【新進気鋭のWiki】Scrapboxについて社内ユーザーにインタビューしてみました!
原 健太
この記事は RECRUIT MARKETING PARTNERS Advent Calendar 2018 の投稿記事です。
こんにちは。mactkgです。
みなさん毎日様々なツールを組み合わせて仕事されていると思いますが、Slackなどのチャットツールはもちろん、文章共有ツールも無くてはならないものですよね? 私はScrapboxというWikiを入社前から数年間使い続けています。とても便利で気に入ってることから社内でも使いたいとお願いしたところ、あっさり導入してみることになりました。今でも弊社リクルートマーケティングパートナーズの内製開発組織で活用されています。
はじめのうちは、興味がある一部の人や私と業務上関係のある人のみが使っているだけでした。しかし、ここ最近はそれ以上に様々な人に使われている様子が観測できており、この機会にScrapboxが社内でどのように活用されているのかをまとめてみることにしました。
Scrapboxとは?
その前にScrapboxとは何なのかをおさらいしておきましょう。一言で言い切ってしまうとScrapboxはWikiです。Wikiツールは今までにもいろいろありましたが、次のような特徴を合わせ持っています。
- リンクが書きやすい。ことばを
[]
で囲うだけでリンクになる(候補表示も賢い) - タグで紐付いた関連しているページを出してくれる(2 Hop Link)
- 保存状態という概念が無く、編集権限さえあれば誰でもすぐに編集できる
- Google DocsやDropbox Paperのような共同編集ができる
アトラシアン社のConfluenceやQiita:Teamなどと比べると、「すぐに編集できる」「すぐにリンクできる」という部分にフォーカスして設計されており、情報の新鮮さを保つために気軽にいじれるような工夫が随所に散りばめられています。
私はこう使う
そんなScrapboxですが、私は社内でこんな風に活用してきました。
- 社内ISUCONの作業ログとして
- 社内ITツールの開発プロジェクトの要件整理や実装の議論の場として
- 実装担当は私だけでしたが、議論に付き合ってくれる人を入れて2~3人くらいのチームです
- 私が担当するゼクシィ縁結びのグロースハックチームの案件管理、作業ログ、アイディアメモ、ポエムなどとにかく何でも
- プロダクトそのもののドキュメント管理にはConfluenceを使っているため、チームの外に置いておきたい資料や連携が必要なものは随時合わせてページを作ったりしています。
私以外にも活用事例が出てきているので、他所にはどのように活用されているのかをインタビュー形式で紹介していきたいと思います。
超速スピードで読書会! SRE読書会で活用: @reizist
まずは、キッズリーの開発メンバーであるreizist氏にお話を伺います!
― mactkg(私):
使っているプロジェクトと、どのように使っているかについて教えてください。
reizist:
週1-2回のペースで開催しているSRE本1)SRE サイトリライアビリティエンジニアリング――Googleの信頼性を支えるエンジニアリングチームの読書会のメモのために使っています。参加者は現時点で最大8人くらいです。ただやるだけではもったいないので、後で振り返れるよう、内容のアウトラインをまとめつつ議論等も内容に結びつく形で残したいと思い、使い始めました。
各開催につき1章か2章分を必要なだけ時間を取って各自が読書しながらScrapboxにメモします。参加者全員が読み終わった頃合いをみて、メモした項目を振り返りながら口頭で議論を行い、更にその議論をScrapboxに追記していくスタイルです。
― mactkg:
私もその読書会に参加していましたが、口頭での議論と並行して、Scrapbox 上でも議論が起こったりすることもありました。あれは面白かったですね。社内には、Qiita:TeamやConfluenceもあります。なぜScrapboxにしたんですか?
reizist:
最初はMarkdownでメモを取ってからQiita:Teamで公開しようかとも思いましたが、「多人数で同時編集可能・議論が広がりやすい・誰のメモかというコンテキストを残しやすい」というメリットからScrapboxを使ってみることにしました。
― mactkg:
Scrapboxを実際に使ってみてどうでしたか?
reizist:
本の内容のアウトラインをメモしたりコメントしたりしている最中にCtrl+iで自分のアイコンを一瞬で付与できる機能が便利ですね。誰がどのようなコメントをしてその結果どのような議論が広がったか、みたいなコンテキストがきれいに俯瞰できるようなメモになったときは、めちゃくちゃ有益だなと感じます。
reizist:
ただ、『記事同士のリンク』をうまく使いこなせていないなあと思いますね。今は各開催をタグ形式でリストにしているんですが、あまり一覧性が良くないなと感じています。また、人ベースの記事一覧とか(誰がどのような記事に関わっているかなど)見たいんですが現状は出来ない……ですよね? この辺りは気になりますね。
― mactkg:
なるほど。「スループット」や「レイテンシ」など頻出しそうな言葉はリンク出来ていますが、赤文字になってページの内容が無いケースも多いですよね。個人的には、とりあえずそれっぽい単語にリンクを付けておくだけでも十分かな、とは思っています。目次ページについては、追々試行錯誤してみましょうか…!
最後に何かコメントなどあればよろしくお願いします!
reizist:
仕組み自体は凄く好きで、あっという間にファンになりました。いくつかの形式(.md
.html
.pdf
など)へのエクスポート機能があったら嬉しいですね。社内で使っていても、せっかく書いたメモが退職時に参照できなくなったりすると思うと悲しい!
