エンジニアから転身し、30代でHR&SUUMOのPdMトップへ。挑戦と仲間を愛するプロダクトデザイン責任者に聞く
リクルート プロダクトデザイン室

リクルートのサービス開発を現場で主導する、プロダクトデザイン室のPdM(プロダクトマネージャー)。プロダクトデザイン室には数百のサービスに携わる、多くのPdMが所属していますが、そのなかには他職種からの転身組も少なくありません。
4年半のエンジニア経験を経て、2013年にリクルートへ入社した片山雄介もその一人。現在は『SUUMO』などを扱う住まい領域と、『リクナビ』『タウンワーク』『AirWORK』などのHR領域のプロダクトデザイン担当のVP(Vice President:各領域のプロダクトの事業長)として約20名近いマネージャーを率いつつ、現役のPdMとしても活躍しています。エンジニアのバックボーンを活かしながら第一線でサービス開発やプロダクト開発を推進してきた片山。その道のりや成長のストーリーは、同じように他職種からPdMを志す人にとっても、大いに参考になるはずです。20代の仕事を中心に、これまでの歩みを片山に振り返ってもらいました。

5年のエンジニア経験を経てリクルートのPdMに
――片山さんは大学時代にエンジニアの経験をみっちり積んだのちに、2013年にリクルートへ入社したと伺いました。
片山:はい。そもそも大学でもプログラミングを勉強していましたが、さらに深く学ぼうと大学2年生の頃からWebシステム開発会社にアルバイトで入り、様々な開発案件に携わりました。また、大学最後の1年半はリクルートでインターンに参加したり、個人として知り合いのベンチャー企業のシステム構築や、自分で受託開発もやっていましたね。当時は、学校以外はほぼ仕事。途中からは学びのためというより、「人が喜ぶもの、使いやすいものを世に出す」という目的のために何かをつくることが楽しくなって、どんどんのめり込んでいきました。
――リクルート入社後は『SUUMO』の各プロダクトのUXデザインやディレクション業務に携わってきたということですが、なぜそのままエンジニアの道に進まれなかったのでしょうか?
片山:じつは就職するギリギリまでエンジニアとして生きていくことも考えていました。自分である程度のものは、インフラ・フロント・バックエンド含めて開発できるようにはなったのですが、当時は知り合いにあまりにもレベルの違うエンジニアがいました。プログラミングコンテストみたいなので優勝とか、プログラミング言語自体を開発してしまうとか。そのような友人たちには、プログラミングそのものへの「好き」で勝てない。好きのレベルで勝てないのであれば、差を埋めることは難しいと感じたんです。そこで改めて、自分がトップ集団で戦える場所がどこなのか考え、企画側に転身しようと。ずっとエンジニアをやってきたので「モノ」はつくれる。加えて、企画側としてカスタマーが望むサービスを考える力が身につけば、より活躍できる人材になれるのではないかと考えました。それに、がっつり企画側に入るにしても、やはりエンジニアリングのこと、ものをつくる部分について理解しているのは大きな武器になるだろうと。
リクルートを選んだのは、もともとインターンもさせてもらっていましたし、この会社で求められる企画や、どうやって案件を生み出し進めていくのかといったことも何となく理解できていたのが大きかったですね。

――リクルートのPdMも、サービスの領域や案件によってエンジニアと開発要件についてディスカッションする機会もあると思います。専門外とはいえ、エンジニアリングについて全く知識がないと厳しいのでしょうか?
片山:もちろん、エンジニアリングに関する知識があったほうが物事を先回りして考えられるためスムーズな推進ができますし、最低限は必要だと思います。ただ、一定以上の解像度や専門性が必要なところは、エンジニアの方々をとても頼っています。知識も大事ですが、経験があるからこそ、普段どんなことをエンジニアが考えているのか、何が嬉しくて何が嬉しくないのか、そしてエンジニアへのリスペクトを持ちながら一緒に取組むってことができると思います。
今エンジニアのスキルがなくても、どんどん学んでいけば良いのではないでしょうか。
――片山さんは自身がエンジニアを経験しただけに、そのあたりのコミュニケーションは心得ていらっしゃる。
片山:そうですね。エンジニアだけでなくデザイナーなど、最終的に形にしてくれる人たちに対するリスペクトの気持ちが就職前から根付いていたことは、非常に大きかったと思います。あとは、人によって、どこから任せられると嬉しいかの境界は異なる気がしてます。企画側が要件定義までガチガチに固めてお渡しすると、嫌がられる場合もある。あくまで要求だけをお伝えして、細かいやり方は任せてしまったほうがエンジニアのクリエイティビティの幅が広がるし、気持ちよく仕事をしてくれると思います。どうすれば、チームがクリエイティブに働いて、チームのパフォーマンスが高くなるかという視点はPdMも持っていたほうがいいですよね。

