イメージ解読によるIoTアクチュエータの新しい操作方法の考案について
菅原健翁
こんにちは、リクルートATL(アドバンスドテクノロジーラボ)でIoT関連の研究を行っている菅原です。
QRコードの読み取りなど、イメージ解読によりデータを取得する2次元コードの利用は、現在に至るまで一般的に普及されてきました。しかしながら、取得し利用しているデータはあくまでもターゲットを特定するためのコードであり、ターゲットに対するデータ処理は、利用者が指示する必要がありました。そこで、ターゲットを特定するためのコードだけでなく、その処理内容までを取得するデータも含めることで利用者の操作性が向上する方法を考案したので、こちらでご紹介します。
考案の内容は、図1に示したスマートロックの操作フローのように、IoTアクチュエータをスマートフォンで撮影したイメージデータ(QRコード)を解読し、権限管理システムで管理された権限に基づき、処理を実行するものとしています。
図1
仕様
今回の考案の仕様は、以下の通りです。
仕様1 イメージ解読によるIoTアクチュエータの操作
→操作ターゲット・操作内容ごとに異なるイメージを割り当てることが可能になります。
仕様2 イメージ解読による利用可能権限グループの設定
→利用可能権限グループに利用者が登録されていない場合は、操作不可になります。
なお、この利用可能権限グループの管理は権限管理システムで行われ、即時反映されます。
仕様3 解読イメージの変更作成による、旧解読イメージの操作停止
→現在有効な解読イメージを廃止し、新規解読イメージを再作成します。
併せて、 新規解読イメージのみ利用可能なことを確認します。
稼働テスト
各仕様に応じた稼働の様子は、下記の動画にてご確認ください。
仕様1 イメージ解読によるIoTアクチュエータの操作
仕様2 イメージ解読による操作可能な利用可能権限グループの設定
仕様3 解読イメージの変更作成による、旧解読イメージの操作停止
考察
この稼動テストから、以下の事象が確認できました。
・スマートフォンでイメージを撮影する容易な操作により、5秒という、タイムラグがほぼない速度で操作ができたこと
・現地でIoTアクチュエータの設定を変更することなく、以下の操作が可能になったこと
-操作権限を遠隔集中管理にてリアルタイムで変更する
-操作時に使用するイメージの廃止・再作成
・操作権限を変更された利用者は、権限変更の反映操作をすることなく強制的に権限を適用されたこと
・利用者は、自ら反映操作をすることなく、強制的にイメージの廃止や再作成が適用されたこと
評価
本件と類似の利用形態で思い浮かべるのは、NFC などの非接触ICカードとリーダーの組み合わせによる認証・操作でしょう。
こうした形態と比較すると、
・利用方法は、両者ともかざすだけで操作が可能
・反応速度は5秒とほぼ同等
・本件は非接触ICカードが利用できず、スマートフォンのみの利用となるものの、リーダーが不要なのでコスト面では安価での導入が可能
・本件では設置の際、印刷したイメージを貼り出すだけで容易に利用へつなげることが可能
という本件の利点が考えられ、利用者をスマートフォンの利用者に限定すると、非常に有益な方法であると思われます。
また、応用的な利用方法としては、以下のようなものが考えられます。
海外からの観光客が利用する施設を例にあげると、施設内の設備の利用案内を様々な言語で表示する必要があります。その際、図2に示したように、多言語で表記した利用案内に操作用のイメージ(QRコード)を表示しておくことにより、それを解読する(読み取る)だけで、容易に様々な言語で案内することが可能となります。
通常、システムの多言語化には時間とコストがかかりますが、この方法では記載内容の変更だけで完了するので、急な対応の時でも安価で柔軟に表示することが可能になります。
図2
このように、本件は様々な用途に合わせて柔軟に対応することが可能な方法であると考えます。今後は、より多様な用途での活用が可能になるよう、さらなる改善を検討していきたいと思います。