データ組織での「UIUXゼミ」の取り組みのご紹介

目次

はじめに

こんにちは、データ推進室UIUXチームの安藤です。
本記事では、組織内の有志メンバーで実施している「UIUXゼミ」という勉強会の取り組みについてご紹介します。
2024年4月の発足以来、半期単位でメンバーを募集し、テーマをアップデートしながら、継続的に活動しています。

なぜデータ組織で「UIUX」なのか?

きっかけは、開発プロセスにおける「共通言語」の必要性でした。

機能要件は満たしていても、「ユーザーが実際に利用するシーンを想定した機能設計になっているか」「ユーザーが直感的に理解・操作できる設計になっているか?」という視点が抜けてしまうと、プロダクト本来の価値を活かしきれないことがあります。また、専門のUI/UXデザイナーと協業する際、意図(Why)を理論的に理解できていないと、実装時のトレードオフ判断やスムーズな連携が難しくなります。

そこで私たちUIUXチームは、単なる「画面の見た目」の話ではなく、「HCD(Human Centered Design:人間中心デザイン)」のプロセスを理解することを主眼に、以下の目標を掲げてゼミを発足しました。

  • UIUXゼミの役割・目標
    • 長期的なゼミの役割
      • UI/UXを意識してプロダクト設計をする重要性の理解を促す
      • 協業をスムーズに進めるために、UIUX検討をする人の業務を把握してもらう
    • 短期的なゼミの役割
      • UIUX情報への感度を向上し、自ら知識獲得することを習慣づける
      • 協業に向けて、体験やUIの良い悪いを言語化できるようになる

「ゼミ生みんなで目標に向けて何をすべきか考えていく」 というスタンスで、ファシリテーターもメンバー持ち回りで運営しています。

具体的にどんな事をやっているのか?

ゼミは週に1回実施しています。 座学だけでなく、「理論を知り、言語化する」サイクルを回すことを意識しています。
では、私たちが実施している主な活動をいくつかご紹介します。

▼ UIUXゼミの活動全体像

活動内容(参考)

主な活動(一例)

Good/Badデザイン・体験の共有

日頃の生活の中で、「これ使いやすい!」「逆にここは分かりにくい…」と感じた体験を持ち寄り、発表するワークです。進行にはFigJamで作成した専用フォーマットを活用しています。

▼ ワークの流れ

  1. 体験したGood/Bad事例をフォーマットに各自書き込む
  2. それが「なぜ使いやすい/にくいのか」を深掘りする

「なんとなく使いにくい」という曖昧な感覚を、「システムの状態が視認できないから不安になるんだ」といった具合に、他者に説明できるようトレーニングしています。

FigJamを使うことで視覚的に情報が整理され、メンバー間で活発な意見交換ができるのがメリットです。また、単なる評論で終わらず 「プロダクト開発に活かすなら?」 という視点も大切にしています。

フォーマットイメージ

▼ 実際の共有と理論的解釈の例

  • Good:Slackの「後で(Remind later)」機能
    • 事象:スレッドやタスクを一時保存できる機能。
    • 分析:「後で」というネーミングが、ユーザーの「あ、これ後でやる!」という内的な思考の流れ(メンタルモデル)と合致しており、直感的に操作できます。
    • 理論的背景:専門用語ではなく、ユーザーが日常使う言葉や概念を用いることで認知負荷を下げています。
  • Bad:書店検索機の結果画面
    • 事象: 検索結果に「棚番号」しか表示されず、店内の地図が出なかった。
    • 分析:「本を探す」というタスクにおいて、棚番号は中間情報に過ぎません。最終ゴール(本の場所)への導線が分断されています。
    • 理論的背景: ユーザーの「ジャーニーマップ」の欠落。検索後の「移動する」という行動文脈が考慮されていません。
  • Bad:作業イメージと合わないボタンUI
    • 事象: 肯定的なアクションボタンに「×」アイコンがついていた。
    • 分析: ユーザーが「キャンセル」を想起し、押下を躊躇してしまいます。
    • 理論的背景: 「一貫性と標準」の違反。既存のUIパターン(×=閉じる・キャンセル)から逸脱すると、ユーザーは混乱します。

