1on1ランダムマッチングサービスを企画して全社展開した話
はじめに
ICT統括室サービス企画部の岩渕です。リクルートでは、DX推進・ICT施策の企画を担当しております。
この記事では、1on1ランダムマッチングサービスを企画して全社展開したお話をしたいと思います。
「組織横断でのライトなコミュニケーション機会の少なさ」に課題を感じている方に、少しでも参考になれば幸いです。
ランダムマッチングサービスってなに?
まずはじめに、私が企画したランダムマッチングサービスの概要について説明したいと思います。社内では「TeaTime」という名前でやっているので、以降は「TeaTime」と呼びます。
TeaTimeは、参加者内で隔週1回ランダムマッチングが行われ、1対1の雑談の機会を促す仕組みです。参加から実施までの流れは以下のとおりです。
(初回のみ) 参加登録 |
TeaTimeに参加したい方は、 社内従業員検索システム内の自分のプロフィール情報欄に#TeaTimeのハッシュタグを記入しておく ※ハッシュタグを入力すると、次回からマッチング対象者として自動登録される |
【隔週月曜】 始業時 |
自分とマッチング相手宛てにTeamsグループチャットでメッセージが届く。日程調整役に指名された方はマッチング相手との会議設定をする(30分目安) |
TeaTime当日 |
Teamsミーティングでマッチング相手と1on1を実施 (仕事の話、キャリア相談、プライベートな話なんでもOK!) |
【同週金曜】 夕方頃 |
Teamsチャットでフィードバック依頼のメッセージが届く。 また、休暇や業務で忙しいなどを理由に、次回のTeaTimeをスキップしたい場合は、同封メッセージのスキップリンクからスキップボタンを押すと、次回マッチング対象から除外される。 |
きっかけ
~他組織や他部署を超えたライトなコミュニケーション機会の少なさに課題感~
私は2023年の5月にキャリア採用入社し、入社後1ヶ月が経過した頃、ある悩みを抱えていました。それは、業務でコミュニケーションを取る相手が固定されており、たまにしかやりとりしない方やこれから業務を一緒にする可能性の高い方との関係構築が難しいこと。テレワーク環境下だと「偶然オフィスで会って話し込む」といった場面もありません。また、自分の部署以外で、どんな人が何をしているのか分かりませんでした。
~スタンプラリーという仕組みからアイデア化~
私の組織では、入社後3ヶ月間、スタンプラリーという仕組み(施策)があり、入社/異動直後のメンバが、配属部署内外の既存の社員に1on1で話を聞いて回ることができます。スタンプラリーで会話する相手は上司と相談のうえ、業務を一緒にする可能性の高い方を中心に設定していきます。私も入社後この施策を使って、ICT統括室内外合わせて20名ほどの方と1on1をさせてもらいました。
実際にスタンプラリーをやってみて、非常にライトに会話でき、「一緒に働く仲間たちの人となりや仕事内容を知ったり」「人脈を広げ、慣れていくためのきっかけを掴んだり」とできるので、入社後に私が感じていた課題を一定解消することができました。
一方で、業務を一緒にする可能性がそれほど高くない方とライトに会話する機会や、継続的に気軽に1on1する機会はスタンプラリーでは叶いませんでした。
そこで、会話相手がランダムで決まって、定期的にマッチングされる仕組みがあれば、こういったコミュニケーション機会は強制的に作り出せるのではないかと思い、上司にアイデアを壁打ちしました。壁打ちしたところ、「いいね!やってみよう!」をいただき検討を開始してみることになりました。
アイデアをかたちに
アイデアを複数人と壁打ちする中で、「そもそもニーズってあるのかな」「他組織(特にICT外の方)とマッチングしても何を話せばいいかわからない、会話が盛り上がらないかも」など、私は懸念していなかった点がフィードバックとして一定数寄せられました。
同時期に入社した人や既存社員と会話する中で、潜在ニーズありそうだなぁという肌感は持っていましたが、どれくらいニーズがあるか、どれくらい盛り上がるか、の確証はなく、確かに未知数でした。
そこで、上記の点の確証を得るためにも、「マッチング仕組み化の構築や運用に極力コストをかけない」「マッチング対象者の範囲は限定する」方向で具体の計画を立てていくことにしました。
まず、「マッチング仕組み化の構築や運用に極力コストをかけない」に関しては、「極力あり物を使って仕組み化する」方法を探り、社内で使用可能な「Microsoft 365」を使ってみることにしました。Microsoft 365を使えば、PowerAutomateで運用コストを極力かけない仕組みも容易につくることができると考えました。TeaTimeへの参加/脱退はTeamsチーム機能、ユーザへの通知機能はTeamsチャット機能、マッチングテーブルはExcelで、自動化をPowerAutomateを使ってα版を作ります。α版を作成して、上司含む数名の方に実際に使ってみてもらうと、解像度の高いフィードバックを貰えるようになりました。フィードバックを踏まえ、マッチング対象から除外するスキップ機能やフィードバック機能などを付加したβ版にブラッシュアップしていきました。(作成したTeaTimeの仕組み概要は次項にて説明します)
次に、「マッチング対象者の範囲は限定する」に関しては、フィードバックへの対応のしやすさやトラブル時の対応などの取り回しやすさを考え、自分の所属する部署「ICT統括室内」にマッチング対象を限定することにしました。
