家探しだけじゃない、知られざる『SUUMO』のサービスとは_事業クローズアップ【住まい領域編 PART1】

『SUUMO』というと、「住まいを探すサイト」というイメージを持たれる方が大半ではないでしょうか。しかし、それはサービスの一つの顔に過ぎません。例えばSUUMOの賃貸領域では家を探すユーザーだけでなく、不動産会社の業務を支援するサービスも数多く手がけています

不動産業界全体の生産性や利用者のユーザビリティの向上、その他さまざまな業界課題を解決するため、サービスとして成熟期を迎えて以降も新しいチャレンジを続ける『SUUMO』。今回は、世間にはあまり知られていない「家を探す以外のサービス」について深掘りするべく、SUUMO編集長 池本洋一と、住まい領域のプロダクトマネージャー(PdM)を束ねる部長の立花優也が対談。賃貸領域における不動産会社の業務支援を中心に、SUUMOの幅広い事業内容と、PdMの仕事について迫ります。
※情報は取材時2025年2月時点のものです。

池本洋一(いけもとよういち):SUUMO編集長/SUUMOリサーチセンターセンター長


立花優也(たちばなゆうや):プロダクト開発 サービスデザイン室 販促領域プロダクトデザイン1ユニット 住まい領域プロダクトデザイン1部 部長

SUUMOって「住まいを探す」サービスじゃないの?

立花:本題に入る前に、私からSUUMOの事業について簡単に説明いたします。SUUMOは「誰もが自分にとって最適な住まいに出会い、充実した暮らしができる社会の実現」を目指し、幅広いサービスを展開しています。

まず、代表的なサービスが住宅や不動産に関する総合情報サイト『SUUMO』です。全国の賃貸住宅と不動産売買情報(新築分譲マンション、新築一戸建て、土地、中古住宅)を検索できるほか、リフォーム、住宅設備に至るまで住まいにまつわる様々な情報を探すことができます。また、不動産会社や建設会社、リフォーム会社の事例を探したり、住宅を購入する際の段取り、ノウハウ、マーケットトレンド情報なども発信し、さまざまな切り口で「幸せな住まい探し」をサポートしています。

住宅・不動産購入や売買をサポートする情報サイト『SUUMO(スーモ)』

立花:また、じつは『SUUMO』では情報サイト以外にも、複数のサービスを展開しています。たとえば、対面スタイルで個人のニーズに合った物件を紹介する『スーモカウンター。住宅アドバイザーが第三者の視点で客観的なアドバイスを行い、満足度の高い住まいとの出会いをマッチングしています。

開放的な雰囲気の店舗で住宅購入相談ができる『スーモカウンター』。電話やオンラインでの相談も可能だ

立花:住宅情報の発信やマッチングだけでなく、不動産会社が抱えるさまざまな業務課題の支援も行っています。たとえば「賃貸」の領域でいうと、お客様が不動産会社に来店される日程の調整に手間がかかったり、紙の書類で物件の申し込みが行われているために記入漏れの不備があったり、入居審査通過後、正式に契約書を交わす段階でも膨大な情報を確認・記載する必要があったりと、たくさんの課題があるんです。そうした煩雑な業務を効率化し、生産性を高めるための様々な業務支援サービス、SaaSプロダクトを展開しています。

『SUUMO』の業務支援サービスの一例

他にも、インターネット上で複数の引越し業者に無料で一括見積もりができる『SUUMO引越し見積もり』も手掛けています。こちらも賃貸領域と同様に、引越し会社向けの業務支援サービスを展開していて、2024年9月からは「配車サポート」の提供を開始しました。引越しの配車業務をWeb上で一元管理することにより、引越し会社の業務効率化を支援するというものです。

このように、じつはかなり幅広くサービスを展開しています。「家を探す」だけではなく、さまざまな付加価値を提供できるのが『SUUMO』の大きな特徴と言えると思います。

対談は『SUUMO』の拠点である田町オフィスで実施

煩雑で工数の多い賃貸業務を、テクノロジーで効率化

池本:今、立花さんが説明してくれたように、『SUUMO』のなかでも賃貸領域は特に、対ユーザー(家を探す人)だけでなく、不動産会社などの業務支援に注力している印象があります。はじめに、その理由から説明してもらえますか?

