UI Crunch #2 参加してきました
石黒勇気
こんにちは、デザイナーの石黒です。2014年11月27日(木)、第2回UI Crunchに参加してきました。今回のテーマは、UIデザイナー不要説について語るです。話題となっておりました、UIデザイナー不要説のブログが、発端とのことです。
第1回の開発現場に於けるデザイナーの生存戦略に関しても記事があるので、気になる方はぜひ御覧ください。
#1 UIデザイナー最終防衛マニュアル
Taiki Kawakami (A Structure Design/Designer)@seabream
UIデザイナー不要説
UIデザインに投資しても短期的にはリターンが小さいので投資されづらいという現実の中で、UIデザイナーはどうするべきなのかに対する見解を述べられてました。
- デザイン=見た目のことという謝った認識
- UI・UXが重要と言われているが、エンジニアとの給与格差が大きい
- 海外のアプリやサービスとの差
- UIデザインは金にならない
今すぐできる4つの解決方法(短期的な方法です)
- 革命
- まずは、プロトタイピングを提出して議論をするところから始めて見る
- 転職
- 優れたアウトプットができている起業家かどうか選ぶ
- 独立
- 企業orフリーランス
- 趣味
- 自分のやりたいことを追求する
- 大きなことや周りを巻き込む
UIデザインの重要性を啓蒙する(長期的な解決方法)
デザインコードを公開してもっと活発に議論しましょう!
GunosyのUIを徹底的にリデザインしてみた(ブログ)を公開した際、反響が大きかったです。特に非デザイナーの方からの反響が大きかったです。「使い心地」とは目に見えないものなので、デザイナーがそれを解説することが重要になります。議論することでデザイナーの成長にもつながりますし、会社の広報にもつながってきます。良質な教材が増えれば良質なUIデザイナーも、UIデザインに理解のある非デザイナーも増えます。不要説なんて見向きもされない世の中を目指していきましょう。
#2 風呂場で考えるUIデザイナーの未来
上谷 真之(nanapi CCO/Designer)@utmy5
UIデザイナーは何をする人ですか?
上記の問いに対して、一般的な市場価値、求められるスキルと呼ばれているコトはトップダウン視点(企業)の考え方でしょう。そうではなく、ボトムアップ視点(UIデザイナー)でリフレーミングしましょう。「風呂場で考える>服を脱ぐ」のように枠組みを外して考えると「UIデザイナーって何をする人ですか>人によって(職場環境etc)答えが違う」ことは、当たり前になります。
思考のリフレーミングの仕方
- こわす
- 組織という枠組みを外してみる
- 肩書という枠組みを外してみる
- ならべる
- 自分を表す様々なワードをピックアップしてみる(スキルや好きなこと、自分のやりたいことなど)
- もどす
- 2の状態の自分がいる組織ってどんななんだろうと考えてみる
- 環境(組織や社会)に自分をアジャストしていくことが大切
業界などが求めるUIデザイナーで振り回されるのは、もったいない
- (誰かが決めた)UIデザイナーという肩書はいらない
- 自分がやりたいことをやろう
#3 UIデザインの価値
吉田 健吾(トレタ COO)@kengochi
UIデザインに価値はないのか?
