UI Crunch #4 参加してきました
石黒勇気
こんにちは、デザイナーの石黒です。2015年04月14日(火)、第4回UI Crunchに参加してきました。今回のテーマは、コラボレーション文化の作り方です。
今回は、ロンドンを拠点に活動中のデザインエージェンシー「ustwo」の方々がゲストで登壇してくださいました。このイベントが始まった当初から人気のイベントでしたが、運良く参加できました。なんと今回は、2分で完売したそうです( ゚д゚)
#1 ustwo DREAMERS AND DOERS
Lars Rosengren(ustwo UX/Product lead & Studio lead)
ustwoとは
ロンドン、スウェーデン、NYなどにオフィスを置き、世界中で様々なデジタルプロダクトを生み出しているトップエージェンシーです。Xperiaのメディアアプリや、最近ではMONUMENT VALLEYというゲームでも話題になってます。
shared values, attitudes & behaviour :価値観、物事に対する考え方、ふるまい方を共有しよう
僕らは、スティーブ・ジョブズのような天才ではない。一人の天才が何かを作り上げれるわけではない。だから僕らはチームでプロジェクトを行なう。そして、チームとして動くのだからコミュニケーションは最も重要である。
Lars Rosengren
※意訳のため、細部はご了承ください
だからこそ、利害関係者(ステークホルダー)を巻き込むことが重要です。では、実際にどのようい巻き込んでいくのか?ustwoは巻き込むことが文化として根付いてました。
ustwoの巻き込む文化
- talk-action=shit:お客様のために、口を動かすのではなく、手を動かそう
- people:人材の採用と成長
- fampany:会社の儲けだけでなく、人のためにある
- succailure:失敗を成功と捉えよう
- transparency:社外も社内にも開示するようにしている
- passion&care:情熱を持って仕事を行っている
また、オフィスはクールでカッコイイ空間ではなく、「自分らしさが出せる空間」をコンセプトとして設計されています。
さらに、クライアントワークでの業務に何か変化がほしい人に対して、日常業務から離れ自分が作りたいモノを2ヶ月ほどの制作できるプロジェクトを行えるそうです。詳細は話していませんでしたが、ここから生まれたアイデアが実験的に行われている場であるそうです。
今後のustwoは日本のTokyoでのプロジェクトに意欲的だそうです。ご縁があれば、ぜひ一緒に仕事したいですね。
#2 "チーム"と"プロトタイプ"でつくるGoodpatchのコラボレーション
藤井 幹大さん(Goodpatch Designer)@mikihirocks
コラボレーション=参加という定義の元、Goodpatchのコラボレーションを紹介して頂きました。
参加を当然にする"チーム"
参加を当然にするために、様々な働き方がデザインされていました。なにより、他のプロジェクトでもクライアントでも"チーム"と考えてモノづくりをしています。
- 原則2人以上のチームでアサイン:社内でコラボレーションを発生するように
- クライアントとチームに入る:競合のデザイナーと戦うチームメンバーとして参加
- Goodpatch全員がチーム:レビューを通じてプロジェクトメンバー以外も参加
- ユーザーもチームの一員:ユーザーとの共感を通じて参加してもらう
参加の余地を作る"プロトタイプ"
完成品に対して意見を述べるよりも、未完成ものに意見を言う方が参加者の心理的ハードルを下げることから、プロトタイプを重要視しています。
- デザインを検証する:アイデアをどんな形でも良いのでアウトプットして参加できるようにする
- 未完成が参加を生む:「完成品→批評」vs「未完成→参加」
参加を前提に働き方をデザインする
"未完成"をキーワードにしたオフィス
- ピンポンダイヤデスクには、キャスターが付いているため自由にレイアウトを変更できる
- フリーアドレスのため、どこに座っても良い。周囲と会話をすることで新しいアイデアの種が生まれたりする
全員で参加する仕組み
- プロジェクトレビュー:全社で全プロジェクトを共有し全員でレビューする
- ロールMTG:プロジェクトでの役割ごとに共有してアイデアを集める
- ユーザーミートアップ:Prottのユーザーと交流し、一緒にデザインする
チームだけでなく、職種横断、社員全員、ユーザーも参加してもらうための働き方がデザインされていることがわかります。このデザインがGoodpatchのビジョンであるハートに響くUIを追求するグローバルなUIデザインカンパニーにつながっているのかなと感じました。
#3 デザインマネジメント不完全マニュアル
坪田 朋さん(DeNA UI Designer)@tsubotax
