目次
はじめに
こんにちは、Recruit Data Blog 担当の森です。
2026年1月20日、リクルートの飲食事業である『ホットペッパーグルメ』にフォーカスし、アナリティクスエンジニア(以下AE)の具体的な取り組み事例をお伝えするイベントを開催しました。
事業の意思決定を支援するAEには今、以下のような高度な役割が求められています。
- タイムリーな変化に対応するためのAI Readyな環境づくり
- 利用者が扱いやすいデータ分析環境の仕組みの導入
- データソースの取得、及び品質維持と進化
本記事ではAEが実務でどのように介在し、事業価値を生み出しているのかについて、イベントレポートを通じてお伝えします。
1.イベントの概要

当日は、はじめにリクルートのAE組織と飲食事業の現状を紹介し、続いて木内と小野よりライトニングトークを実施。後半は、現場でのエピソードを交えたパネルディスカッションを行いました。
【当日のタイムライン】
19:00〜19:05 オープニング
19:05〜19:10 リクルートの飲食事業について
19:10〜19:25 事業の意思決定を変えるカスタマー行動データの設計
19:25〜19:40 企画からアナリティクスエンジニアへ:営業商談ツールの再構築
19:40〜20:00 事業戦略実現に向けた協業とキャリアパス
20:00〜20:10 質疑応答
20:10〜20:15 クロージング
2.リクルートの飲食事業について

リクルートの飲食事業は、ユーザーと店舗を結ぶ2サイドマッチングプラットフォーム『ホットペッパーグルメ』と、業務支援ツール(『レストランボード』『Airレジオーダー』)を提供しています。
今は、成長性の高い予約マーケットをさらに牽引しつつ、直接来店(ウォークイン)マーケットへの価値提供にも挑戦しています。そのためには、店舗で分刻みに発生する膨大なトランザクションの情報を、正しい状態でスピーディーに、かつ高い品質で分析して事業運営に繋げることが重要です。
膨大なデータを鮮度高く扱う必要がある飲食領域は、まさにAEへの期待が非常に高い領域なのです。
3-1.事業の意思決定を変えるカスタマー行動データの設計(木内)
本セッションでは、AEがDWH(データウェアハウス)の世界だけでなく、データ収集からリードする重要性が語られました。その例として『ホットペッパーグルメ』の新機能「 席押さえ 」における、ユーザーの「認知」情報の可視化プロセスが紹介されました。
Impressionデータの「収集・設計・加工」の3ステップにおける、課題と解決策は以下の通りです。
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収集
既存計測ツールの仕様にミスマッチがあったため、データエンジニアやプロダクト開発エンジニアと協業し、独自のパイプラインを構築。目的別に経路を分離することで、1秒未満のレイテンシと5000RPSのログ処理を可能にしました。 -
設計
ユーザー行動の文脈把握が重要なため、アプリ開発スプリントにAEが参画。詳細な文脈情報をログに含める体制を構築しました。これにより、通信量を最小限に抑えつつ、当時の状況を復元できる「解像度の高いログ」を実現しました。 -
加工
1日1000万件超のログと地理空間処理を扱うため、dbtのmicrobatch戦略を採用。課題であるBackfill(過去分データの洗い替え)の遅延に対しては、実行時パラメータでmicrobatchとtable戦略を動的に切り替えるHybrid Materializationを実装しました。
あえて暫定策を選択してでも「事業への価値提供スピード」を優先し、その後のフィードバックサイクルで改善を回す、AEならではの知恵が共有されました。

3-2.企画からアナリティクスエンジニアへ:営業商談ツールの再構築(小野)
続いて小野からは、営業商談支援ツール『かなめ』の再構築を通じて、開発体制とデータ構造の両面から負を解消した事例を紹介しました。
『かなめ』は、乱立していた9つのExcelツールを統合した現場で不可欠なツールですが、事業の成長に伴い、体制面と構成面に起因する開発効率の課題が顕在化していました。
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要件定義時のコミュニケーションコスト
企画担当者とAEのデータの実態に対する解像度の違いによって、要件定義時のラリーに工数がかかっていました。そこで、企画職経験者自らがSQLを書き、データ実態まで踏み込む「AE」へと役割を拡張。工数の削減に繋げました。 -
肥大化したSQLが生む「直しにくく、拡張しにくい」技術的負債
この構造を打破するためにレイヤー定義を刷新。Mart層を「分析等で汎用的に使う情報を保持するレイヤー」と再定義しました。

この再整理により、指標定義と集計ロジックが分離され、仕様変更時の影響範囲が極小化して開発効率が向上。AEが作成したマートは他案件でも利用可能な汎用的資産となり、組織間の責務も明確になりました。
4.事業戦略実現に向けた協業とキャリアパス
飲食・ビューティー・IDPデータソリューション部 部長の野川をモデレーターに、AEが事業にどのように介在し、どのような環境で成長を遂げているのかについて、熱いパネルディスカッションを行いました。
①AEは事業の意思決定にどう関わる?
木内は「意思決定の『基準』を設計して合意形成すること」、小野は「中長期戦略を見据えた基盤づくり」の重要性を強調しました。
AEの本質的な価値は、事業戦略と技術の進化を理解したうえで、中期的な視点で“意思決定のためのあるべき状態”を描くこと。そして、その状態に向けてデータ基盤や分析環境を進化させ、事業の意思決定を「より速く、より良く、より前に進める」ことだと、野川は話しました。
② 飲食領域におけるAEの面白さと難しさは?
ここでは木内と小野の双方から「膨大なデータ量に対し、事業が求めるスピードと品質を高い次元で両立させる難しさ」と「その変化のど真ん中で基盤を作れるエンジニアとしての醍醐味」が語られました。
③ AEとして成長し続けられる環境とは?
小野は「AEとしての専門性を軸にしながら、他職種の視点を取り込み続けられることが成長につながっている」とし、専門性は磨きつつ、事業や他職種の理解を深め、 より良い意思決定を支えられるAEを目指したいと語りました。
木内は「事業の中にデータ組織があり、かつ、その事業や戦略の変化が極めて激しいこと」だと話し、この現場感がAEとしても良い成長のドライバーになっているとのことでした。
おわりに
事業戦略やデータの質が絶えず変化し、AI活用が加速する今、事業成長の源泉となるデータを活かせるかは、ソースデータの取得・担保を含めたAEの挑戦と進化にかかっています。その一つひとつがやりがいとなり、エンジニアとしての価値を高められる、そんな環境がリクルートにあることが伝わりましたら幸いです。
本イベントは2月19日(木)に再放送を行います!もう一度見たい方、もしくは見逃してしまった方はぜひ、下記URLから再放送イベントをご覧ください。
https://recruit-event.connpass.com/event/381996/
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