深セン・香港のスタートアップ事情 vol.3

深セン・香港のスタートアップ事情 vol.3

こんにちは、データテクノロジーラボ部(以下、DTL部)販促領域グループの宮田です。深セン・香港のスタートアップ事情 vol.2に続く最終回となる今回は、「企業編」をお届けします。
なぜ深セン・香港の企業成長が凄いのか、いま中国の企業がどのような状態にあるのか、など現地で色々感じたことを書かせて頂きます。

深セン急成長の理由

なぜ深センという場所がこれだけの急成長を遂げているのか。現地で働く人々との会話によると、下記のような流れがあったとのことです。

1.世界中のハードのパーツ工場がGBA(※)に存在

・ハード(スマホ、カメラetc)の技術者が集まり世界の工場と化す
・各企業のR&D部門に対し、深セン市が金銭的な支援を行う

(※)GBA:Greater Bay Areaの略。広東(深セン)、香港、マカオの一大経済圏を指す。

2.ハードの技術進化により幅広いデバイス・サービスが成長

・ハード関連の革新的サービスが成長
・Huawei(華為),DJIなどもこの地で成長

3.各国の大手企業がハードウェア(スマホ、IoT関連機器)への投資に乗り出す

・国や市からの投資だけでなく、海外の大手企業も深センに投資を始める

4.ハードに関する世界中のヒト・モノ・カネが集中

・ヒト・モノ・カネが集中した結果、中国の合理主義な思想と噛み合い、急激に成長

他にも世界へのゲートウェイとなる香港の発展や、中国共産党の国策など、実に色々な要素が急成長を後押ししてきました。そういった背景から、様々な国や企業のパワーにより急激に成長した深センには、非常に多様なタイプの企業が存在しています。実際にどのような企業がどういった活躍を見せているのか、簡単に紹介します。

中国の大手IT企業

深センは、言わずとしれた中国の大企業、Tencent(腾讯)やHuawei(華為)の本拠地です。アリババ(阿里巴巴)、バイドゥ(百度)などの多くの大手IT企業も深センにオフィスを構えており、特にハード関連のR&D部門やインキュベーション施設が集まっています。街を自転車で走っていると、各社のコワーキングスペースなどもちらほら見られます。

中国の大手インキュベーション施設は、各種スタートアップに施設を開放し、安い賃料で優れた設備が使える状態を作って様々な商品開発を補助しています。そのプロセスは特徴的で、インキュベーション施設側は自社のブランド名をスタートアップに使わせながら、ローンチしたサービスを展開します。そして得られた収益については、レベニューシェアでスタートアップに還元することが多いそうです。さらにTencent(腾讯)は自社のサービスプラットフォームを開示しており、API連携するだけでスタートアップがサービスを拡大できる仕組みになっています。
こうした試みは大手からすると、成功したら儲けもので、特に毀損は大きくないと捉える傾向にあるようです。日本だと、小さな無名のスタートアップ企業に対し、大手がそんな簡単に名前を貸すことはあまり聞かないように思います。そういった大胆な決断が行われるところも、深センの成長の要因の1つとなっているようです。

海外の大手企業

深センには、MicrosoftのR&D部門やapple ,クアルコムといった企業の拠点もあります。街を回っているとWeWorkなど欧米系のコワーキングスペースも見られ、作業場所などには困りません。日本のメーカーも深セン・香港にいくつも拠点を設置しており、各種インキュベーション施設などの一角に見覚えのあるロゴを沢山見ました。世界中の企業がこの成長都市に拠点を作り、リアルタイムな情報や新しい技術、サービス、人を取り入れようとしているようです。

大量のインキュベーション施設

ここでは、「創新」という言葉が多く使われます。革新やイノベーションを意味する言葉で、企業の壁などに書いてあるのを多く見かけます。その言葉を地で行くように、国がR&D部門の創設に補助を出し、インキュベーション施設が多く設立され、民間の企業のR&Dも活発になっています。

ハードウェアのスタートアップでは、デバイスの耐久性の検証のため大掛かりなマシンをいくつも購入する必要があるので、国が支援している施設の中から中小のハード系スタートアップが集まって作られた施設もあるそうです。

まとめと今後

ハード及びソフトの世界のTOPがひしめき合う超成長都市、深セン。まだまだこれからも様々な革新が進み、ここから新しい技術やサービスが生まれていくのは間違いないものと思われます。私たちも中国、また深センの動きにアンテナを張り、この技術革新のビッグウェーブに乗るしかないと思っています。もはや、中国に学び真似をしてでも追いつかねばという、焦りに近い感情が大きくなっています。

日本国内の潮流としても、ソフトとハードの両方を活用し、リアルな事象をデータ化して価値を生み出すなどといった新たなサービスが次々と出てきています。私たちとしては、データやAI技術だけでなくハードの活用について深センの各企業から学び、また協働していきたいと考えています。それによって、リクルートならではの新しい価値を積極的に作り出していきたいと思います。