エンジニアが成果アピールで意識すると良い4つの観点

はじめに結論

自身やチームの取り組みをアピールする際、以下4つの観点 (Issue度・解の質・革新性・主体性) を意識すると、成果アピールの説得力を高めることができます。

  • 成果 (創出した物事の価値・意義)
    • Issue度: どういった/どのくらいの問題に取り組んだか? (重要度・規模感・難易度)
    • 解の質: やったこと/結果は、どういった/どのくらいの変化・貢献をもたらしたか? (価値・意義)
  • プロセス (成果を生み出した理由・背景)
    • 革新性: アプローチ手法の着眼の良さ/工夫点はあるか? (アプローチ方法)
    • 主体性: アプローチをどのような立場で/どのくらい主体的に推進したか? (進め方)

これらの観点を意識して適切に成果アピールできるようになると、成果面談などの社内イベントのみならず、社内外のプレゼンや転職活動 (レジュメ作成・面接・交渉) など様々な場面で役に立ちます。

そもそもこれはなに

弊社 (RMP) で半年に一度行われる社内表彰のエントリーシートに記載する4つの項目です。エントリーしたい案件 (人orチーム) がある場合に、その組織長 (エンジニアリングマネージャーなど) がエントリーシートの4項目を記載して本部に提出します。集まったエントリーシートについて部長・経営陣が審議を行い、提出者への質疑応答期間を経て最終表彰案件が選出されます。

私がこの表彰エントリーシートを初めて目にしたとき、「なんて洗練された成果アピールのフレームワークなんだ!」と感動しました。これまでの所属会社の成果面談で自分なりに何となくアピールを工夫していたことや、転職活動時にキャリアコンサルタントやCxOとの面接で指摘されたポイントがキレイに言語化されていたからです。

4つの観点を用いた成果アピールの具体例

具体例 1) プルリク数

例えば「自担当プロダクトに半年間で60個のプルリクを出した」というトピックは、それだけでは成果アピールとして弱いです。なぜなら、以下の観点が欠けているからです。そこで、欠けている観点をトピックに盛り込むことで、説得力のある成果アピールが成立するようになります。

  • Issue度:
    • 「それはどのくらい重要なことなのか?」「どのくらい困難なことなのか?」といった観点が無い
    • そのため、「それってどんな意味があったの?」「そもそも60個って凄いの?」といった疑問やツッコミが入る
    • そこで、「開発生産性の向上が自組織の課題となっている。プルリク数はそれを測る一つの指標である」「半年前の実績は40個だったため、これはその1.5倍に相当する」といった観点を盛り込むと、「おおーなるほどー!」となる
  • 解の質:
    • 「それによってプロダクトや組織にどういう貢献をもたらしたのか?」といった観点が無い
    • そのため、「で、だからどうしたの?」「誰がどう嬉しいの?」といった疑問やツッコミが入る
    • そこで、「これにより、プロダクトリリースを2ヶ月前倒しできた (それが売上目標◯◯%UPに貢献できた)」「半年前と同規模のプルリク数が1.5倍になったため、開発生産性の向上に寄与できた」といった観点を盛り込むと、「おおーなるほどー!」となる
  • 革新性:
    • 60個が凄かったとして「それを成し得るためにどういう工夫をしたのか?」といった観点が無い
    • そのため、「今回なんでこれができたの?たまたまラッキーだっただけなんじゃないの?」といった疑問やツッコミが入る
    • そこで、「チームで定めたコーディング規約の違反を自動検知する仕組みを取り入れ、レビューの負荷や手戻りを軽減することで実現できた」といった観点を盛り込むと、「おおーなるほどー!」となる
  • 主体性:
    • 「それはただ言われてやったのか?自分から主体的にやったのか?自分で閉じずに他の人は巻き込んだか?」といった観点が無い
    • そのため、「それはもともとチームで定めた目標を言われたままにこなしただけなんじゃないの?」といった疑問やツッコミが入る
    • そこで、「チーム目標は従来通りの40個だったが、レビューの仕組みを改善することで開発生産性向上の余地があると考えた」 「このため、コーディング規約違反の自動検知の仕組みをチームに提案し、主体者として運用に取り入れたことでチーム全体の生産性を上げた」といった観点を盛り込むと、「おおーなるほどー!」となる

具体例 2) 最新技術導入

これは「プロダクトに◯◯の最新技術を導入した」といったトピックでも同様で、それだけでは成果アピールとして弱いです。ここに以下のような観点をトピックに盛り込むことで、成果アピールに説得力が生まれます。

