産学連携レポート「2019年度 人工知能学会全国大会 (第33回)」

産学連携レポート「2019年度 人工知能学会全国大会 (第33回)」

自己紹介

データテクノロジーラボ部で販促領域におけるデータ活用の推進と、強化学習等を用いたR&Dプロジェクトを担当している阿内です。今回、深層強化学習を用いたレコメンド手法に関する研究で人工知能学会に論文を投稿しています。

 

イベント紹介

2019年6月4日(火)〜6月7日(金)、 新潟県新潟市の朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンターで開催された、2019年度人工知能学会全国大会(JSAI2019)に参加しました。この大会は情報工学系では国内最大級の学会で、産業界からも大きな関心が寄せられています。
今年の投稿は750件にものぼり、今回初めて設定された「国際セッション」には、80件もの発表投稿がありました。参加者は約3,000人。事前登録者数が想定を上回り、途中で打ち切られるほどの大盛況でした。

 

会場の様子

写真1:入り口看板

会場は新潟駅から徒歩20分の「朱鷺メッセ 新潟コンペンションセンター」です。

写真2:リクルートテクノロジーズブースの様子

左(ブースの様子) 右(空席検知デモとCT画像の病変部位検出デモ)

今回設営したブースには、「弊社から投稿した論文3本」「A3RTとIoTの取り組みポスター」「原稿校閲プロダクトの外部協業チラシ」「IoTプロジェクトの空席検知デモ」「CT画像の病変部位検出デモ」「弊社ノベルティグッズ」…と、机のスペースが足りないほど多くのコンテンツが用意されました。

写真3:各社展示スペース / ポスターセッションの様子

Panasonic様を始めとする3社の茶菓スポンサーから、新潟名物の「もも太郎アイス」「笹団子」などが差し入れられました。

弊社登壇内容

セッションは17会場に分かれて行われました。人気セッションでは立ち見が出るほどの大盛況でした。弊社からは3本の論文投稿・口頭発表を実施しました。弊社データテクノロジーラボ部が登壇した2つの発表内容を紹介します。

発表1:【深層強化学習を用いたWeb サイト内行動のレコメンド】

蓑田 和麻(発表者)、阿内 宏武、川頭 信之、石川 信行

深層強化学習アルゴリズムを用いて、Webサイト内における行動のレコメンド手法を提案した論文になります。
アイテムのレコメンドやソート順のパーソナライズといった、コンバージョンに近い導線ではなく、コンバージョンからは遠いが重要と考えられる行動に着目。教師あり学習では適用が難しかった問題を強化学習により解決し、オフライン検証と実サービスにおけるA/Bテストにより有効性を示しています。
発表に対して、強化学習を用いたレコメンドのオフライン検証スキームの独自性に対する評価や、実サービスでのA/Bテストの設定に関する質問があり、聴講者の皆さまにとっても有益な内容であったと思われます。

 

発表2:【Bidirectional LSTMを用いた誤字脱字検出システム】

高橋 諒(発表者)、蓑田 和麻、舛田 明寛、石川 信行

マッチングビジネスを展開するリクルートでは、日々様々なメディアで大量の原稿が入稿されています。これらの原稿に存在する誤字・脱字や原稿内における表記ゆれ、各メディア独自に定められた規定に沿っているかを人手でチェック・修正するのは困難です。
本件は、これらを自動で校閲するモデルを提案した論文になります。
提案手法では、「OK/NG確率を予測するBidirectional LSTM」と「文字生起確率を予測するBidirectional LSTM」の2つのモデルを組み合わせ、高精度なモデルを構築しています。実際にリクルートが保有するデータで検証を行い、高い誤字検出率を示せたことをお伝えしました。
こちらについても「実際に助詞が抜けている場合のサジェストはどうなるのか?」のような実用面に関する質問が上がるなど、世の中的にも関心の高いトピックであることが分かりました。

学会総評

「社会 × AI」に対する関心の高まり

AI技術が活用フェーズに入り、信頼性・倫理・権利に関する問題など、社会への適合について活発に議論されていました。今後、医療、政治等の重大な判断・意思決定に活用されるにあたり、「AI」に対する見方・考え方、さらには神・哲学の観点から様々な発表が散見されました。
また、Preffered Networks丸山氏のプレナリーセッションでは、「工学とは技術と社会の契約。人々が橋を渡るとき橋が崩れる心配をしないのは、土木工学理論という学問があり社会に信頼されているから。ディープラーニングも土木工学のように社会と契約できれば受け入れられる。」と語られていたのが印象的でした。
人工知能の在り方についての人々の関心の高まりを感じた学会でした。

IoT分野/自動運転分野の発展

「農業×IoT」「IoTセンシングの不動産活用」「センシングカーによる道路・路面状態認識」「ドライブレコーダーによるヒヤリハット事象/事故/正常の分類」「ドローンを用いたインフラ故障検出」など、 IoTデバイスから得られるデータの活用に関して、様々な研究が見られました。
関連して、物体認識やセマンティックセグメンテーション、視線推定、視線深度推定技術に関する発表も多く見られました。
また、音声データの活用も進んでいるように感じました。特に、音声からの感情推定、音声+表情から本心かどうかを検出する研究など面白いテーマが発表されていました。
この分野は技術が出揃い始め、IoTデバイスの性能向上により取得可能になったデータを「どう使うか」というフェーズにシフトしているように感じました。

自然言語処理分野の発展

BERTやELMoの登場で精度の高い分散表現が獲得可能になり、これらを活用した研究が数多く見られました。「ロボットは東大に入れるか?」プロジェクト、通称「東ロボくん」によるセンター英語試験の不要分削除問題への適用や、誤字脱字の検出、文体変換など多くの適用分野があり、活発な研究が行われていました。
この分野は様々なビジネスニーズがあるものの、多義語の存在等、言語特有(特に日本語)の難しさはまだまだ解決されておらず更なる発展に期待です。

生成系アルゴリズムのビジネス活用

Generative Adversarial Network(GAN)を用いた生成に関する研究が多く見られました。 スケッチの筆順情報を生成するCycle Sketch GANの提案や、アニメーションの生成、文章にあった絵文字の生成など様々な領域を対象とした研究が発表されました。

おわりに

今回人工知能学会に参加してみて、各分野における「技術」の進歩だけでなく、「ビジネス活用」の発展に大きく刺激を受けました。リクルートでも活用できそうなアイデアが数多く見られたので、今後検証を進めていきたいと思います。

来年は熊本で開催されます。どんな発展を遂げているのか楽しみですね。

 

 

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