データ推進室 データマネジメント部長が語る、「難問」への探求心とデータが支える事業の根幹

目次

リクルートのデータ推進室は、数多くの領域にまたがるサービスのデータ活用を牽引し、事業の成長を最前線で支える部門横断的な組織です。中でも 「データマネジメント部」 は、あらゆる膨大なデータの品質と流れを技術で司り、事業の意思決定とプロダクト進化の根幹を支えています。

その部長を務める新堀 秀和は、純粋な数学への探求心を原体験に、キャリアをスタートさせました。「すぐわかることは面白くない」と語る新堀は、リクルートで「データ管理」という新たな「難問」に出会い、その重要性と奥深さに魅了されます。

「当たり前を疑い、難しい問題を解き続けたい」という尽きることのない探求心を原動力に、自身のキャリアを切り拓いてきたその歩みをたどりながら、リクルート データ推進室 データマネジメント部が求める人物像、そして共に描きたい未来についてお伝えします。


新堀 秀和

経歴:
・2017~ リクルート住まいカンパニー(現リクルート)にキャリア入社
・2021~ 会社統合後は住まい領域ならびにHR領域におけるアナリティクスエンジニアのマネジメントに従事
・2024~ 事業横断でのアナリティクスエンジニアのマネジメントに従事

「ありえない状況」への好奇心。数学の道へ進んだ学生時代

― まず、新堀さんのこれまでのご経歴と、価値観の原点について教えていただけますか?学生時代は何を学ばれていたのでしょうか。

実は、高校までは勉強が特別好きだったわけではなく、大学に行って何か具体的なことを学びたい、という思いもありませんでした。ところが高校3年の冬に、ふと「素数が無限個ある」という証明に出会ったんです。それは背理法を使った非常に美しい証明で、ロジックだけで無限という概念を扱えることに衝撃を受けました。そこから数学、特に「難しい問題を解くこと」そのものに魅了されていきました。

それで、高校では文系大学の進学コースに在籍していたのですが一年浪人して理転し、大学の数学科に進学しました。

― 数学科ではどのような分野を学ばれていたのですか

今はデータ推進室にいるのに、大学では統計学を積極的に学んでいませんでした。私自身は統計学というよりも、代数的なロジックの美しさに惹かれていたんです。

専攻したのは代数学の中の「有限群」という対称性を研究する分野でした。「有限」なはずのものが「無限」次元のベクトル空間に作用する、といった直感に反するような対象を研究するのがひたすら好きでした。

今でもそうなんですが、みんなが「当たり前だよね」と思っていることをわざと疑ってみたり、「こうすれば作れるな」と解き方がわかってしまった瞬間に、その分野への興味を失ってしまったりするんです。常に「難しい問題」、まだ誰も解いたことのない問題に触れていたかった。それが私の原点です。

実践で磨いた開発スキルと、Webサービスへの目覚め

― 大学・大学院を修了された後、最初からIT業界に進まれたのですか?

いえ、大学院は博士課程まで進みましたが、結局、単位取得中退で…。というか、学生時代はあまり働くつもりもなかったんです。

最初のキャリアは、知人から紹介してもらった社長が経営する、社員10名ほどのITベンチャー企業に入社しました。数学科ではあったのですが、PCスキルはほぼゼロ。論文執筆用のソフトとメールくらいしか使ったことがありませんでした。それなのに、入社したら研修も何もなく、4月1日からいきなり現場での実践が始まりました。Linuxのログイン方法もわからず、初日から地獄を見ました。

― それは壮絶なスタートですね…。どうやって乗り越えたのですか?

ひたすら先輩に訊いて、触って、学ぶ、の繰り返しでした。最初はインフラ担当で、データセンターでの作業やネットワーク構築などを担当していましたが、2年目くらいからWebアプリケーションの開発案件が回ってきたんです。

これが転機になりました。インフラと違って、Webアプリケーションは作ったらすぐ何百人というユーザーに使われる。 もちろん、フィードバックの大半は「うまく動かない」「使いづらい」というクレームなんですが(笑)、そのダイレクトな反応がとにかく面白かった。 もっと本格的にWebサービスを作りたいと思い、二社目となるWebサービス企業へ転職しました。

巨大プロジェクトが「ログ」で止まる衝撃。リクルートで出会ったデータの「重み」

― そこから三社目としてリクルートを選ばれた理由は何だったのでしょうか?