立花:まず、賃貸領域の特徴として「ステークホルダーがとても多い」ことが挙げられます。物件のオーナー、管理会社、仲介会社、保証会社などですね。各ステークホルダーの事業規模や業態も様々で、それぞれ業務のやり方が異なるケースもあります。その結果、業態や規模などによってシステムの個別最適化と業務の属人化が進んでしまい、全体の効率化がなかなか進まないという事情がありました。そこを何とか標準化して、業界全体の生産性を高められないかと考えたことが、SUUMOが賃貸領域の業務支援に乗り出した大きな理由の一つです。

池本:住まいの領域のなかで、賃貸は、言葉を選ばずにいうと「薄利多売」なビジネスと言えます。そのわりに業務工数が多く、時間も手間もかかる。業務を効率化しなければ利益が出せず、人材が離れてしまうという課題もありますよね。また、無駄な仕事を減らして不動産会社が本来フォーカスするべき業務、特に「家を探しているお客さまや物件のオーナーさんに向き合うこと」に集中したい、みたいな話もあると思います。ちなみに、テクノロジーによって標準化・定型化できる業務としては、どんなものがありますか?

立花:たとえば、お客さまからの問い合わせ対応ですね。不動産会社に日々寄せられる大量の電話やメールの一部、似たような問い合わせだけでも回答を定型化し、自動で対応できるようになるだけでも、かなり違うと思います。また、業務効率化の観点でいうと、賃貸物件の申込をオンライン化することで、入居希望のお客様に来店してもらい紙の申込書に記入してもらう必要がなくなります。記入漏れによる差し戻しがなくなるだけでなく、接客対応の時間も削減することができるんです。

「申込サポート」で業務効率化を支援

池本:飲食業や物販業などではそうしたテクノロジーが当たり前に浸透していて、業務生産性を高めつつ顧客満足度を上げています。住まいの領域のなかでも賃貸は(売買と比べて)安価な取引ですし、取引が完了するまでにかかる時間も比較的短い。そういう意味では飲食業や物販業と似た特性があり、PdMが業務支援サービスを提供するにあたって求められる思考や工夫の仕方も、参考にできる点があるかと思います。ですから、他社で飲食や物販のSaaSプロダクトを経験した人が、それまでの知見を活かしやすい分野であると言えるかもしれませんね。

「物件情報のリアルタイム連携」で、希望の物件が来店時に申込済み…という状況をなくす

池本:賃貸領域には、業者間による「情報の共有(伝達)」という課題もあると思います。先ほどステークホルダーが多いという話がありましたが、物件のオーナーと入居者の間に、「管理会社」と「仲介会社」の2社が入っているというケースもよくありますよね。管理会社と仲介会社の情報伝達がスムーズに行われないと、どんな問題が生じますか?

立花:最も解決したい問題は、掲載されている物件情報と実際の申し込み状況に「タイムラグ」があるということです。ネットで見つけた物件を見学したいと不動産会社に来店したが、その物件がすでにほかの方の申し込み済み、ということが起こってしまう。この背景には、さきほどお伝えしたステークホルダーの多さが影響してきます。具体的に言うと、オーナーから直で物件の募集を委託されている管理会社は、入居希望の申し込みが入ったり、契約が決まったタイミングで状況を認識していますが、仲介会社がその物件が成約済みになったことを認知するまでには、人手を介して情報共有がされるため、時間がかかってしまうことがあります。そのため、仲介会社が物件情報を更新・削除するまでにタイムラグが生じてしまうわけです。

池本:それって飲食店でたとえると、お店に予約を入れたのに、いざ行ってみたら「すみません、すでに他のお客さんの予約が入っていました」と言われるようなものですよね。他の業界だったら大問題になりそうなことが、賃貸の領域では普通に起こってしまっている。そこにSUUMOが介在することで、こうした問題を解消し、ストレスのない取引を目指すということでしょうか。

立花:そうですね。最終的には全てのバリューチェーンにSUUMOのプロダクトを展開することで、リアルタイムに物件データをシステムで連携できるようにしたいと考えています。「物件が決まったら、すぐに『SUUMO』のポータルサイトからも非掲載になる」という状態がつくれると、タイムラグがなくなり、本当に今この瞬間に空いている物件だけが掲載されているメディアになるはずですから。

賃貸領域のバリューチェーン上に各種サービスを展開

ただ、そのためには『SUUMO B2B』という、管理会社と仲介会社が物件情報を共有する「会社間流通サービス」を、もっと普及させていく必要があります。

会社間流通サービス「SUUMO B2B」

立花:通常、物件の情報は「レインズ」などの不動産情報ネットワークによって不動産会社間で共有されていますが、仲介会社が新着物件を『SUUMO』に掲載する場合、会社間流通サイトから手動などで情報を転記するケースもあり、時間と手間がかかっていました。その点、『SUUMO B2B』は、『SUUMO』のポータルサイトと連動した会社間流通サービスなので、ワンストップで情報の更新が可能です。そこは、ポータルサイトと会社間流通サイトの両方を持つ私たちの強みですね。

池本:ただ、「その物件に申し込みが入ったか」「募集を停止したか」については、結局のところ仲介会社が物件確認(募集状況の確認)をして情報を更新しない限り、『SUUMO B2B』や『SUUMO』のポータルサイトには反映されないわけですよね。となると、完全にタイムラグをなくすことはできないのでは?