DeNAのデザイン戦略室 室長である坪田さんが、入社してから今日まで行ってきた様々な取り組みを紹介してくださいました。
デザイナーの立ち位置での不満
DeNAにはデザイン戦略室という見た目に関わるすべてが責任領域である部署があります。
具体的には、ゲームのデザインだけでなく新規事業やプロモーション、CIデザインまでと幅広い領域に携わっています。
ですが、2011年坪田さんが入社した当初は今とはまったく違う環境でした。
坪田さんがDeNAに入社した当時もこうした環境であったそうです。そこからどのように改革をしたのか。
ユーザーにとって正しいことを実現したいのであれば、環境を変えよう
環境を変えるために実行したこと
- 組織を立ち上げて、裁量を得る
- 強いビジョンを提示する
- サービス開発は作り手がリードする環境
- 採用強化、強い仲間を集める
- 社内、社外ブランディング強化
横断組織である理由
- 得意領域、サービスステージに合わせたアサインが可能
- 正しいリソース、工数の提示
- クリエーターの育成コミット
- キャリア踏まえた適切な評価
成し遂げること
- 世の中のトレンドを変えるサービスを作る
- 常に高いデザイン品質のサービス提供
- カンヌ広告賞でゴールドを撮る
- デザインといえばDeNAとして、体外評価される
- 会社ではなく、個人ブランディングする
- 働き続けたい環境を作り続ける
組織立ち上げの際に組織名を「UXデザイングループ」に変えるだけで、周囲からグラフィックだけでなくユーザーの体験をデザインすることを認知させることができたという。今もまだビジョンの提示や採用の強化を通じて組織を変えている段階とのことで、セッションタイトルにある不完全マニュアルという言葉の理由が伺えます。
#パネルディスカッション&QA
Lars Rosengrenさん(ustwo UX/Product lead & Studio lead)
Davide Petrilloさん(Web/Javascript Developer & Studio lead )
中村 麻由さん(ustwo UX/Interaction designer )
坪田 朋さん(DeNA UI Designer)
藤井 幹大さん(Goodpatch Designer)
モデレーター安藤 幸央さん(株式会社エクサ)
よりよいコラボレーションのための取り組み
by ustwo
- 強制的にワークショップする
- 一定の基準を超えると請負から指名にかわる
- 人を巻き込むためにスタジオに呼び寄せる
- プロジェクトの最初にクライアント含めてキックオフMTGを開催する
- 同じ場所で一緒に働く
- スプリントごとにクライアントのオフィスに行って、そこで働く
- 次のスプリントはクライアントを自社のオフィスに呼んで一緒に働く
- クライアントにコーヒーの淹れ方から教えることで、「自分でコーヒーを淹れることが出来るオフィス」を思ってもらう
デザイナーとエンジニアのコラボレーション?
by Goodpatch
- 仕事を進めるうちにメリットを享受できる
- エンジニアからもアイデアを出してもらう
- デザイナーにとって、エンジニアからのアイデアがすごく重要で貴重だということをはっきりと伝える
- 座席は近くにする、向い合せではなく背中合わせにする
- エンジニアもUIを考える場に連れてくる(UIの難しさを叩き込む)、デザイナーにもXCodeを触らせる(プログラミングの難しさを叩き込む)
- Goodpatchはエンジニアもデザイン好きなので、四六時中デザインの話をしている
キックオフでのアイスブレイクについて?
by ustwo
- 必ず皆同じ場所に集まって、時間をたくさんかける
- 各自ビジョンを出し合って、共有する
- ワークショップを開催する
チームの規模について
by DeNA
- 10人以下が意思疎通がとれる&全員を見渡せる
- それ以上になると全員の統制を一人でとるのはむずかしいので、"同じ意志を持つ人"をサブリーダーに据える
- アウトプットは全て可視化すること
by Goodpatch
- 3〜9人くらい
- なるべく小さい組織にしようと努める
by ustwo
- シニア & 若手UIデザイナという組み合わせをなるべくする(若手を不安にさせないため -> メンターの必要性)
# グラフィックレコーディング
和波 里翠さん(DeNA Designer)
# おわりに
登壇者のお三方とも、チームでのコミュニケーションの大切さとコミュニケーションを生む働き方をデザインしていると感じました。それは、組織や環境という理由だけでなくチームビルディングやプロトタイピングなど様々なコミュニケーションといった文化として根付いていること。そしてコラボレーションを起こすためには、"情熱"と"未完成"がキーワードになっているのではないか。情熱とは、なにかを実現させるために行動するためのモチベーションであり、それが未完成だからこそ周りを巻き込みコラボレーションを生む。
次回もぜひ参加させていただきたいです。