その後、組織内の会議体に計画を起案し、正式に検証を開始することになりました。
TeaTimeの仕組み概要
前項で作成したβ版の仕組みは次のとおりです。
PowerAutomateによる自動処理の説明
【隔週月曜 始業時に実行】
①チーム「TeaTime」のメンバをテーブル1に転記。
② テーブル1(TeaTimeメンバリスト)からシート3(スキップリスト(今週分のみ抽出))を除いたリストをテーブル2に作成(=今週のマッチング対象者)。なお、ランダム関数を使ってテーブル2の並び順はランダムに設定。
③テーブル2のリストの上から順番に2名ずつグループチャットを作成し、マッチングした旨を通知。(参加対象者が奇数だった場合は、1組だけ3名のグループチャットを作成する)
【同週金曜 夕方に実行】
④TeaTime参加者全員に対して「フィードバックアンケート」「次回マッチングスキップ登録受付」を個別に送付
スモールスタートでの検証を経て全社展開へ
6ヶ月間の検証を経て、TeaTimeは予想以上の反響でした。
参加者は希望制としたもののICT統括室社員全体の約23%の方が参加、検証の結果としては「満足度98%」「継続希望率95%」という結果となりました。また、「他組織とのマッチングを希望」する方が全体の約半数いるということもわかりました。
この結果をもって、ICT統括室内をマッチング対象としたTeaTimeを正式リリースし、同時に、マッチング対象を全従業員(約2万人*)とした全社版TeaTimeの検証を開始するに至りました。
* 2024年4月1日現在で20,767人(コーポレートサイトより)
全社版TeaTimeは4ヶ月間検証を実施し、ICT統括室版TeaTimeと同様の反響でした。
参加者は約220名集まり、「満足度96%」「継続希望率96%」という結果となりました。リクルートの従業員数約2万人に対して参加者が少ないようにも見えますが、大々的な広報は実施しておらず(人事発信のメルマガの一部にちらっと1度掲載させてもらったのみ)口コミメインで広がった結果ではないかと思います。
また、実施者の声として「普段関わる機会のない方と会話することでモチベーションが上がった」「TeaTimeをきっかけに協業の機会を掴んだ」「自分の行動や考え方を変えるきっかけになった」などTeaTimeきっかけで様々な新たな価値が生まれており、今後更に多くの従業員へ価値を提供し発展させていくため、従業員への機会創出をミッションに持つ部署に全社版TeaTimeの企画・運営を移管し、全社版TeaTimeも正式にリリースすることとなりました。
その後、他部署からTeaTimeの仕組みを使用したいとの声も多数いただき、現在複数部署へTeaTime仕組みの横展開もしています。
取り組んだ結果・学びや気付き
結果
- 1on1ランダムマッチングサービスを企画・作成
- スモールスタートによる検証を経て、2024年9月から全社員をマッチング対象とした全社版TeaTimeを正式リリース
- 全社版TeaTimeの参加者は日々増加しており、執筆時点で約400名弱まで増加している(主に口コミで広がっている)
- 満足度96%、TeaTimeきっかけで様々な新たな価値が生まれている
- 他部署にもTeaTimeの仕組みを横展開中
学び
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思いついたアイデアを企画にしていくために、かたち(見える化)にすることで解像度・質の高いフィードバックがもらえる
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以下の点でスモールスタートは有効だった
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TeaTimeの全社展開を見据えたときに、利用者のニーズや反応を確認できた。また、それに基づく方針転換を影響範囲少なくできる状態だった。
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構築・運用コストを抑えることで、検証実施の合意形成が図りやすかった。
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迅速なフィードバックが得られ、早いスパンで改善を繰り返すことができた。
おわりに
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TeaTimeの企画を通して、昨年5月にキャリア採用入社した私が感じたこととして、リクルートは新しい企画や改善提案が生まれやすい文化を大切にしているなと感じました。社員一人ひとりの「こうしたらもっと良くなる」「こんなことを試してみたい」という声に、部署や役職を超えて耳を傾け、実現に向けたサポートを惜しまないカルチャーが根付いているなと、TeaTimeの企画を通して実感しました。
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「組織横断でのライトなコミュニケーション機会の少なさ」に課題を感じている方、ぜひ今回ご紹介したTeaTimeの仕組みを活用し、スモールスタートからはじめてみませんか?
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