一つは、もっと大きなフィールドで自分の力を試したかったこと。 そしてもう一つの理由として、強い原体験がありました。リクルートへの入社直前に注文住宅を建てたのですが、当時の家探しってユーザーとサービス提供者の間に圧倒的な「情報の非対称性」があって、非常に苦労したんです。そんな時、リクルート(当時はリクルート住まいカンパニー)が、まさにその情報の非対称性を解消しようとしている会社だと知りました。

自分がやりたいWebサービス開発で、かつ社会的な課題解決にも取り組める。 そう思って入社を決めました。

― 当初はWebアプリケーション開発者として入社されたのですね。そこからデータ領域へ移ったきっかけは何でしょう?

入社してすぐに、『SUUMO』のフロントエンドが取っているユーザー行動履歴などのログデータの取得方法を改善するという非常に大きなプロジェクトにアサインされました。ある程度の自信を持って参画したのですが、データ取得の仕様を考えるところでキャリア最大の「コケ方」をしたんです。

当時の私は、まだデータの重要性について十分理解できていませんでした。エンジニアの視点からは、データの厳密さよりもまずプロダクトを動かすことを優先して考えていたんです。だから、ログデータ取得の要件定義も十分でないまま、当時のデータサイエンス組織に提案した。そうしたら、「こんなログじゃレコメンドの精度がかなり悪化する」と、とても強く懸念を示されまして。

そして私にとって衝撃的だったのが、その「ログ品質」の問題を理由に巨大プロジェクトがストップしてしまったことです。

― 相当額を投資した案件のはずなのに、「ログ品質」が理由で止まった、と。

この インタビュー記事 でも少しお話ししているのですが、普通はプロジェクトが止まる理由ってUI/UXが悪いとか、プロダクトの表面に出るものじゃないですか。それが「裏側のログが完全な形で取れていないから」という理由で止まった。この会社は、データにそれだけの「重み」を置いているんだと、頭を殴られたような衝撃を受けました。

しかも話はそこで終わりません。プロジェクトが頓挫した後、当時のマネージャーとの面談があったんです。ところが、開口一番にかけられたのは、意外にも労いの言葉ではなく、プロジェクトの進め方に対する真剣な問いかけでした。マネージャーは、「受入テスト担当として、現場でリスクの兆候は見えていなかったか? もし気づいていたなら、組織として判断を誤らないために、どういう行動が取れたと思う?」と、当事者としての意見を求めてきたのです。

それは、入社したばかりの社員だからと区別せず、フラットな立場で一人のプロフェッショナルとして期待をかけてくれている証拠でもありました。「当事者として、どう行動すべきだったか」という問いかけは、当時の私には重く感じられました。正直、入社半年の時点では、その裁量の大きさと期待の高さというカルチャーに圧倒され、「転職、大失敗したな」と思いましたね(笑)。

でも同時に、この「データが事業の根幹を揺るがすほどのインパクトを持つ」という事実と、ある種カオスな状況、これこそが自分が解くべき「難しい問題」なんじゃないかと思って惹かれたんです。

それが、私がデータ部門へ異動したきっかけです。

「地味な仕事」の意義を評価される。ログテスト自動化で見つけた面白さ

― データ部門に移られてからは、どのようなミッションに取り組まれたのですか?

失敗したプロジェクトの反省から、「このむちゃくちゃなログの状況を何とかしたい」という強い思いがありました。 当時のマネージャーには、「SUUMOのログといえば新堀、という状態にしたい。達成できたら会社を辞めます」と宣言していたくらいです。

当時『SUUMO』では複数の大規模リニューアルプロジェクトが並行して走っていたのですが、すべての案件で「ログが重要」という概念が浸透している状態ではありませんでした。そこで私が全プロジェクトのログ品質担保を引き受けることにしたんです。その結果、あちこちのプロジェクトの体制図に私の名前が載りました。

しかし最大の課題は、品質担保にかかる工数です。『SUUMO』のログは数千項目にも及び、それを全部目視でチェックしていたら、100人月あっても足りない。これは「解き方」を変えないと無理だ、と思いました。

― そこでどうされたのですか?

