Adobe MAX 2014 に参加してきた (2014.10.07 Sneak Peeks – 開発途中のアドビの未来をチラ見せ)
wakamsha
現在、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスにて10月6日〜10月8日の計3日間に渡り大々的に開催されているAdobe MAX 2014。
今回はカンファレンス2日めに行われた SneakPeeks というイベントについてレポートしたいと思います。
そもそも Sneak Peeks って?
Sneak Peeks とは Adobe MAX で毎年行われるセッションの一つです。現在アドビが社内で取り組んでいる最新の製品開発に関する情報をどこよりも早くチラ見せしてくれるのが特徴で、初日の基調講演と並ぶ人気のセッションです。単に最新情報だけを公開するのであれば特筆することのことではないかもしれませんが、Sneak Peeks の特徴は将来的に製品に組み込まれるかどうかもはっきりしていないプロトタイプ段階のものであっても惜しまず公開してしまうところにあります。プロトタイプレベルなので当然セッションで紹介しようとしてもうまく動かないようなものも少なくありませんが、それでもそんなものはご愛嬌で済ませられてしまうくらいぶっ飛んだアイディアのモノが多いのがこのセッションの魅力と言えましょう。
今回も実に多くのアイディアが披露されました。数が多いのでここで全てをご紹介しきれませんが、個人的に面白いと思ったものをご紹介していきたいと思います。
Sneak Peeks スタート
ここでは現在我々が現在取組中の技術についてご紹介します。ご紹介するものの中には既にに殆どできているものもあれば、まだまだ開発途中のものもあります。もちろん現在のアドビ製品が搭載している機能のうちのいくつかは、このセッションで評価されて後に製品に組み込まれたものもあります。
ホスト役としてハリウッドで活躍する映像クリエイターの Joseph が登場
自分は主にハリウッドで活動していますが、ハリウッドには本当に優秀なスタッフが沢山います。しかし世の中には優秀なんだけど未だ世の中に殆ど知られていないようなクリエイターがまだまだたくさんいるのも事実です。私はそんなクリエイター達を積極的に仕事をするように努め、彼らがこの業界へ大きく羽ばたけるためのサポートも行っています。
若い未来のクリエイターを探しているとおっしゃいましたが、例えばどういったクリエイティブ・スキルを探していますか?
みなさんそれぞれが自分のメインの仕事を持っていることと思います。例えば映像制作に関することで言うと、一人の役者がグリーンスクリーンの前で演技をしますね?そしてその映像にAfter Effects で描かれた水の CG が合成されるわけです。一つの映像を作るにも何人もの人手が関わっています。そして最終的に出来上がるのは、自分一人では決して生まれてこないようなアイディアが込められているのです。そういった人と人とのコラボレーションが興味深く、必要としています。ネットの力が大きくなるに連れて、アートの作り方がこれまでと大きく変わってきたのです。
#ProjectLayup
私はデザインをする際はまず iPad 上で始めるのがお気に入りです。今回紹介するのはデザインのアイディアをとても直感的に形にすることが出来る機能です。指で適当に矩形を描いてみましょう。すると線が綺麗に補正されてあっという間にWebページのレイアウト(ワイヤーフレーム)が出来てしまいました。さらにデバイスはiPadですから端末に保存されている写真を一瞬で読み込むことが出来ます。更に矩形を描いていきましょう。その矩形の中にダミーテキストがワンタッチで表示されました。これだけではありません。フォントのスタイルが気に入らなかったとしてもストレスなく自分の気に入ったスタイルに変更することが出来ます。
さらにこの ProjectLayup は、これまでに編集したヒストリーデータをタイムライン系の UI で管理しているのです。つまりどういうことかというと、画面のここにあるシークバーを動かす操作でこれまでのヒストリーを行き来出来るのです。とても直感的でしょう?