――他に、エンジニアのバッグボーンが役に立ったと感じることはありますか?
片山:実務レベルでいうと、自分でコードを書いていた経験は役に立ったと思います。たとえば、プログラムに一つ分岐を追加したいときも、エンジニア目線で見るとそれによってメンテナンス性が悪くなったり、後々の技術負債につながってしまったりするかもしれないということを考えます。そうしたエンジニアが嫌がる感覚を企画側が分かっていると、1つ1つの要求・要件が本当に必要なものなのかに慎重になれるのではないかなと。
また、開発サイドから「その仕様だと難しい」みたいに言われた時にも、「じゃあ、こういう仕様ならどうですかね?」という代案を出せる。やり方も含めてPdM側からディスカッションができて、一緒に答えを出せるのはエンジニアをやっていてよかったなと思う部分ですね。
さらには、実務以外の考え方みたいなところでも、プログラミングやオブジェクト指向の概念が活かせていると思います。
――具体的には、どんなことでしょうか?
片山:プログラミングでは「依存関係」をできるだけなくすことが大事です。色んなものが依存関係にあると、影響範囲も広がるし、範囲が不透明になる。範囲が不透明だから、なにかやる時に調査に時間がかかる。
だから、物事の依存関係をできるだけシンプルにしていくということをプログラミングではやっているのですが、それって要は物事の構造化のはなしで、ビジネスでも必要なスキルですよね。エンジニアを経験したことで、ビジネスマンのスキルとして必須ともいえる素養が自然と身についたところはあるのかなと思います。
5年目で任された大規模案件で、「それまでの成長」を実感
――若手時代に手がけてきた仕事を教えてください。
片山:入社後は『SUUMO』に配属されました。『SUUMO』は「賃貸」「注文住宅」「新築マンション」など領域ごとに複数のチームに分かれていて、新人も通常はどこかにアサインされるのですが、僕が入ったのはスマートフォン用サイトの開発を手掛ける横断部隊。当時はまだ『SUUMO』のスマホサイトが立ち上がったばかりで、1組織で集約して推進している状態でした。横断部隊なので、各領域から様々な要望や案件を振られて、それをひたすらこなしまくるような日々でしたね。
その一方で、当時の『SUUMO』にはA/Bテストの概念すらなかったため、そういったグロースのための基盤・文化を整えていきました。自分自身のスキルアップという意味でも、プロダクトに対して価値を出すという意味でも、1年目はまさに下積みの期間でしたね。
――ある意味、『SUUMO』のプロダクト開発の下地をつくるような役割も担っていたと。
片山:そうですね。これからリクルートがITに力を入れていこうというタイミングで、そのベースをつくっていくような仕事は楽しかったです。もちろん、僕だけではなく頼もしい先輩たちのサポートを受けながら進めていきました。部署やチームの垣根を超えて、いろいろな人が助けてくれたんです。
これはリクルートならではかもしれませんが、みんなが「この案件を成功させるためにはどうすればいいか」という思いを持って仕事に向き合うような文化があって、変な役割意識や境界がないんですよね。PdM自体も担当する範囲が明確に決まっているわけではなく、極端に言えば「何でも」やらなきゃいけない仕事だと思うので、案件を成功に導くためにやれることは全部やるみたいな意識を最初にインプットさせてもらえたのは、自分にとって大きかったですね。

片山:2年目になると、世の中に「UX」という言葉が広がり始めて、横断組織のなかにUXチームがつくられました。そこでも、UXって大事だよね。という文化づくりから始め、同時に各領域からリニューアルや機能改善の施策に対してアサインされて、ひたすらプランニングをしてました。1年目は案件化されたものをこなすことが多かったのですが、2年目からはもう少し上流からプロジェクトに入り、そもそも「どんな案件をやるべきか」というところから関われるようになりました。
3年目からは新しく立ち上げたグロースハックチームのプロダクトオーナーを任されました。企画からリリースまで2週間程度の短いサイクルで、数多くの案件を回すチームです。データ分析と課題の特定、企画、開発、リリースをひたすら繰り返し、半年間で効果を20%伸ばすみたいなことを2年半くらいやっていました。
――5年目には『SUUMO注文住宅』の大規模リニューアルにも、UX責任者として関わったんですよね。
片山:はい。それまでもリニューアルの案件に関わったことはありましたが、「この部分をお願いします」とピンポイントで依頼されることが多く、リニューアル全体のUXをゼロからプランニングするのは初めての経験でした。画面の設計だけでなく、ニーズの調査やデータ分析などあらゆることをやらなければいけない状況で、ある意味、入社以来やってきたことの集大成のような仕事でしたね。およそ2年にわたる長期プロジェクトということもあって大変でしたが、それまでに培ってきた力が発揮できたというか、ちゃんと力がついているんだなということを実感できました。
パンク寸前のリーダーを助けてくれたエンジニアたち
――20代の頃のキャリアを振り返っていただきましたが、当時、特に苦労したのはどんなことですか?
片山:苦労したこと……なんだろう。いろいろありすぎますね。今になって考えると、当時はとにかくカオスな状況で、教えてくれる人もいないし、すべて手探りだった気がしてます。今は、ある程度の「型」があるじゃないですか。デザイン思考のプロセスみたいな話もそうですし、社内のリスクチェックのフローみたいな話もそうですし、課題設定〜案件化〜案件推進の流れでも一定の型がある。
それ自体はいいことですが、先輩が積み上げた型やフローに沿って仕事をこなすだけの人になってしまうと、成長が止まってしまうのではないかという懸念もあります。やはり、手探りしながら色んなことを乗り越えた経験は大きな糧になるし、僕自身もそのタイミングで入社できたのは運が良かった。もちろん、当時はものすごく大変でしたが(笑)。