ユーザーが触れるところはUIであり、そこがよくなければ優れたビジネスモデルも高い技術も評価されません。UIデザインは競争力の原泉とも言えます。しかし、UIデザインよりも重視されることが存在することは事実です。以下、例となります。
- デザイン以外の強力な魅力 ex) 使うとポイントが貯まる
- デザインの善し悪しで利用可否を決められない ex) 会社で決まったものしか使えない
上記のような、デザインの良し悪しで利用可否が決まらないコトは、特にB2Bではよくあるパターンです。
B2Bのアプリ・サービスにおけるUIデザインの価値について
例えば、飲食店向けの予約管理システムサービスが存在するとします。飲食店の環境を想像してみるとで、「操作の迷い」「無駄な動き」「ミスの誘発」 これらは全て無駄なコストになってしまいます。こうした分野こそ、UIデザインが求められています。しかし、クライアントから「使い勝手なんて1年も使っていれば慣れるから問題ない。」という言葉をよく聞きます。これは、企業倫理の通すために「高性能」「多機能」「低価格」が優先されるためであり、使いやすさが後回しにされてしまっている現状があるためです。そんなB2Bの世界にある使いにくさの常識を突破するための武器こそUIデザインなのです。
#4 経験に基づく「UIデザイナー」の必要性
藤川真一(えふしん)(BASE CTO/取締役)@fshin2000
webサイトの設計に求められる能力
- コンテンツ内容まで踏み込んだ画面設計能力
- デザインと同義レベルのコンテンツ配置能力
- 動的ページに対してのシステム設計、クライアントスクリプトの知識
- 後の工程で設計図面、仕様書を書く能力
- 効果的なページリンク構造
- トレンドを取り入れられる知識、アンテナ
上記のように、求められる能力がエンジニアやデザイナーの枠では収まらないため、人材育成の難しさがあると思われます。多くの結果として、デザイナー的側面かエンジニア的側面のいずれかに傾倒していくと考えられます。ここで問題であることは、個々の不足能力を補うために、積極的に求めるように動ければよいのですが、故意。無意識に関わらず無責任モードに入り込んでしまう場合があることだ。
アークテクトという肩書きの人がいない会社では、誰が設計をするのか?
webデザイナーだけで画面設計を行うことには反対である。この理由として、以下のようなことがあげられます。
- ゲームをやらない(ゲームは直感的なUIの固まりである)
- windowsのUIやMacのUIのよし悪しがわかるほどのITリテラシーが高くない
- Webアプリなどを使うことがない。そもそも趣味として、webに詳しくない
仮に、自分の会社にUI設計を専門で任せられる人がいないのであれば、デザイナーとエンジニアがともに考えながら作り上げていくものでしょう。その例として、見た目に無頓着なエンジニアだけでは魅力的なwebデザインは作れないし、デザイナーだけでは論理的な画面設計は難しいためです。
これらは一昔前の話ではありますが、今でも普通にある話ですよね。
BASEの考え方
- 成果への原資として、ビジュアルデザインスキルは必須
- 論理的思考
- 「すごく詳しい人」か「すごく興味がある人」
#パネルディスカッション
Goodpatch CEO の土屋さん、DeNA UIデザイナーの坪田さんも加わり、登壇された方々によるパネルディスカッションが最後に行われました。
UIデザイナーという肩書の方は何名いるの?
DeNA
- 20~30人くらい
- デザイナーと呼ばれる人達はクリエイターという肩書で全部で200人ほど
- UIデザイナーはディレクションまでする人という定義
nanapi
- デザイナー肩書は6人
- UIという言葉にこだわらない、エンジニアもプロトタイピングしたりするからUIという枠組みにとらわれない。肩書を超えて各人の得意とする分野にアサインしている
トレタ
- デザイナーは社内で1人
- 社員だけではカバーしきれないので外注することが多い
BASE
- デザイナーは、3人。UIに関わっているのは、1人(1人加入予定)
- 開発出身のUIデザイナーがいる
Goodpath
- UIデザイナーは12~13名
- Webデザイナー、グラフィックデザイナー出身が多い(スキルの幅を広げる目的で転身する人が多く、未経験出身もいる)
UIデザイナーに決定権、役割ってあるの?