Webアプリケーション開発者だった経験が活きました。フロントエンド開発で行うE2E(End-to-End)テストの手法を応用して、これまで人間が手動でやっていたログのテストを全部自動化させる仕組みを作ったんです。

これにより、膨大な工数削減と品質担保を両立させることができました。この取り組みは、全社的なナレッジシェアイベントである FORUM でも取り上げられ、テクノロジー部門である「ENGINE」で登壇することができました。

この経験が、私にとってリクルートの面白さを決定づけました。ログの整備は、一見すれば非常に「地味な仕事」です。でもリクルートは、それが事業にどれだけ大きなインパクトを与えるかを理解し、MVP選出や全社イベント登壇という形で高く評価してくれた。 やればやるほど評価され、どんどん面白くなってしまった。それで、辞めるのをやめて今に至ります。

目指すは「人手による整備ゼロ」の世界。事業のど真ん中で挑む、自動化への道

― 改めて、新堀さんが率いるデータマネジメント部のミッションと、現在の挑戦についてお聞かせください。

部のミッションは一貫して「データをどう技術(エンジニアリング)で整備していくか」です。 ただ、その対象が変わりつつあります。以前は「人(分析者や企画者)向け」の整備でしたが、今は「人+生成AI(LLM)向け」の整備へとフェーズが変わりました。

その上で、大きな挑戦が二つあります。

一つは「リアルタイム性への対応」。昔は日次バッチ処理でよかったデータが、今や「カスタマーがアクションした次の瞬間にデータが欲しい」と言われる時代です。事業の施策スピードも高速化する中で、どうやってデータの鮮度と品質を両立させるか。

もう一つは、もちろん「生成AIへの対応」です。LLMに学習データを安全かつ最適に提供するにはどうするかという課題に加え、我々は生成AIの活用にも挑戦しています。 これまでどうしても手動で整備するしかなかった「このデータは、どういう目的で取られたものか」を示す“ビジネスメタデータ”を、生成AIに作らせるという試みです。

― そんな挑戦を行うデータマネジメント部だからこそ得られる、他社にはない経験とは何でしょうか?

リクルートは、データ活用が全社で「当たり前」になっており、その中で 「どうデータを整備するか」という課題に、国内でも最も進んだレベルで取り組める環境だと思います。

その上で、最大の魅力は「事業との距離感」ですね。データマネジメント組織は、専門性を高めるために機能別組織として独立させたり、機能会社化したりするケースも一般的です。ですがリクルートでは、「事業のど真ん中」に我々の組織がある。近すぎるわ、と思うくらいです。事業の課題とインパクトをダイレクトに感じながら、この確立されていない難しいお題に挑める。 これが最大の面白さです。

― まさに「難しい問題」が山積み、ということですね。

毎週のように新しい問題が発生しています。だから私の「難しい問題を解きたい」というニーズは満たされ続けていますね。

究極的に私たちが目指しているのは、「人手によるデータ整備がゼロの世界」です。 人の手を介さず、全てのデータが技術によって自動で安全に整備され、誰もが当たり前にデータを活用できる。「データが真に民主化された世界」です。もちろん、そこに至る道は非常に長く、難しい。だからこそ、今この仕事は面白いんです。

― その未来に向けて、どのような方と一緒に働きたいですか?

今、私たちの部署で活躍しているのは、前職でプロダクトオーナーやデータサイエンティスト、エンジニアなど、様々な立場で「データの整備」に苦労してきた人たちです。データの重要性を痛いほどわかっており、どう整備すれば事業がスケールするのか、その方法を模索してきた人たち。

私たちが一緒に働きたいのは、まず「データを使って事業を加速させたい」という思いを持つ方。そして、そのために 「データ整備の自動化・型化」という、この地味で難しい課題を、エンジニアリングの力で本気で解き明かしたい、という情熱を持つ方です。

近年こうしたデータ分析基盤を整備する領域が「アナリティクスエンジニアリング」と呼ばれるようになりましたが、この領域はまだ新しく、確立された技術スタックがありません。だからこそ、新しい技術が出てきたら「とりあえず使ってみよう」と楽しめるような、エンジニアリングが好きな方にぜひ来ていただきたい。 事業のど真ん中で、まだ誰も解いたことのない「難しい問題」に、私たちと一緒に挑戦してみませんか。

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