フィルム型ピエゾ素子の振動発電技術の検証 その1
こんにちは、リクルートATL(アドバンスドテクノロジーラボ)でIoT関連の研究を行っている菅原です。
SDGsが掲げるエネルギー問題への対応として、継続的に環境発電の検証を行ってきました。
今までの検証から、晴天時における太陽電池の発電が有用であることが明らかになっていますが、雨天時は発電できないという課題があります。
そこで今回、フィルム型のピエゾ素子※1を用いて、雨天時の水滴の打撃による振動発電が可能かどうかの検証を行おうと思います。
※1 ピエゾ素子
ピエゾ素子とは圧電素子(Piezoelectric Element, Piezoelectric Device)のことで、圧電素子は振動を加えることで電圧を発生(圧電効果)したり、逆に電圧を加えることで振動(逆圧電効果)したりするデバイスのことです。
今回は、雨天時の水滴の打撃による振動発電検証の事前検証として、ピエゾ素子振動発電がもっとも効率よく発電するための条件を発見するための検証を行いたいと思います。
検証概要
検証の目的
フィルム型ピエゾ素子は、さまざまなスペックのものが製造されていますが、その中でもどの要素が振動発電に関係するかを調査するため異なるスペックのフィルム型ピエゾ素子を同一条件下で発電量の測定を行い、もっとも発電量の多いスペックを見出したいと思います。
また、フィルム型ピエゾ素子を振動発電させるためには、フィルム型ピエゾ素子を固定する必要があります。
その固定数や固定場所を変更することで発電量が変化することが想定されます。
そこで、さまざまな固定数や固定場所で振動発電を行い、その発電量の測定を行い、最適な条件を見出したいと思います。
検証で使用する機材
以下の機材を使用して検証を行います。
・ピエゾ素子
振動発電を行うピエゾ素子のスペックです。
・測定機器
発電量を測定するためのオシロスコープです。
・治具
ソレノイドを使用してピエゾ素子に一定の振動を加え振動発電を行います。
検証の方法
ピエゾ素子にソレノイドにより周期的に振動を加えて発電電圧を測定します。
具体的には、50ms間ソレノイドで振動を加え、その後500ms間ソレノイドを停止するというサイクルを繰り返します。
その際のピエゾ素子の固定場所は、以下のように変えて測定を行います。
固定数と場所のバリエーション
これらの条件において発電電圧を測定し、最適な固定条件を見出します。
測定結果
測定の結果、もっとも発電電圧が高かったのは、フィルムの長さが短いピエゾ素子を端子部分1箇所で固定した場合でした。具体的な結果は以下の通りです。
この結果から、短いフィルム型ピエゾ素子を端子部分1箇所で固定することが、もっとも高い発電電圧を得るための最適な条件であることが示されました。
発電の状況についてですが、下図のように振動の初期段階である最初の20msほどの間に、最大で2.5Vの発電が行われていることが確認されました。しかし、その後は発電が行われていないことがわかりました。
測定結果の評価
・発電量と固定方法の関係
端子部分1箇所の固定が、もっとも発電量が大きかった。
・発電量と圧力感度の関係
発電量に圧力感度が影響しているとは考えられない。
・発電量とフィルム長さの関係
フィルムの長さは短い方が発電量が大きかった。
・発電量とフィルムの厚さの関係
発電量にフィルムの厚さが影響しているとは考えられない。
考察
フィルムの長さが短いピエゾ素子を端子部分1箇所で固定した方法が、もっとも発電量が多いという結果になりました。これは、以下の要因が発電に貢献していると考えられます。
・同じ振幅では、振動する物体の長さが短いほど振動時の歪みが大きくなる
発電を行うフィルムの歪みが大きくなるほど発電量が増加します。したがって、フィルムの形状を改良し、複合的な歪みを発生させることで、さらに高い発電量が期待できると思われます。
・同じ振動では、固定箇所を少なくすることでより大きな振動を実現できる
大きな振動を実現するためには、しっかりとした固定ではなく、ある程度自由度を持たせた固定が有効です。固定の加減により振動幅を調整することで、さらに高い発電量が期待できると思われます。
これらの要因が、発電効率の向上に寄与していると考えられます。
次回は、フィルムの長さが短いピエゾ素子を端子部分1箇所で固定した条件で、雨水を用いた発電の検証を行う予定です。