ICTの未来を見据えた、ICTモニタリングによる持続的な成長の追求
はじめに
ICT統括室の家城と申します。
私たちの生活やビジネスは、ICT(情報通信技術)によって大きく変わりつつあります。企業においても、ICTは業務の効率化や生産性の向上に欠かせない要素となっています。しかし、ICTの進化が進む中で、企業が抱える課題やリスクも増加しています。そこで重要となるのが「ICTモニタリング」です。本記事では、ICTモニタリングの意義や実践方法、そしてその結果として得られた知見について詳しくお伝えします。
私は2024年2月にリクルートに入社し、ICT統括室にて、社内ユーザー向けのICTサービスの提供に関するモニタリング業務を担当しています。この役割を通じて、コスト、セキュリティ/コンプライアンス、ユーザー満足度、先進性の4つの軸で組織を評価し、持続的な成長を目指す取り組みを行っています。
1. ICTモニタリングの重要性
ICTモニタリングとは、ICTの利用状況やその効果を定期的に評価し、必要な改善を行うプロセスです。これによって、組織は自らの活動を可視化し、進化し続けることが可能となります。特に、以下の4つの要素はICTモニタリングを行う上で重要です。
コスト: ICTの導入や運用には多くのコストがかかります。モニタリングを通じて、無駄なコストを削減し、効率的な運用を実現することが求められます。
セキュリティ/コンプライアンス: サイバー攻撃や情報漏洩のリスクが高まる中、企業はセキュリティ/コンプライアンス対策を強化する必要があります。モニタリングにより、リスクを早期に発見し、対策を講じることができます。
満足度: 最終的には、ICTサービスのユーザーである従業員の満足度が重要です。ユーザーの意見を反映させることで、より良いサービスを提供することができます。
先進性: 技術の進化に伴い、最新の技術や手法を取り入れることが求められます。モニタリングを通じて、提供サービスの先進性を維持し、競争力を保つことができます。
2. 自己紹介とバックグラウンド
私の背景を少し紹介させていただきます。私はSIer、事業会社、ITコンサルティング会社を経験し、様々な業界でのICTの実践に関与してきました。SIerではJavaやC#を用いてWebアプリケーションを構築し、事業会社ではIT組織の統括チームにて標準化やプロジェクトマネジメントを担当しました。さらに、ITコンサルティング会社ではプロジェクトの監査やERP導入に携わり、ICTの幅広い知識と経験を積むことができました。
こうした経験を活かし、ICT統括室においては、組織のモニタリングや戦略的な業務に取り組むことに強い興味を持ちました。
3. ICTサービスの組織モニタリング
私がリクルートに入社した際、まず取り組んだのは、社内ユーザー向けのICTサービスを提供する組織におけるモニタリング業務です。この業務は、ICT統括室が重視している「利便性」「コスト」「先進性」「セキュリティ/コンプライアンス」の4つの軸に基づいて組織を評価するものです。
前任者からの引き継ぎと初期の課題
リクルートに入社した際、私は前任者からモニタリング業務を引き継ぎました。
引き継いだ翌月には、半年サイクルの報告起案を予定しており、早急なキャッチアップが必要でした。
最初の段階で直面した問題は、短時間で過去のモニタリングの起案内容や実施内容を理解することでした。文書やデータを読み解きながら、どのようにモニタリングが行われていたのかを把握することは非常に大変でした。
モニタリングも毎回試行錯誤をしながらレポートしているため、ある程度型化はされているものの、毎回レポートの報告内容は少しずつ切り口も違っており、かつ、上司からも今の形がベストでは無いと思えば変えてもらってよいというありがたい(?)指示もあったので、逆に難易度があがってしまっていました。
先進性の定義と指標の模索
4つのモニタリングの軸の中で、特に先進性をどう定義するかが大きな課題でした。ICTの世界は常に進化しており、新しい技術や手法が次々と登場しています。その中で、何をもって「先進的」とするのかを考えることは容易ではありませんでした。
私は先進的という言葉に引っ張られ、世の中に先駆けて今までにない実験的な製品を評価して取り入れるというレベルで捉えて右往左往してしまいました。
ああでもないこうでもないと悩んでいたときにICT統括室のトップの室長との会話で、過去に最新のツールを使えていなかった歴史があること、他社の先進的な導入事例を参考に、当社でも導入サービスの検討をしていきたいという思いを確認できました。市場での採用が広がり、信頼性が高まった段階(イノベータ理論でいう、初期採用層から主流市場への移行で直面する壁である『キャズム』を越えた後の、最初の主流層である『アーリーマジョリティ』と呼ばれる段階)に達している製品を利用し続けたいという意図だと腹落ちしてから、世の中の製品情報の比較サイトや調査会社の情報を確信持って活用できるようになりました。