  • Issue度:
    • 「◯◯の処理が遅くユーザ数増加に耐えられない。この解決はサービス成長のために重要である」
    • 「この技術導入は社内 (or ◯◯界隈) で前例が無いため、難易度が高い」
  • 解の質:
    • 「これまで2時間を要していた処理が10分で完了するようになった」
    • 「インフラ性能を10倍以上にする方法に比べてコストを1/10以下に抑えられる」
    • 「最新トレンドに追従したことで優秀なエンジニアの採用に貢献できる」
  • 革新性:
    • 「◯◯の工夫をしたことで本番環境のサービスを止めずに実現できた」
  • 主体性:
    • 「チームに有用性を提案しエンジニア◯◯名をリードしながら実現した」

成果アピールでの留意点

成果アピールには、成果 (Issue度・解の質) とプロセス (革新性・主体性) の両観点が含まれていることが望ましいです。「成果がプロセスによって生み出された」というのが自然な流れだからです。言い換えれば、成果にはそれが生み出された理由や背景 (=プロセス) が存在するはずだからです。

とはいえ、これら4つの観点は常にすべて盛り込めるとは限らないと思います。成果は出たものの理由が良く分からずプロセスを上手く説明できない場合や、プロセスは工夫したものの具体的な成果創出までは至らなかった場合もあるかも知れません。そういった場合は、4つでなくても良い (仕方ない) と思います。

しかし、やったことをよく振り返れば何かしらの観点は見出だせるものと思います。個人的には、内容が少々強引だったり多少のこじつけがあってもOKと思っています。4つの観点を自分(達)で見出し、言い切ることが大切だと考えます。 (完全な嘘やでっち上げはもちろんNGですが)

また、先述の具体例ではやったことから4つの観点を逆算する形で説明しましたが、本来的にはやったこと (解の質・革新性・主体性) よりも解くべき問題 (Issue度) が先に来るはずです。ですので、「自分(達)は何のためにそれをするのか?」を日頃から考えるクセを付けると良いと思います。 (解の質・革新性・主体性の観点についても同様に日頃から意識すると良いです)

なぜ成果アピールが大切なのか

大きく3つの理由があると考えます。

  • 自分(達)が成したことの「意味付け」をするため
  • 自分(達)の成功を「外に届ける」ため
  • 自分(達)の評価を「他人に握らせない」ため

以下、それぞれについて説明します。

自分(達)が成したことの「意味付け」をするため

自分(達)がやったことは、そのままでは成果 (価値) にはなりません。その意味や意義を見出し、それが自他共に認められることで初めて成果 (価値) になるのだと考えます。

また、自分(達)で「意味付け」をしていないと成したことに自信が持てず、外からの評価や意見に振り回される危険性も出てきます。 (成果が成果として周りに認められるまでには大なり小なりの「タイムラグ」があるため、ときには辛抱強く待つことも必要になります)

自分(達)の成功を「外に届ける」ため

自分(達)が成したことは、その外にいる人達に届かなければ意味がありません。成果を適切にアピールすることは、自分(達)の成功を自分(達)の「外に届ける」ことに繋がります。そのためには、成功を届ける相手 (Who, Where)・成功を届ける相手が求めているもの (What, Why)・成功を届ける方法 (How, When) を見極めることが大切であると考えます。

自分(達)の評価を「他人に握らせない」ため

自分(達)の評価を「他人に握られる」 (≒コントロールされる) ことはリスクだと考えます。成果を適切にアピールする術を身につけることは、そのリスクを減らすことに繋がります。そしてそれは、「自分(達)は上司/組織/世の中から評価されない」といったある意味での外部依存状態から脱却する一つのカギになるのではないかと考えます。

おわりに

以上、自身やチームの取り組みをアピールする際に意識すると良い4つの観点 (Issue度・解の質・革新性・主体性) について具体例を交えて紹介しました。これらの観点を意識して適切に成果アピールできるようになると、成果面談などの社内イベントのみならず、社内外のプレゼンや転職活動 (レジュメ作成・面接・交渉) など様々な場面で役に立ちます。

  • 成果 (創出した物事の価値・意義)
    • Issue度: どういった/どのくらいの問題に取り組んだか? (重要度・規模感・難易度)
    • 解の質: やったこと/結果は、どういった/どのくらいの変化・貢献をもたらしたか? (価値・意義)
  • プロセス (成果を生み出した理由・背景)
    • 革新性: アプローチ手法の着眼の良さ/工夫点はあるか? (アプローチ方法)
    • 主体性: アプローチをどのような立場で/どのくらい主体的に推進したか? (進め方)

私は現在エンジニアリングマネージャーとして、メンバーにこのような成果アピールのサポート (日頃の仕事や上層への働き掛けも含む) や成長機会の提供を行っています。また、私自身も上司や開発・人事・事業部門などからこのようなサポートや成長機会を頂いています。こういったサポートや成長機会を多く得られる環境が、弊社 (RMP) の魅力のひとつであると感じています。

本エントリが、これを読んで頂いた方々の社内外活動で何かしらのお役に立てれば幸いです。
また、弊社 (RMP) の環境に興味のある方は こちらこちら をぜひご覧ください。

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