現場との共創が成功の鍵?社内業務DX・BPRで大事なコト
はじめに
こんにちは。ICT統括室の藤森裕子です。
第四回はICT統括室でのお仕事の一つ、「社内業務DX」について、昨年から今年にかけての取り組みを事例に、ご紹介したいと思います。
この手の取り組みにおいて”あるある”なつまずきポイントに、例に漏れず嵌まりつつ、試行錯誤しながら、進めた案件になります。自組織や、自社の業務DXやBPRを進めたいと考えている方や、進めているけどうまくいかない・・・という方にとって、少しでも参考になればうれしいです!
経理部門の社内申請を電子化しよう
私は2022年6月にリクルートに転職してきました。ICT統括室では珍しい非IT出身で、前職ではデジタルマーケティング会社で社内BPRを担当し、管理部門の申請受付業務のルール・フロー見直し、デジタル化などを推進していました。
現在は、全社向けノーコード電子ワークフローシステムの管理運用を行うグループでサービス運用を担いつつ、スタッフ系組織へのICT施策装着展開/DXフォローを行うグループなどを兼任しています。
今回お話しする事例は、後者のスタッフ系組織へのDXフォローにあたり、「経理部門で取り扱っている納品や請求に関する社内申請書を電子ワークフロー化しよう」という案件でした。当初、経理関連の申請は、かなりアナログな運用を必要とするものが大半を占めており、申請を行いたい人は以下のようなステップを踏む必要がありました。
- 所定のExcelフォーマットをポータル上からダウンロードする
- フォーマットに必要事項を記入する
- フォーマットをメールに添付して、指定所定の経理部門の宛先へ送信する
申請を行うためのステップが多いと、正直やること多くて大変、と思ってしまうこともありますよね。そこで、申請者の不便を解消し、よりシンプルに申請を行えるようにするため、電子ワークフロー化の検討を始めました。ちなみに、社内には既存のワークフローシステムもありましたが、こちらはスクラッチ開発のため新規で開発するには時間も労力もかかることから、社内トレンドでもあった「SaaSノーコード電子ワークフローシステム」を採用することにしました。
実態調査をしてみた
方向性は決まったものの、どういったアプローチで進めるべきかを探るため、まずは経理メンバーにヒアリングし、経理視点で運用上何か困っていることはないかと、実態調査を行ってみることにしました。そこでわかったことが大きく二つあります。
一つは、業務の全体を把握することがなかなか難しい、、という点です。経理部門は何年も前から対象の申請業務の多くを「事務センター」という外部パートナーに委託しており、作業の詳細までは把握してはいませんでした。もう一つは、経理部門とICTとで課題に対する温度差が大きい、ということです。申請者は使いづらさを感じているだろうから、電子化しちゃいましょう!と私は無邪気に意気込んでいましたが、当の経理の方たちは他の課題もあり優先度が上がりきっていない、というのが現状でした。UI/UXに課題はありそうでも、現状問題なく稼働している業務について、”そこに課題がある”ということを意識するのってけっこう難しいことですよね。それが当事者であれば尚の事かと思います。どうして電子化する必要があるのか、という目的の目線合わせを経理部門との間で行うだけでなく、申請を受ける側の経理部門の運用も今より快適になる、というメリットも同時に示していく必要がありました。
このように、ヒアリングした結果、高い壁が立ちはだかっていたことがわかったわけですが、これってピンチなだけじゃないよね、逆にチャンスかもしれない!と思った部分も実はあるんです。
ピンチはチャンス!?
作業の詳細までを経理部門は把握していないということは、業務理解や業務整理の段階からICTが介入して伴走していく必要があり、そこでAsIsを細かく開いていくことで、ICTも経理部門も想定していなかった見えない課題が見えてくるかもしれない、このビハインドな状況を逆に活かせるのでは!?と、当時の私はぼんやり考えていました。
私は業務改善を行うときに「ECRS」というフレームワークを用いることが多いです。「ECRS」は「Eliminate(排除)」「Combine(結合)」「Rearrange(入れ替え)」「Simplify(簡素化)」の頭文字をとった略称で、業務改善における指針として用いられるフレームワークです。今ある申請を「電子ワークフローシステム」に置き換えることは、ECRSで言うところの「入れ替え」にあたります。ツールを利用することももちろん業務改善における重要な一手ではあるのですが、コストや手間をかけることなく、より大きな改善を見込めるのが「排除」や「結合」であり、これらは一番最初に検討すべき視点です。
話を元に戻すと、業務を一から開いていくことで、それは本当に必要な申請業務なのか、とか、この状態のままが最適なのか、という「排除」や「結合」の視点で業務を根本から見直せそう!というのが、私がチャンスだと感じた点です。この他にも、採用した電子ワークフローシステムには、ワークフローを回付するという基本機能以外にも、様々な機能があったので、それらを利用して、経理部門側の業務の効率化、「簡素化」もできるかもしれないと考えました。
つまり、今あるものをただ電子ワークフローシステムに移行するだけでなく、業務やフローの廃止・統合を行ったり、作業を自動化することで、業務BPRを目指していけるのではないか、せっかくの機会だからこそ、申請者も経理部門もうれしい申請業務にしたい!というのがこの取り組みの新たな目標となりました。
