Kaggleで鍛えたスキルの実務での活かし方 競技とプロダクト開発のリアル(RECRUIT TECH CONFERENCE 2026開催レポート)

目次

はじめに

2026年2月27日、リクルートの技術カンファレンス「RECRUIT TECH CONFERENCE 2026」が開催されました。動画リンクまとめ記事は こちら

リクルートグループには、多数のKagglerが在籍しており、高度なデータサイエンス人材が集まっています。これまでにも、クーポン購入予測やレストラン来店予約予測、宿泊施設・ホテルの推薦といった、各事業ドメインに直結するテーマでコンペティションを開催してきました。

本セッションでは、データ推進室 および インディードリクルートテクノロジーズに在籍する3名(Kaggle Masterの阿内と羽鳥、Kaggle Grandmasterの中間)が登壇。「Kaggleで鍛えたスキルの実務での活かし方」をテーマに、競技とプロダクト開発のリアルな境界線について語り合いました。 本記事では、そのトーク内容を抜粋してお伝えします。

1.こぼれ話「Kaggleを始めたきっかけと思い出」

はじめに、三者がKaggleの世界に足を踏み入れた理由について語り合いました。

  • 阿内:データサイエンティストとしての実力を客観的に証明するため、打算的に称号を求めたことが始まり
  • 羽鳥:2018年のTalkingData AdTracking Fraud Detection Challenge (リンク:https://www.kaggle.com/c/talkingdata-adtracking-fraud-detection/) というコンペが当時の業務に近く、純粋に楽しそうだと思ったことがきっかけ
  • 中間:学生時代のインターンでのめり込み、リクルート入社前にはGrandmasterに到達

三者三様のスタートですが、その根底には共通して実力への渇望や知的好奇心がありました。
また、Kaggleに打ち込んだ人ならではのエピソードも語られました。

  • 最終サブミッションの選択権を持つリーダーが締切直前に寝坊し、順位を落とした痛恨のミス
  • 朝5時まで粘った挙句の「シェイクダウン(大幅な順位降下)」という苦い経験
    そして、そういった苦労があるからこその初めて金メダルを手にした瞬間の高揚感
  • チーム一丸となって予測値を統合するアンサンブルの醍醐味

苦い思い出も含め、Kaggleの魅力について強い共感が生まれました。

2.Kaggleの学びをどう仕事に活かしているか

2-1.【実務事例】レコメンドシステムにおける「Two-Towerモデル」の導入

続いて中間から、Kaggleの知見が実務に昇華された象徴的な事例として、『RECRUIT AGENT』や『リクナビNEXT』などのレコメンドシステムにおける「Two-Towerモデルの導入」を紹介しました。

求職者と求人票の組み合わせが「兆単位」に達するプロダクトにおいて、計算効率と精度の両立は命題です。そこで、2-stage構成の1st-stage(候補生成)において、ルールベースの候補生成をTwo-Towerモデルに置き換えました。

※2025年4月より「HR・人材」領域のサービスはIndeed Japan株式会社またはインディードリクルートパートナーズ株式会社が提供しています

「Two-Towerモデル」とは、ニューラルネットワークで両者をベクトル化し、それぞれを同一空間に埋め込んで、類似度を計算できるようにしたものです。そして近似最近傍探索により、各求職者に近い求人票を、指定件数だけ高速に取得可能にしました。

この結果、推論速度は1st-stageのフィルター部分が約25倍高速化し、全体で約2倍の高速化。閲覧数は+8.4%、応募数は+5.7%も向上しました。

このプロジェクトを支えたのは、Kaggleで磨かれた「手の速さ」と「手数の多さ」です。 数週間で50回以上のオフライン検証を回す圧倒的なスピード感や優先順位付け、正しいオフライン検証の設計に全力を注ぐ姿勢等が、プロジェクトの成功率を高めました。

※なお、本取り組みの詳細な内容は、こちら( リンク )のブログでもご紹介しています。ご興味があれば、是非ご覧ください。

2-2.実務を支えるスキル_設計・レビュー力の向上とモデル案件の正しさ・全体設計への応用

Kaggleで培われるのは、実装スピードだけではありません。勝敗を分ける「検証(Validation)の正しさ」への徹底したこだわりは、実務におけるモデル設計の信頼性を劇的に向上させます。ここでは4つの観点で語られました。

  • オンライン評価と相関する「検証設計」能力
    KaggleのPrivate Leaderboardを「実務でのA/Bテスト」と見立て、オンラインでの成果と相関する正しいオフライン評価方法を設計・実行する力
  • 違和感を察知するセンサー
    CVスコアが良すぎる際のValidationミスや、特徴量重要度の上位に潜むリークなど、経験に裏打ちされた「怪しい」と感じる直感
  • ビジネス目的に応じた評価指標の妥当性判断
    大きい値に敏感なRMSEか、小さい値に敏感なMAPEか。案件の状況やビジネス目的に沿った評価指標を適切に選択できる判断力
  • アンチパターンの回避
    GBDT系モデルにおける初手からの不要な前処理の回避や、時系列データの不適切なシャッフル防止など、現場で陥りがちなミスを熟知していること

おわりに

Kaggleで培ったスキルを、いかにビジネス課題の解法へと変換するか。その重要性や境界線について語り合うセッションを通して、登壇した3名も「改めてビジネスに紐づく課題設計の重要性を感じた」「またKaggleをやりたくなった」等と、競技と実務の相乗効果を再認識していました。 これからも競技で得た知見をプロダクトへと還元することで、複雑な社会課題の解決へと挑み続けていきます。

※セッションで羽鳥が触れていたKaggleの火山コンペは、その後金メダルを獲得しました。コンペでの取り組みや解法については、 こちら の記事で紹介しています。あわせてぜひご覧ください。

「RECRUIT TECH CONFERENCE 2026」

記事内容及び組織や事業・職種などの名称は、編集・執筆当時のものです。

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