DeNA
- 最終決定はPOが担うが、開発工程においてはハンドリング、コントロールまでUIデザイナーが担う
- 最終決定までUIデザイナーが担ってもいいと思う
nanapi
- KPIを持つデザイナーもいる
- KPIを達成するために変更を加える事が出来る(スピードを上げるために、デザイナーの意思決定を任せる場合も多い)
kawakami
- 権限は弱い現状がある。
- 以前はデザイン経験、エンジニア経験ないディレクターが書いたワイヤーを書いていたが、改善してきている。
トレタ
- 画面イメージ、動きをUIデザイナーがエンジニアと相談しながら作る
- 最終決定は代表がする。(代表はクライアントの中に身を置いてユーザー目線で考えることができるので、一番意見に影響力がある)
BASE
- フィロソフィーである「このお母さんでも使えるか」の問いかけに答えられないものはリリースしない(オカンUI・UX)
どのようなデザイナーがほしい?
DeNA
- デザインをしっかり勉強してきましたというのはあまり重要ではない
- 作ったものを自己否定して設計、改善を回せる人
- 常にユーザーを意識してプロトタイプを回せる人
- スタートアップのCTOを担うような人(なんでもやらなきゃいけない人)に近い人物像 (こういう人これからのがサービスを回していくと思う)
nanapi
- スキルではなく、情熱×視座の高さ。これらが欠けてると、どうしても伸びしろが短いように感じてしまう
トレタ
- 素養、姿勢。理由を聞かれたり否定されたりした時に、何故そのデザインにしたのかを自信をもって説明出来る人
BASE
- ポートフォリオ見て、良いデザインを持ってる人
- 物事を順序たてて説明出来る人(これがないとそもそも議論にならない)
- 黒い画面が苦手、JavaScriptはデザイナーのしごとじゃないなどといった度胸に書ける人はNG
デザイナーの給与が上がるのか?
昇進すれば、まず上がります。では、なぜ給与が上がらないのか。それはデザインを定量評価することが難しいためです。いくら良いデザインをしようが、それが売上に反映されるという根拠が証明出来ないのです。そこで、評価軸をデザイナー自身で作っていく必要があり、積極的に動かないと給与は上がらないでしょう。また、アウトプットの納品物のみだけではなく、そのプロセスにも見積もるべきなのではないでしょうか。IDEOのように、海外ではプロセス、アプローチへの市場価値も高いです。これくらいのバリューを提供するからには、これくらいのコストかかるというのを公開していく。自分たちが事業を作って業界を盛り上げて単価を上げていくことが重要です。
# Q&Aコーナー(一部抜粋)
Q.B2B案件でどうやってクライアントを説得しますか?
- 実際に使ってもらってデザインの良さを実感してもらう、現場の人を味方につける
Q.ビジュアル(グラフィック)デザインのスキルを重視する理由は?
- UIは突き詰めると認知心理学などどんどんロジカルな方向に向かうことになる
- ロジカルばかりでは人の心を動かしにくくなり、そのためにもカッコいいものは必要である
Q.稼げる(年収の高い)デザイナーになるには?
- Behanceに自分の作品をコンスタントにアップして自己アピールを徹底すれば、会ってみたいと思われスカウトされるでしょう。(海外ではBehanceを通してのヘッドハンティングが一般的になってきている)(これはAdobe MAXでも話していた)
- デザインの意図を説明できるように完成品だけでなく、製作過程を公開すればロジカルに説明できるようになる
- 自分で作ったものを発信できない現状(企業的な問題)がありますが、これは自分たちで積極的に動いて変えるべき
# おわりに
第一回では、気づいたときにはすでにキャンセル待ちに。今回は、滑り込むことができました。UIデザイナーの重要性だけではなく、UIデザイナーの役割とは?どうなっていくべきかなど新人デザイナーの自分にとってはとても興味深い内容のイベントでした。特に登壇者の方々が、話しているuiデザイナー像が異なる印象を受けたとともに(企業や環境の影響もあると思われる)、uiデザイナーの領域がより広域になっていくこと(設計の他、ディクションなど)をとても感じました。UIという言葉に踊らされるのではなく、自分が何をしたいのかという問いかけを忘れずに向き合っていくことが重要だと思いました。次回もあれば、ぜひ参加させていただきたいです。