多岐にわたる事業領域でユーザーと向き合うリクルートにおいて、彼は単なる「技術組織の部長」に留まりません。技術を駆使して社会の「不」を解消し、新たな価値を形にする――まさに『商売人』の眼差しを持つ存在です。
その原点は、自営業の家庭に生まれ育った環境と、勝つためにデータを使い倒しバスケットボールに熱中した経験にありました。アウトソーシング企業から「事業の当事者」を求めてリクルートへ転身した理由、そしてテック組織が陥りがちな「受動的な開発スタイル」を脱し、現場の泥臭い一次情報をもとにビジネスを牽引していくための考え方を紐解きます。
経歴:
アナリスト・コンサルタントとしてクライアント企業のマーケティングや業務改善プロジェクトに従事した後、2012年にリクルートテクノロジーズ(現リクルート)へキャリア入社。データ活用において企画から運用定着まで一気通貫で推進し、数多くの改善サイクルや施策の高度化を経験する。以降、多様な事業において分析基盤の構築と活用をリード。現在は組織変革と連動しながら、事業戦略の実現に向けたデータ活用の実践に取り組んでいる。
「ナニワ金融道」と実家の工場。小学生で目覚めた「数字」への嗅覚
― 野川さんのキャリアを語る上で欠かせないのが、ユニークな幼少期の原体験です。今のスタンスにどう繋がっているのでしょうか。
私のルーツは、工場を経営する家庭に生まれ育った環境にあります。親が会社経営やお金の話を日常的にしているのを、横で聞いて育ちました 。そのせいか、家に置いてあった漫画「ナニワ金融道」に興味を持ち、小学生で熟読していました。
当時の私が興味をそそられたのは、借金をした時の利息の膨れ上がり方といった計算の部分です。また、税理士さんが家に来て売上や原価、利益の話をしているのを間近で聞き、商売の裏側を肌で感じていました。その影響で、小学生の頃から 「数字こそがビジネスを勝ち抜くための武器であり、将来の何かに繋がるんだろうな」とおぼろげながら確信していました。
― その「勝つための数字」という感覚は、学生時代も一貫していたそうですね。
中学時代から30歳の頃まで没頭したバスケットボールでも、同様の考え方をしていました。高校生の頃には、どの位置からシュートを打った時に何本入るかといった情報をデータ化し、敗因や勝因を分析していたんです。
数字を見える化することで、練習のモチベーションが劇的に変わったり、目標達成へのプロセスが明確になったりする。その「指標が見える化されることの大事さ」を知っていたので、大学でも経営工学を専攻し、統計学などを学びました 。大学院時代には個人事業主として起業も経験しましたが、それも 「ビジネスに興味があり、自分で仕事の機会を作って飛び込んでみたかった」 という思いからです。
「外からの提案」では届かない場所。事業の当事者になることを求めてリクルートへ転職
― 社会人としてのスタートはアウトソーシング企業でしたが、そこから事業会社であるリクルートへ転職された理由は?
1社目でのアナリストやコンサルタントとしての仕事も、非常に好きでした。ただ、外部からの「提案」をする立場には限界も感じていたんです 。外からの提案だと、クライアント企業の特定の部署の目標達成は支援できても、会社全体の数値が見えにくく、最終的な意思決定のプロセスまではなかなか把握することができません。
もっと事業全体を俯瞰し、当事者として数字を動かしたい。そんな渇望が強くなっていた時、縁あってリクルートへの転職を決めました。事業戦略に触れられるだけでなく、自分たちで求めれば様々なチャネルから情報を得て事業貢献することができる。 その透明性と当事者としての手触り感に惹かれたんです。
― 実際に入社してみて、その期待は満たされましたか。
入社してみると、外から聞いていた以上に「挑戦と成長」の文化が濃かったです。特に入社直後は、とにかく「何やりたいの?」とひたすら問われ続ける日々でした。自分が大学院時代に研究していた分析手法などの技術を、実際の施策に使いたいと提案したときも、周囲が「面白そうじゃん、やってみなよ」と背中を押してくれる。自分の意志が尊重され、それが事業貢献に直結する。そのスピード感こそがリクルートの醍醐味だとすぐに実感しました。
「テックは事業を牽引できる」。事業のパーパスを問い直す、データスペシャリストの矜持
― こうして事業会社へと踏み込んだ野川さんですが、リクルートで求められたのはスペシャリストとしてのスキルと「意志」でした。自ら数字に責任を持つことで、テック組織が陥りがちな「受け身の姿勢」を排除していますね。
リクルートのデータ組織は単なる「開発機能」であってはならないと考えています。大切なのは、事業のパーパス(目的)に対して考え抜けているかどうかです。
私はメンバーに「何をしたいかを整理するところから一緒にやろう」と伝えています 。言われたことをやるのではなく、「解くべき課題は何か」という上流から入り込み、構造そのものを技術で塗り替える。 この姿勢こそが、テックをビジネスの主役へと引き上げることになると思います。