― mactkg:
Markdownからエクスポートするのは有志のBookmarklet2)https://scrapbox.io/daiiz/ScrapboxコンテンツをMarkdownに変換するBookmarkletを使ったり、PDF出力は印刷機能で代替するという手があるかもしれないですね。Markdownでエクスポート出来るようになると、パブリックなところに持ち込む場合も簡単になるので、是非とも検討してもらいたいところですね。ありがとうございました!
インタビューを終えてみて
Scrapboxを使ってみたいけどどうやって使ったらいいかよくわからない、という人は、まずは読書会をやってみるといいかもしれませんね。私もチームで「Hacking Growth グロースハック完全読本」を読んでいるのですが、同じような形式(決めた分量読み、メモし、議論)でやっていて、とてもうまく進んでいます。
Scrapboxが思考ツールであるということが分かってきた: @tondol
次は、キッズリーのiOSアプリ開発を担当されている tondol ( 保坂智之 ) 氏にお話を聞いてみましょう!
― mactkg(私):
まずは、使っているプロジェクトとどんな風に使っているかについて教えてください。
tondol:
保育園と保護者向けのサービス「キッズリー」の開発部隊内で活用しています。まだ固まっていない設計の検討をする場であったり、障害対応後の振り返りをするのによく使っています。最近では毎日使うような状態になってきていますね。使っているメンバーは、インフラやサーバーサイドのエンジニアが多いです。
障害対応の振り返りなどは様々な人たちと絡むので、複数人でガーッと書いていきます。こういうときはリアルタイムで複数人編集できるのが便利ですね。ちなみに、障害対応のページは、SRE読書会で見たポストモーテムのフォーマットをベースにして作っています。
設計の検討をするときは、最初は一人でガーっと書き出し、共有する時になってから複数人編集するという形で使っています。一人で書くときに思考に近い速度でアウトプットができるのが良いですね。脳のメモリは限られているので、補助記憶としての使い方です。箇条書きでポンポン書ける部分とか、スペースでインデントされる部分は最高です。
サービスとしての哲学3)tondolさんは使用前に https://scrapbox.io/shokai/美文章滅すべし などの記事を読まれていたとのことです。みたいなものが全面に出ているので人を選ぶツールかもと思いますが、しばらくすると「Scrapboxが思考ツールであるという感覚」が分かってきます。
Scrapboxが思考ツールであるという感覚が分かってきた
— 感性の死 (@tondol) November 30, 2018
― mactkg:
Scrapboxが思考ツールみたいな感覚がするという話は、開発支援G の mpon氏も個人ブログで同じような記事を書いていましたね。ページの切り分け方はどんな感じですか?
tondol:
「◯◯(機能名) クライアントアーキ」と言った感じでかなり雑に切ってしまっていますね。タグで辿れればそれでいいや、という発想でやっていっています。障害対応などは、一枚ページを作ってその中に書き込みながら行っています。
― mactkg:
なるほど。まさにScrapbox wayという感じですね。キッズリーチームはConfluenceなどにも結構情報が溜まっていると思うのですが、どのように使い分けていますか?
tondol:
Scrapboxでの議論やまとめてきたものを、Conflienceや他媒体に清書することが多い気がしますね。情報のばらつきは確かに課題で、欲しい情報があったときにどこを見ればわからないことは起こってますね。Googleみたいに横断検索してくれる何かが欲しいです…。
― mactkg:
ここは解決しなくてはいけない問題の1つですよね。僕らのチームでは「ここまではScrapbox、ここから先はConfluence」といったように、とざっくり決めて運用しています。
最後に何かコメントなどあればよろしくお願いします!
tondol:
キッズリー以外だと、プロディベ.Swift
(内製開発組織のiOSエンジニアが集まる勉強会)や合宿のアイディア出しなどでも使っています。事前のアジェンダをまとめたり、勉強会や議論の過程を記録するのには便利ですね。
― mactkg:
ありがとうございました!
インタビューを終えてみて
Scrapboxは、持ち前の編集機能の強力さを活かすことで考え事をまとめたり、共有するのにとても向いているなと改めて感じました。Confluenceなどで既存の業務が行われているような組織でScrapboxをどのように併用していくのかは難しいところです。
まずはSlackでは複雑な議題のディスカッションや整理、メインの業務以外でぽっと出てくるミーティングの議事録などに使ってみるだけでも十分便利なので、その辺りから利用を始めるのも良いのかもしれません。
まとめ
今回は、弊組織でScrapboxがどのように使われているのかについて、弊社の開発エンジニアのインタビューを交えてお送りしました(協力していただいたお二人に感謝します!)。
Scrapboxの特徴
- 「すぐ編集できる」「すぐリンクできる」強力な編集機能
[]
で囲うだけで簡単にリンクできる- インラインでアイコンを挿入できる
- 保存状態がなく、編集権限があればすぐ編集できる
- 同時編集できる
- リンクで辿れるタグ機能
- タグで紐付いた、関連しているページを出してくれる(2 Hop Link)
Scrapboxを始めるならこんなところから
- みんなで書き込みながら読書会
- ミーティングの議事録
- アイディア出し
- 事前のアジェンダまとめ
- 複雑な議論の整理(機能の設計など)
長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました!何か質問があれば、Twitterの@mactkg までご連絡いただければ出来る限りでお答えします。
脚注
↑1 | SRE サイトリライアビリティエンジニアリング――Googleの信頼性を支えるエンジニアリングチーム |
---|---|
↑2 | https://scrapbox.io/daiiz/ScrapboxコンテンツをMarkdownに変換するBookmarklet |
↑3 | tondolさんは使用前に https://scrapbox.io/shokai/美文章滅すべし などの記事を読まれていたとのことです。 |