課題図書の輪読会(ABD・習慣化)

UI/UXに関する知識をインプットするため、書籍の輪読を行っています。この活動のこだわりは、書籍の内容やボリュームに合わせて「読み方」を変えることです。無理なく、かつ効率的に知識を吸収できるよう、柔軟に形式を選択しています。

日々の忙しい中、まとまった読書時間を確保できず、つい積読になりがちです。そのため、毎週決めた範囲を宿題にしたり、ゼミ内で「10分間」と時間を区切って読み進めるなど、読む習慣をつけることを目的にしています。

また、一人で黙々と読むよりも、メンバー同士で感想や疑問を言い合うことで「自分にはなかった視点」に気づけるのも、ゼミ形式ならではの大きなメリットです。

▼ 具体的な進め方の例

  • ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ)形式:

    • 1冊の本を複数人で分担して読み、その場で要約(サマリ)を作成。リレー形式で発表し、意見交換を行います。アウトプットにはFigJamを活用しています。
  • 習慣化重視のスタイル:

    • ゼミ内で「1日10分」など時間を区切り、読む習慣をつけます。

これまでに扱った書籍や、現在取り組んでいる書籍は以下の通りです。ご興味のある方はぜひ手に取ってみてください。

【今期の課題図書】

  • 『デジタルプロダクト開発のための ユーザビリティテスト実践ガイドブック』マイナビ出版 (2023/7/27)
    • 「使いやすい」とは何かを定義し、ユーザビリティテストの具体的な計画・実施方法やノウハウの習得を目指しています。

【過去の課題図書(一例)】

  • 『現場のプロがわかりやすく教える UI/UXデザイナー養成講座』秀和システム (2023/03/28)
    • 基礎固めとして、「読む習慣」をつけるスタイルで実施しました。
  • 『UXデザインの法則』オライリー・ジャパン (2025/1/29)
    • 心理学的法則を学び、実際のUI事例と紐づけるワークを行いました。
  • 『はじめてのUXデザイン図鑑』中央経済社 (2023/3/27)
    • UXデザインの導入から設計・実装まで、豊富な事例を交えて体系的に学びました。

※書影は中央経済社の はじめてのUXデザイン図鑑 より引用しています

情報感度を高めるシェア文化

Slackに共有用の専用チャンネルを設け、気になったUI/UX関連の記事をシェアしています 。ただURLを貼るだけでなく、「サマリ」や「自分の感想」等をセットで投稿することを推奨しています。
テーマは「最新のUIデザイントレンド」から「業務システムにおけるUIUXの必要性」まで多岐にわたります。

社内プロダクトのGood/Bad議論

「社内プロダクトのUIUX Good/Bad議論」も過去に実施しました。
実際にメンバーが開発しているプロダクトを題材に、「認知的ウォークスルー」のような形式で、ユーザーになりきって操作し、課題を発見するワークショップを行いました。
開発者視点では「仕様通り」でも、ユーザー視点では「迷う」ポイントを洗い出し、実際の改善フィードバックにつなげています。

おわりに

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今回ご紹介したUIUXゼミは、単なるスキルアップの場である以上に、「職能の壁を越えて共通言語を作る場」として機能しています。
エンジニアやプランナーが、あえて専門外である「デザイン」や「HCD」を学ぶことには、大きなハードルがあるかもしれません。しかし、一人ではなくチームで、かつ「先生と生徒」ではなく「全員で探求する」スタイルをとることで、そのハードルは驚くほど下がります。

また、得た知識を実際の業務やプロダクト開発の文脈に落とし込んで議論する場面が増え、確かな実務への還元を感じられるようになりました。
ぜひランチタイムや朝の時間を使って、他組織の「物事の捉え方」を学ぶ勉強会を始めてみてはいかがでしょうか。技術力に「ユーザー視点」という武器が加われば、開発の景色がガラッと変わるかもしれません。

引き続き、ユーザーに向き合うトライを続けていきたいと思います。

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