――カオスな状況も、悪いことばかりではないと。では、最も達成感を得られた仕事を教えてください。
片山:20代の仕事で最も思い出深いのは、3年目から担当していたグロースチームのプロダクトオーナーですね。当時、チームに課せられたのは、新築マンション、中古マンション、新築戸建て、中古戸建てなど、各領域におけるの数字を大幅に引き上げるといった、かなり厳しいミッションでした。メンバーとひたすら企画をして、失敗を学びにしながら次の打ち手につなげて……といったことを繰り返すうちに、みるみる成果が現れ始めたんです。着手するまでまだ改善があまり進んでおらず伸びしろがあったこともあり、僕らの施策によって実際に数十%というレベルで数字が上がっていきました。
また、数字には現れないところで、個人的に大きな気づきも得られました。当時の僕はいろいろな業務を背負いすぎていて、正直パンク寸前だったのですが、そんな時に助けてくれたのが、エンジニアを含めたチームのメンバーたちです。それまでチームを持った経験がなく、個人プレーに走ってパンクしかけている若輩者に対して、エンジニアのみなさんは手を差し伸べてくれました。僕の知らないところでいろいろなフォローをしてくれていると知った時に、もっと人を頼ろうと思いましたし、この時の経験はより多くの人をマネジメントする立場になってからも活きています。
――なぜエンジニアたちが助けてくれたのだと思いますか?
片山:理由は3つあると思います。1つ目は日頃から「明るいコミュニケーション」を心がけていたこと。健全に意見を言い合いながら目的に向かっていくチームが理想で、そのためには楽しくワイワイ……というと語弊がありますが、ギスギスしない雰囲気づくりが大事だと考えていました。その部分は、ある程度できていたのかなと。
2つ目は、数字という分かりやすい結果が出ていたこと。それによって、僕が何かしらの方向を示したときに「片山が言うなら信じるよ」と、納得してもらえるくらいの信頼は得られていたと思います。
3つ目は、先ほども話したエンジニアへのリスペクトですね。エンジニアに気持ちよく働いてもらうためのコミュニケーションの取り方や、仕事の渡し方というところはかなり意識していましたし、バグが出たときも一緒にソースコードを見て原因を探ったりしていました。そうしたことが積み重なって、僕が本当にピンチに陥った時にもみんなが助けてくれたのではないでしょうか。リーダーとしては未熟でしたが、本当にいいチームがつくれていたと思います。
キャリアアップより大事なのは「いいチームで働き続けること」
――その後、片山さんは注文住宅や新築マンション領域のグループマネージャーを経て、30代で住まい領域のVPになるなど、ステップアップを重ねています。最後に、これからのキャリアの展望をお聞かせください。
片山:この質問が一番困りますね。正直、個人としてのキャリアの展望というのは、ほとんどないんですよ。
――それは意外でした。かなり順調にキャリアを重ねているので、さらなる野心がおありなのかと。
片山:そもそも僕が仕事をする一番の目的は、「いいチームで働き続ける」ことなんです。先ほども少し触れましたが、僕が思ういいチームとは「各々の意見や主張をぶつけ合える、心理的安全性がある状態。そして、それぞれの役割の中で背中合わせで戦っている状態。仕事が終わったら、お疲れって言ってビールでも飲んでる」。そんなチームで働けていれば、僕はもう十分に幸せなんですよね。究極、ドメインは何でも楽しめると思いますし、役職への関心とかも無いんですよ。
当たり前ですが、そういった良いチームであるためには、世の中に価値を提供し、数字という成果を出し続ける必要があります。ですから、プロダクトやサービスを磨き上げることはカスタマーのためでもあり、いいチームで働き続けるという個人的な目的を叶える手段でもあるんです。そういう意味では、多様な自社サービスを手掛けるリクルートは、僕にぴったりの環境といえるかもしれませんね。
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