脱・4.5万人に届け!リクルートの社内ICT広報でターゲットを設定した話

こんな方に読んでほしい!

社内向けの情報発信で悩んでいる方


リクルートは社内ITの部署に広報がいる

ICT統括室の天野です。2024年5月にリクルートに中途入社し、ICT統括室の広報チームで、社内広報を書くUXライターとして仕事をしています。以前はメディアでライティングや編集をしたり、NPOでサポートデスクや業務改善の仕事をしたりしていました。

 

ICT統括室は「いわゆる社内IT」の部署です。その部署に社内広報を専門とするチームがあるのは珍しいのではないでしょうか。

 

広報チームの仕事は、リクルートで提供している社内ITツール/システム(以下、R-ICTサービス)の情報を、約4.5万人の従業員に届けることです。R-ICTサービスの担当者から依頼を受けて、社内に広報を発信します。OSのアップデートを依頼したり、ネットワークのメンテナンスを告知したり、生成AIの勉強会のお知らせをしたりと、広報内容は多岐にわたります。

 

 











ただ情報を届けるのではなく、できるだけ端的に、難しい専門用語は言い換えて、自分に関係があるかパッとわかるようなタイトルにして・・・・と従業員に「自分ごと化してもらえるよう」さまざまな工夫をしています。

 

工夫はしているものの、「見てもらう」「伝わる」ことに伸びしろがあるのが現状です。この記事では、そんな悩みにどう向き合っているかを紹介します。技術的な話はありませんので、ご了承ください。


みんなに届け!は難しそうだ

広報チームでは、広報ごとの開封率とリアクション数をモニタリングしています。日々、開封率が低かった広報や「わかりにくい」という反応を多くもらった広報を振り返るなかで、以下の仮説が生まれました。

 

みんなに届け!は、誰にも届かないのでは・・・?

 

 










たとえば、「社内の申請ワークフローが、社内ネットワークのVPNに接続せず、自宅や外部のWi-Fiからでもアクセスできる(以下、VPNレス)ようになった」という情報を発信したとき。申請ワークフローなので、申請者と承認者がいます。

 

広報では、申請者と承認者それぞれのメリットを訴求する内容を書いていましたが、結果として申請者から「わかりにくい」というリアクションを複数もらいました。

 

チームの振り返りでは「承認者にとっては待望のアップデートだったけれど、申請者にはそこまでメリットがなかったかもしれない」という結論に。

 

ひとつの機能改善で全ユーザーが幸せになることはなく、役職や利用シーン、業務内容などによって幸せの濃淡は変わります。濃淡を見極めて「重点読者(メインターゲット)を設定する」ことが必要なのではないか、と思った瞬間でした。



絞る勇気がない、社内外の声が後押しに

「ターゲットを決めた方がいいのでは?」と思っていたものの、社内広報でターゲットを決めて、マイナスな影響があったらどうしよう・・・という気持ちがあり、提案の勇気が出ない日が続きました。

 

そこで、ICT統括室以外の広報の方に連絡したり、UXライターやテクニカルライター(ユーザー向けの文章を書くことを専門としている職種)が集まるミートアップ「Technical Writing Meetup」に参加したりしました。社内外の有識者にターゲットやペルソナを決めているのかを伺ったところ、みなさん

 

「決めていますよ!」

 

とのこと。満場一致です。この言葉に勇気づけられ、起案〜承認のプロセスを経て、ICT統括室の広報でもターゲットを決めてみることにしました。



相手が知りたいことを相手の言葉で書く

ターゲットは、以下のような観点で、広報を依頼するR-ICTサービス担当者に決めてもらいました。

 

・施策の恩恵/影響をもっとも受けるのは?

・過去の類似広報で問い合わせが多かった組織は?

・そのサービスのヘビーユーザーは?