また、ここで作成されたデータは in Design, Photoshop, Illustrator のどれでも好きな形式で書きだすことが出来るのです。
#PSDWebEditing
PSDWebEditing は Web ブラウザ上で PSD ファイルの参照および編集が出来てしまうプロジェクトです。ブラウザ上でレイヤーの展開はもちろん、各オブジェクトを自由自在に動かしたりすることが出来るのです。ここで編集された PSD ファイルはローカルにダウンロードすることが出来ます。ダウンロードが終わったら、デスクトップ上の Photoshop で開くことができ、作業の続きをすることが出来ます。
ブラウザ上で PSD ファイルを開く方法はとても簡単です。フォルダにあるPSDファイルをブラウザにドラッグ& ドロップするだけです。レンダリングにはとても力を入れているのでファイルが開くまでの時間は驚くほど短いのも特徴です。
また、PSDWebEditing は Creative Cloud とも連携されているので、そこで管理されているアセットも難なく開くことが出来ます。
グラフィック関連だけでなく、オーディオに関しても面白いモノが出てきたのでご紹介します。
#visualSpeechEditor
音声データをPCで編集する際、未だに波形を見ながら操作するのは時代遅れだとは思いませんか?なぜなら波形だけではその箇所にどういった内容の音声が週力されているのか再生するまでわからないからです。それだけではありません。再生してみてもそれはただの音です。それが収録された周囲の様子などまでは前後を聞かないと全くわからないでしょう。今回ご紹介するのはそんな問題を解決するための取り組みです。
まず音声データから(自動で)文字起こしをします。文字起こしって難しいんですよ。これだけでも凄いでしょう?更にこれと音声データを波形として組み合わせるわけですが、音声の種類を識別して波形を色分けします。つまり人の話し声やオーディエンスの歓声などを色によって視覚的に分離させるのです。つまりどの箇所でオーディエンスが騒いでいるのか、重要な話をしているのはどの箇所なのかを視覚的に探しだすことが出来るというわけです。
#projectBeacon
Behance には実に多くのクリエイティブな作品が登録されています。中には実際に町中に存在しているものもあるでしょう。しかし、もしそれらを町中で見かけたとしても、それに関する情報をオンラインで探しだすことは決して容易では無いと思います。もっと身近に Beahance のクリエイティブを感じたい。そんな要望を叶えることが出来るのがこの技術です。
ならば町中かにある Behanceの作品に Beacon を取り付けてしまえば良いのです。町を歩いていて Behance にある作品に近づくとプッシュ通知が来ます。さらにあなたが今いる現在地から Behance 作品までの距離も表示することが出来ます。Beacon は省電力なのでバッテリーは約一年間もちます。
写真編集に絡んだトンデモな技術が紹介されました。これはマジでスゴイ…
#Defog
屋内と違って外で写真を撮影するのって意外と難しいんですよね。特に光(明るさ)は自分ではどうにもコントールしきれないので、これに悩まされることがあります。例えば外で撮影した写真がモヤがかかったような写りになっていたとしましょう。これはPhotoshopをもってしてでも綺麗に除去するのはとても難しいです。
今回ご紹介するDefogはそんなモヤを綺麗に除去することが出来ます。単に除去するだけではありません。このような逆光の写真においてもDefogはその威力を発揮します。逆光は写真がぼやけたように写りますが、必ずしも全てがNGというわけではなく、それによって良い効果を生んでいる場合もあります。Defogはそんな光の良い所を残しつつモヤだけを綺麗に除去することが出来ます。
除去出来るということは、逆にモヤを加える事も当然出来るというわけです。
#TimeOfDay
せっかくいい写真を撮影しようとその場所まで赴いたのに、狙った写真を撮るのはなかなか難しいです。TimeOfDayを使えばそんな悩みも解決出来るかもしれません。
ここにシンガポールの街の写真がありますが、イマイチ気に入りません。そこでここにドバイの写真を持ってきます。ドバイの色合いをシンガポールの写真にうまい具合に取り込ませることが出来ます。コロッセオの写真もこのようにスライダーを動かすだけで昼間だったのを擬似的に夜にしてしまうことが出来るのです。影の具合も空気感までも違和感なく変化させることが出来ます。
MITと共同で開発しているこの技術は、400点にも及ぶタイムラプスの動画を解析し、時間経過に応じて光がどのように当たるのかを研究して成り立っているのです。
#ShapeShade
ここにバットマンのロゴがあります。このロゴをIllustrator で描くのはそこまで難しい作業ではありませんよね。しかし手作業でパスのハンドルを操作するのは少し手間でもあります。
ShapeShade を使えば、タブレットからタッチ操作で矩形を自由に角丸にすることが出来ます。今までと違うのが、一方を角丸にしようと押し込めば、反対側が押されるような動きをするという点です。まるで粘土を触っているかのような錯覚を覚えるのではないでしょうか。ミラーリングモードも備えているので、左右対称な形状を保ったまま手作業で形を変えることが出来ます。非常に高い精度です。ここで出来上がったパターンはそのまま他の画像に合成することも出来ます。
#3DPhotoMagic
3DPhotoMagic は二次元である写真を3D解析することが出来る技術です。これはMITのインターン生が作りました。何が出来るかというと、3D解析されることでこの写真にあるテーブル上に違和感なく食器を置くことが出来るのです。もちろん置く位置を変えればそれに合わせて最適化されます。照明具合や影も綺麗に調整されます。角度も調整されます。
静止画だけではなく、このようにモノクロの写真に追加した要素を自然にアニメーションさせることも出来てしまいます。あまりに自然過ぎて鳥肌が立ってしまいます。
#GapStop
一般人へのインタビュー等で話の間が長くなってしまうようなことはないでしょうか。皆さんもよく話の合間に「あー」とか「えーと」とか言ってしまう癖はお持ちかと思います。映像に残す際はこの間を取り除く必要があるわけですが、普通にクリッピングするとビデオが細切れになって却って不自然さがましてしまうのです。
GapStop はPremire Pro 上で動く新しい技術ですが、そういった不要なコマを除去しつつ全く違和感なく自然に映像と音声をつなぎ合わせる事が出来ます。ニュースやドキュメンタリー映像の編集コストをぐっと抑えることが出来るでしょう。
おわりに
まだまだ開発途中のものとあって上手く挙動しない場面もいくつか見受けられましたが、紹介されるアイディアはどれも斬新であり、そしてそれを柔軟に受け入れるアドビの懐の深さと形にしてしまう圧倒的な技術力を魅せつけられました。
冒頭で述べた通り、ここで紹介された技術の全てが本製品に採用されるわけではありませんが、一年の間にコレほどまでインパクト大かつ実用製も含んだ機能を大量にブチかましてくるアドビという企業には、誇張なしに驚かされるばかりです。
以上、現場からお伝え致しました。 (`・ω・´)ゞ