このプロセスで感じたのは、過去の成果や課題を知ることが、今後の方針を決定する上で不可欠だということです。
また、上司との定期的な「よもやま」という意見交換の場が非常に有益でした。粗い情報からでもざっくばらんな雰囲気で自由に意見を交わせたことで、さまざまな視点を得ることができ、モニタリングの方針を明確にする助けとなりました。
とにかく数多くアイデアを形にして、「よもやま」で意見交換を出来たことが短時間で形にすることにつながりました。
結果、先進性を外部の製品情報の比較サイト及び調査会社の情報を使い、製品カテゴリの中でリーダーポジションを確立していること、外部ユーザーの総合満足度と、機能の満足度、ユーザビリティの評価で高い評価を得ていることを可視化したことで、客観的な評価を可視化できる形に設計することができました。
そして、定期的に社内のサービスを評価し、製品の更新要否を検討している取り組みとして、ある調査会社からも他社に紹介したい好例として評価を頂きました。
新ビジョンをドライブする新指標の検討
さらに半年後、ICT統括室の新しいビジョンが刷新され、「働くを、シンプルに」という方針が打ち出されました。この新ビジョンをドライブするために、どのような指標を設計し、どのように評価していくかが重要な課題となりました。
シンプル化を指標化するという難しい取り組みでした。
「シンプル化」をテーマにした社内のマネジメントでのディスカッション等を参考にしながら、自身で作った仮案を上司や、室長など多くの方に何度もぶつけ、レビューをいただき磨きこみました。
試行錯誤の末に、業務時間の創出という観点から、従業員が本業に振り向けられる時間を生み出せているかを評価する指標を設計しました。これにより、ICTサービスを使って働き方がシンプルになる先で得られる利便性や効果を具体的に示すことを目指しました。
具体的には、以下のような指標です。
業務時間の創出:従業員の本業に振り向けられる時間を生み出せていることを評価
・業務改善時間: 従業員がICTツールを使って業務を効率化した時間を計測する指標です。
・問い合わせ数: ICTサービスに対する問い合わせの件数を追跡し、サービスの利用にまつわる時間の削減を測定します。
これらの指標は、ICTサービスの利便性や効果を具体的に示すものであり、シンプル化をドライブし、組織の進化を促進するものになったと考えています。
4. 取り組んだ結果と学び
以上の取り組みから、いくつかの重要な学びを得ました。
進化のためのツール
モニタリングは単なる評価に留まらず、進化のためのツールであることを実感しました。型を定義しながらも、常に必要性を問われ続ける中で、どう進化していくかが求められます。これにより、ICT統括室としての活動も常にブラッシュアップされていくのです。
歴史を知ることの重要性
ICT統括室が大事にしているものを理解することが、私にとって重要でした。特に先進性を定義する際、室長との会話を通じて、過去の歴史やICT統括室の理念を知ることができ、原点に返ることの大切さを実感しました。過去の最新のツールを使えていなかった歴史を変えたいという強い意志を持つことが、今後の活動においても重要です。
ユーザーとの向き合い方
ICT統括室は常にユーザーに向き合っています。ユーザー満足度を指標に取り入れることで、組織の戦略においてもユーザーを大事にしている姿勢が明確に示されています。このアプローチは、ICTサービスの改善においても重要です。
新指標の設計と評価
新指標の設計時には、既存の指標の評価も行いました。その結果、フレームワーク的に見ても組織力を測るのにバランスが良いことが確認できました。新しい指標を導入することで、組織の強みや改善点をより明確に把握することができ、ICTサービスのユーザーにとっても価値ある情報となったと感じています。
最後に
ICTモニタリングは、変化の激しいビジネス環境において、企業が持続的に成長するための重要な手段です。私たちICT統括室は、指標を基に進化し続けることで、ICTサービスのユーザーが生産性高く働ける環境を整え、セキュリティを担保できる状態を維持することを目指しています。
私たちの活動をどう評価し、どう進化させるのかを考えることは、非常に楽しいプロセスでもあります。「作って終わり」ではなく、モニタリングの仕組みを活用して、どのように進化していくかが最も重要です。ICTモニタリングを通じて、私たち自身が進化し続けることが、今後の課題であり、楽しみでもあります。
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