― 具体的に、データがビジネスを動かした事例はありますか。
投資対効果(ROI)のシミュレーションを行い、営業担当のアプローチ優先順位をデータを根拠にアップデートした事例などがあります。また、投資額を増やすかどうかの判断材料を提供したりもしました。リクルートは変化が非常に激しく、今期置いていたKPIが来期には戦略変更でシフトすることもあります。そんな時、単に技術的な精度だけを追うのではなく、ビジネス感覚を持って「今、何の手を打つべきか」を戦略から逆算して語れる人は、常に事業の中心で価値を発揮し続けることができると思います。
「環境」を活かし、それぞれの得意を。一次情報と向き合う多様なフェーズ
― 自ら課題を定義するとなると、やはり現場で何が起きているかという「事実」を知ることが不可欠になりますよね。野川さんは一次情報を取りに行くことが多かったと伺っていますが、やはりそうした動きが推奨されるのでしょうか。
私は個人的に一次情報を取りに行くのが好きですが、別にそれをみんなにしてもらいたいわけではないんです。リクルートには、必要であれば現場の一次情報をどんどん取りに行ける環境がある。その環境をどう活かすかは、それぞれの専門性や役割によって異なります。
たとえば、課題をクリアにしたいフェーズであれば、現場に足を運ぶことがひとつの大きな武器になります。過去にとある複数の領域を担当した際、「ビル倒し(ビルの一階から最上階まで全社訪問する手法)」と呼ばれる効率重視の営業現場と、打って変わって丁寧な対話を重ねる営業現場の違いを肌で感じたことで、提供すべきデータの出し方が180度変わったという経験がありました。
一方で、解くべき課題が明確な実装フェーズであれば、専門性を発揮して一気に形にすることに注力したほうが効果的です。大切なのは、皆がそれぞれのフェーズで自分の得意を活かすことです。リクルートという多様な事業フィールドには、誰もが自分の強みを最大限に発揮できる場所が必ずあると思っています。
スペシャリストか、PdMか。キャリアの正解は「今、どこにパワーをかけるか」にある
― そうした「個々の強みの活かし方」を突き詰めていくと、自身の役割をどう定義すべきか、という点でも悩まれる方が多いように思います。最近では「PdMを目指すべきか、スペシャリストとして技術を極めるべきか」と悩む方がいるそうですが、野川さんはそうした葛藤をどう見ていますか。
実は、私自身がいまだに自分のキャリアについて悩んでいます(笑)。ただ、キャリアを今この瞬間に固定する必要はないと思うんです。データ組織においてはPdMもスペシャリストも、根底に必要な専門性は共通しています。違いは、「どこに自分の軸足を置き、時間とパワーを分配するか」という比重の問題にすぎません。
― 役割に縛られず、意志をベースにスイッチしていくということですね。
リクルートは 「Will-Can-Must」 に向き合えば、役割をスイッチしやすい会社です。私自身、エンジニアリングからリスクマネジメントまで幅広く経験しましたが、最初から計画的に動いてきたわけではなく、機会があるごとに「まず飛び込んでみて、やれることを考える」ことを繰り返してきました。一つの職種名に縛られず、今この瞬間、事業のために何をすべきかに集中し続けること。それが不確実な時代における、最も強いキャリアの築き方だと思っています。
成長を止めないための「挑戦の壁」を。組織長として約束すること
― これから新しく仲間に加わる方にとって、野川さんが率いる組織はどのような成長の場になるでしょうか。組織をマネジメントする立場として、メンバーに向き合う際のスタンスを教えてください。
私が部長として最も意識しているのは、メンバーにいかに「新しい挑戦の壁」を用意できるか、という点です。 個人として成果を出すフェーズを越え、今は仲間の成長を最大化させることに役割の重きを置いています。
リクルートという場所は、去年と同じことをやっていればいい、という平坦な毎日はなかなか用意されていません。常に新しい課題や「壁」にぶつかることで、自身の市場価値を更新し続けられる。そうした機会を絶やさず提供し続けることが、組織長としての私の役割だと思っています。
― 最後に、データ推進室への応募を検討している方へメッセージをお願いします。
リクルートのアセットは多岐にわたり、それぞれが多種多様な情報を持っています。これからはそれらの価値を「掛け合わせる」ことで、ユーザー自身もまだ意識していなかったニーズを掘り起こし、期待を超える驚きを先回りして届けていくフェーズです。
ここは、既存の枠組みに捉われることなく自ら情報を取りに行き、課題を定義し、技術で社会の「不」を解消したいと願う方にとってはまたとない挑戦の場だと思います。技術トレンドはこれからも変わるかもしれませんが、リクルートで培える「アップデートし続ける力」は、一生の武器になります。 会社を利用してやりたいことを実現してやる、というスタンスの方、一緒に新しい一歩を作れることを楽しみにしています。