 

これまで「ユーザー」という言葉を主語に会話することが多かったのですが、誰に伝えたいか?を事前にすり合わせることで、広報も書きやすくなりました。

 

ターゲットが決まったら、ターゲットが自分ごと化できそうなキーワードやメッセージをタイトルや本文に入れ、図やイラストを活用するなどの伝え方も工夫しました。

 

たとえば、「社内の従業員検索システムが、VPNレスで使用できるようになった」という情報を発信したとき(VPNレスのリベンジ!)。

 

VPNレスになった背景は、営業担当者から「アポの移動中など限られた時間で使用したいのに、VPNに接続するのは手間だ」という声があがったためでした。広報のターゲットを営業担当者とし、営業担当者が従業員検索システムを使用するのはどういう場面か?実際の声をもとに考えました。

 

移動中=パソコンではなくスマホで使う=「スマホ」という単語を入れる

限られた時間=とにかく早く使いたい=「パパッと検索」という単語を入れる

 

のように、便利になる場面を想起しやすいようなキーワードやメッセージを広報に盛り込みました。

 

VPNレスの対象外となるケースがいくつかありましたが、営業担当者に関わりそうな情報のみを記載。それ以外は、従業員検索システムのヘルプページに遷移する導線を用意し、できる限りコンパクトにまとめることも心がけました。短いは正義です!

 

結果は好評で、「わかりやすい」「参考になった」と多くのリアクションをもらえました。


「ユーザーさん」はいない、文章は引き算する

他にもさまざまな広報でターゲットを決めて情報発信をしています。課題はありつつも、少しずつ効果が出ているように思います。

 

ITツール/システムの利用者を一般的に「ユーザー」と呼びますが、「ユーザーさん」は存在しません。ユーザーって、誰なんでしょうか?

 

「みんなに届け!」で文章を書くと情報量が増えがちです。文章は引き算です。ごくわずかなイレギュラーケースのための説明を書いたり、注釈を増やしたりすると、どんどん文章が長くなり、結局誰にも読んでもらえません。

 

社内広報というひとつの「手段」で、イレギュラーケースにまで触れる必要はなく、広報以外の場所(社内イントラやヘルプページ)に情報を掲載し導線を用意すればいい、というのが個人的な考えです。


従業員の解像度が高い、“データドリブン社内広報”へ

ここまで、「社内広報でも重点読者を決めてみたらいい感じだった話」をお届けしてきました。まだまだ道半ばですが、重点読者に憑依して、相手が知りたいことを相手の言葉で書くことを磨いています。

 

憑依するためには、相手の解像度をあげる必要があります。「営業担当者向け」にするのであれば、営業の仕事、社内広報を読むタイミングやデバイスなどを知ることで、広報の書き方、配信タイミングを考えるための示唆を得られます。

 

社内広報は、すぐ近くに読者がたくさんいます。インタビューもしやすいです。これからも従業員の声をたくさん聞いて、改善のタネを見つけていきます。

 

「やったことをきちんと振り返って次につなげる」ことも重要です。データもだいぶ溜まってきたため、より高度なデータ分析や効果検証のためのABテストも導入し、定量と定性を行き来しながら、改善サイクルを回していきたいと思います。



当たり前品質もきちんと担保する

ターゲット、ターゲットと繰り返し書いていますが、並行して全体的な品質向上にも取り組む予定です。

 

主語を明確にすること、主語述語のねじれをなくすこと、解釈が分かれる言葉を使わないことなどライティングのお作法に、ターゲット云々は関係ありません。図やイラストを使用するときはアクセシビリティ対応も必要です。

 

広報ごとに異なる重点読者に憑依しながら、全体の当たり前品質も磨いていく。両取りを目指したいと思います。


最後に

広報を読む方には、IT自体に苦手意識のある方も多くいます。「むずかしいをわかりやすく」伝えるためにできることはたくさんあります。

 

ライティング、デザイン、マーケティング、UXリサーチ、データ分析など、さまざまな知識をもとに「伝わる広報」を考えることは、難しくも、とてもやりがいのある楽しい仕事です!




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