立花:おっしゃる通りです。そこで、2024年12月から『SUUMO B2B』では、賃貸管理・仲介システム「SP-R」とのAPI連携による、「物件の募集状況のリアルタイム連携」に着手しています。簡単に言うと、「SP-R」を導入している管理会社が「申込有」「募集停止」といった物件の募集状況を更新すると、それが『SUUMO B2B』にも反映されるという仕組みですね。情報伝達がリアルタイムになることで管理会社、仲介会社ともに業務工数の削減につながります。

リアルタイム連携をした『SUUMO B2B』画面イメージ

池本:なるほど。最終的には、日本全国の不動産会社が管理する「全ての物件の情報がリアルタイムで連携する」ような世界を目指すのでしょうか?

立花:そこを目指したいですし、SUUMOならできると考えています。実際、不動産会社の方からも「SUUMOがやってくれないと!」という叱咤やご期待の声をいただくことも多いです。期待に応えるために、物件情報のリアルタイム連携をさらに進めるとともに、『SUUMO B2B』をより使い勝手の良いプロダクトにしていきたいですね。

池本:繰り返しになりますが、ステークホルダーは「物件情報のタイムラグ」をゼロにすること、そして、業務の多くを自動化して「手間暇」をゼロにすることを願っています。この2つのゼロの実現は、物件数No.1のポータルサイトと、課題解決につながる技術や知見を持つSUUMOとしての責務ですよね。
そして、それをやり切ることで賃貸業界全体の問題にも貢献できる。社会的な意義があり、プロダクトを手掛けるPdMにとっても、大きなやりがいを感じられる仕事なのではないかと思います。

リクルートのPdMなら、サービスを渡り歩いて経験を積むことも可能

池本:最後に、『SUUMO』におけるPdMの仕事について、もう少し掘り下げたいと思います。先ほど、SUUMOでは社会的にも意義のあるプロジェクトに携われると言いましたが、一方で、リクルートという巨大な組織であるがゆえの弊害みたいなものを懸念されている求職者の方もいらっしゃるかもしれません。分かりやすいところでは、「リクルートは手掛ける領域が広すぎて、希望するサービスや仕事に携われるか不安」「逆にベンチャーの方が、自分が望む仕事内容で伸び伸びと働けそう」といったイメージもあると思います。実際はどうなのでしょうか?

立花:基本的にリクルートは本人の「Will(仕事を通じて実現したいこと)」を尊重する会社です。つまり、本人の意思を尊重しますよと。これはお題目だけではなく、実際にそうだと感じます。PdMの業務一つとっても「戦略を考えたい人」もいれば「クライアントの業務をもっと知りたい人」もいる。ですから、基本はマネージャーとの1on1の場などで本人に「何をやりたいですか?」と問い、希望に応じて任せる業務を設計しています。もちろん、まだスキルが不足している場合などは全てが希望通りになるわけではありませんが、そこに向かって成長していけるよう、マネージャーが寄り添うような文化と環境がリクルートにはありますね。

田町オフィスのリフレッシュルームには卓球台があり、ラリーによるコミュニケーションも可能

池本:なるほど。PdMの「成長の機会」という点でいうと、幅広い領域のサービス、プロダクトを手がけている点もプラスに働くのでしょうか。たとえば、まずは一つのプロダクトでひたすらPDSサイクルを回してプロダクトを磨き込む経験を詰み、次はまた別のプロダクトでもっと上流の課題解決の部分から関わる。あるいは『SUUMO』から『ゼクシィ』、『ゼクシィ』から『じゃらん』といった具合に、一つのサービスで成功体験を積んだら別の領域に移り、成功体験を重ねて経験とスキルを伸ばしていくようなことも可能ですか?

立花:そうですね。本人にやる気と実力さえあれば、そういった動きもできます。また、領域、ジャンルの豊富さだけでなく、リクルートには様々なフェーズのサービスがあります。それこそ、ベンチャーのような立ち上げの段階もあれば、グロースの段階、あるいは『SUUMO』のようにすでに成熟したサービスもある。一つのフェーズで結果を残してから、希望を出して次に移るということも、タイミング次第ではありますが十分に可能だと思います。

池本:そして、最終的にはさまざまな領域であらゆる経験を積んだPdMになれる。転職をせずとも、社内のサービスを渡り歩いて成長できるのもリクルートの良さかもしれませんね。
長くなりましたが、ここまで読んでいただいた方は『SUUMO』の事業とリクルートのPdMの仕事について、理解が深まったと思います。本日はありがとうございました。

立花:ありがとうございました。『SUUMO』では随時PdMを募集していますので、この記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひエントリーをお願いします。

「SUUMO」として受賞した数々の賞。皆が通る壁面にトロフィーなどが飾られている。



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