実際の取り組み
そんな思惑を胸に抱きながら、具体的に取り組んだアクションを5点ご紹介します。
- AsIsの業務整理と業務理解
経理部門に共有してもらった手順書を自分で読み込み、申請業務別にフロー図に書き起こしていきました。それを土台に経理メンバーへのヒアリングを繰り返しながら、ICTと経理部門の双方で、業務の実態調査を行っていきました。 - 課題の洗い出し
前ステップで業務の可視化ができたので、そのフロー図を見ていくと、経理メンバーでも「これは何のために行っている作業なんだっけ?」となったり、今まで気づけなかった課題が見えてくるようになるんです。やっぱり見える化って大事ですよね。慣れてしまっている業務にも、実は非効率だったり、実態に合っていない部分はあって、ICTという第三者の目線が入ることで、改善ポイントを発見しやすくなったんじゃないかな、と思っています。 - ToBeの提案と検討
単純に申請部分だけをワークフロー化するだけでなく、申請者目線で迷わない、わかりやすいUI/UXを意識したり、フローの見直しや申請受付後の作業改善を組み合わせて提案を行いました。例えば、事務センターでの無駄なチェック作業をなくしたり、これまで複数フォーマットにまたがっていたExcel申請書を電子ワークフローシステムの画面上で一つに統合したり、といった内容です。 - テストしながらのアジャスト
これでいこう!とToBeのフローが決まった後は、段階的にテスト版を作成し、徐々に要件を固めながらリリースを目指していったので、ToBe検討段階では判断しきれなかった要件も、テスト版を触りながら判断したり、それまでは誰も思いついていなかったけど、実際触ってみたらこういうこともできるかも、という新たなアイディアが湧いたり、逆にこれは無駄な作業だからなくせるよね、とToBe像をさらにブラッシュアップさせていくことができました。頭の中の想像だけでは限界があるので、イメージの土台となるものは必要ですよね。 - 経理メンバーのマインドシフトを後押し
こんな風に書くととてもおこがましいのですが、、BPRを進めるにあたって、一番のハードルは現場のメンバーに当事者意識を持ってもらうことだと私は考えています。現場メンバーと改革側の間で温度差が生じ、プロジェクトが頓挫する、なんてことは”あるある”のような気がしています。今回のケースもご多分に漏れず、な状況でした。「メールを立ち上げ、Excelを添付し、申請先のメールアドレスをコピペして申請するのって大変」というICTの中だと共通認識だった考えが、普段申請を「受ける」立場の経理メンバーにはピンと来ない、という場面も開始当初はあったので、そこは粘り強く言語化していきました。
また、一番意識したのは、「主体者は経理部門で、経理部門に自分事として興味を持ってもらう」ということです。ToBeの提案に対し、それが本当に業務にフィットするかどうかは、もちろん経理メンバーに判断してもらいますし、経理メンバーの中でリニューアルに消極的な人たちがいた場合は、建設的に話し合い、経理部門の中の議論になるようにできる限りファシリテーションしていました。
変化の兆し、現る
このような取り組みを続けている中で、徐々に変化の兆しが現れてきました。
その兆しの一つは、開始当初はなぜ申請書を電子化するか、という押し問答をずっと繰り返していて、全く前に進められなかった状況が、加速度的に案件が進むようになったこと。もう一つは、経理の方から「AsIsをもっと詳しく調べてみたら使っていない項目がこんなにありました!」「今の実態に合っていないから、業務自体を廃止する方向で経理部門で検討してみます!」などの言葉をもらうようになったことです。チームとして「より良いものに変化させる」という目標を共有できたからこそ、このような変化が現れたのではないか、と感じています。このときは、私自身もとても嬉しかったですね。
結果としては、現在22本の電子ワークフロー申請書を段階的にリリースしている状況です。Excel申請が電子ワークフロー化することによるUI/UXの向上や、フローの見直しや作業の自動化による経理部門側の作業負荷の軽減から、実工数の削減も見込めており、申請者も経理部門もうれしい申請業務にしたい!という目標の第一歩は踏み出せたのではないかと思っています。
最後に
今回私がご紹介したのは、ICT統括室が推進する社内業務DXのうちの一例です。私は「SaaSノーコード電子ワークフローシステム」を利用し、業務DXを進めましたが、リクルートには他にも社内利用できる様々なサービスが揃っていて、業務要件に応じてそれらを選択し、活用できる環境が整っています。
とはいえ、BPRを推進する上で一番の原動力は「現場や支援者の当事者意識」なのかなと感じています。支援者だけでなく、いかに現場の方に自分事として主体的に動いてもらうかが、最後までやり切る、かつ今後も自走できるポイントなんじゃないかなと私は思います。
他者の考えを変える、ということはどんな環境であっても簡単なことではないですが、目的や目標を共有できたとき、リクルートの人たちのエネルギーは素晴らしく、協働できるチーム体制は十分に整っていると思います。
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