受電レクテナを使った発電の考察 その2

  

こんにちは、リクルートATL(アドバンスドテクノロジーラボ)でIoT関連の研究を行っている菅原です。
SDGsが掲げるエネルギー問題への対応として、私たちは継続的に環境発電の検証を行ってきました。
これまでの検証から、晴天時においては太陽電池による発電が有用であることが明らかになっています。
一方で、雨天時には十分な発電ができないという課題が残されています。

前回の検証では、テレビ放送などの公共電波に加え、地域や店舗で設置されているWi-Fiのような身近な電波に着目しました。
その結果を踏まえ、今回の検証では、近年普及が進んでいるスマートメーターに注目します。

通信機能を備えたスマートメーターは、遠隔での検針やデータ取得を実現するために無線通信を利用しており、日本国内では920MHz帯の電波が広く用いられています。
本研究では、すでに設置が進んでいる電気スマートメーターをはじめとする各種スマートメーターが発信する920MHz帯の電波を対象とし、そこから電力を回収する「レクテナ(rectenna)※1」技術の有効性を検証することを目的としています。

※1 レクテナ(rectenna)とは、rectifying antennaの略称であり、整流器(rectifier)とアンテナ(antenna)を組み合わせることで、電磁波を直流電流に変換するデバイスです。

検証概要

 

検証の目的

本検証では、前回の検証以降に導入が進み、設置率が99.9%に達しているスマートメーター※2で使用されている920MHz帯の電波を対象とします。
この電波をアンテナで受信し、電力として回収できるかどうかを調べます。
電波から電力を取り出す「レクテナ(整流アンテナ)」技術を用いて、実際にどの程度の電力が得られるかを測定します。
本検証を通じて、IoT機器などの低消費電力デバイスにおいて、電波による環境発電が有効な電源手段となり得るかを評価します。

 

※2 丸紅新電力 ”スマートメーターの制度概要:企業における電力管理の新時代” 国内の普及状況 参照  https://denki.marubeni.co.jp/column/smart_meter/ 

 

検証回路

920MHz通信モジュールのアンテナで受信した電波を整流回路で直流に変換し、テスターを用いて回収した電圧を測定します。
測定した電圧データはPCに記録し、後続の解析に使用します。

 

 

スライド1

図1:920MHzレクテナ測定回路

 

測定結果


本検証では、電波からの電力回収性能を評価するため、以下の条件で測定を行います。
まず、テスターを使用して5秒間の電圧を連続的に収集します。
次に、収集した電圧データから平均値を算出します。
あわせて、回収した電圧の最大値と最小値の差を求め、電圧変動の大きさを評価します。
これら一連の測定を10回繰り返し、測定結果の再現性と安定性を確認します。

 

スライド2

 

表1:920MHzレクテナ測定結果

 

評価

 

本検証により、920MHz帯のレクテナを用いて電波から電力を回収できることを確認しました
各測定で得られた平均電圧値を基に、測定対象とした電波ごとの発電特性を整理しました。
さらに、周波数帯ごとに回収電圧の大きさや測定値のばらつきを比較することで、電力回収効率に差が生じるかを評価しました。
これらの結果を平均値の比較としてまとめ、どの電波がより安定して電力を回収できるかを確認しました。

 

 

スライド3


表2:電波から回収した電力の比較

 

考察

 

今回の測定結果から、920MHz帯のレクテナを用いることで、周囲に常時存在する電波から安定した電力回収が可能であることが明らかになりました。とくに、回収された電圧の大きさおよび測定値のばらつきの観点から、920MHz帯は2.4GHz帯と比較して、より大きくかつ安定した出力が得られる傾向が確認されました。
この要因として、920MHz帯は周波数が低いため電波の伝搬損失が小さく、壁や床などの障害物の影響を受けにくい特性を有している点が挙げられます。加えて、日本国内ではスマートメーターをはじめとする多くのIoT機器で920MHz帯が利用されており、住宅地や商業施設といった生活環境において電波が継続的に発信されていることも、安定した電力回収を可能にしている要因であると考えられます。
一方で、2.4GHz帯はWi-Fi機器や無線LANアクセスポイントが高密度に設置されている環境では、局所的に高い電界強度が得られる場合があります。そのため、設置場所や使用環境によっては、2.4GHz帯のレクテナの方が有利となるケースも想定されます。とくに、屋内でアクセスポイントに近接した条件では、短距離における電力回収効率の向上が期待できます。
以上の結果から、単一の周波数帯に依存した電力回収手法ではなく、920MHz帯と2.4GHz帯といった複数の周波数帯に対応したレクテナを組み合わせて使用することが、環境発電の実用化において有効であると考えられます。設置環境や電波利用状況に応じて周波数帯を使い分けることで、回収可能な電力量の増加と電源の安定化を同時に実現できる可能性があります。
今後は、複数のレクテナを並列または直列に接続した場合の発電特性や、エネルギーハーベスティング用の蓄電素子と組み合わせた長時間運用の検証を進めることで、IoT機器における実用的な電源としての適用可能性をさらに明確にできると考えられます。

記事内容及び組織や事業・職種などの名称は、編集・執筆当時のものです。